新旧問わず、最近ハマっているアルバムを紹介します。






BLACK SUGAR (1970〜78)
 
 ラテン・ファンクの隠れた名グループ、ブラック・シュガー。その短い活動期間に残した2枚のアルバムを中心にコンパイルしたベスト盤CDが日本でも1997年に発売されていた。何の知識も無く偶然、と言うか何か予感がしたのですね。あ、これはタダモンではなさそう、と。思わず買ってさっそく聴いてみたら予感的中! 宝塚記念はエイシンデピュティだと前々日から予想していたドンピシャ感に通じる「当たり」の快感アルバムなのでした(笑)。

 このブラック・シュガー、ラテンはラテンでも結成はなんとペルー。チカーノ・ファンクやブラジリアン・ファンクでもない異色のバンドなのでした。さぞや現地民族的な濃い音と思われがちですが、やっている事は当然ながらそのリズムを重視したラテン音楽を核としつつアメリカのソウル/ファンクを大変意識したもので、今で言うとレアグルーヴと呼ばれるブラック・ミュージックあり、ホーン・セクションの効果がTOPのようなベイエリア・ファンクを彷彿とさせるものあり、時にはリズム感をグッと抑えたソフト・ロック的なナンバーありと、英語の歌詞も多用する洗練されたものなのでした。 なにしろ原盤では2ndにあたるアルバムの中でダニー・ハサウェイの“valdez in the country”、スティーヴィー・ワンダーの“don't you worry 'bout a thing”といったその時代の「ニュー・ソウル」をカヴァーしているくらいですから、それだけでこのバンドが目指す音楽性の奥行きがわかろうと言うものですよね。

 さてこのベスト盤は収録順で1〜3がブラック・シュガーとなる前の母体バンド「Los Far Fen」が残したシングル盤から、4〜6が1stアルバム「BLACK SUGAR」から、7〜15が2ndとなる「BLACK SUGAR II」から、そして16〜17が1978年に録音された最後のシングルからと、その活動をほぼフルに知る事のできる内容となっているのですが、とにかく1stでもオープニングに配置された4曲目“too late”の出だしからの高揚感といったらたまらない。その後に続く変幻自在で巾の広いサウンドにすっかりヤラれてしまい、思わずオリジナルの2枚も買ってしまったほどでした。録音が古いので時代感はある音ではありますが、むしろ70年代初頭のペルーでこれだけ高い感度の音楽を演っていたバンドがいた事に喜びを持って聴くべきものかと。純粋にラテン・ファンク/ロックが聴きたい人にも、場合によってはインスト/フュージョン好きにも楽しんでいただけるでしょう。このバンドが黒砂糖を舐めたような一過性の美味さで終わるか、それともドラッグのようにドップリとハマりこんでなかなか抜け出せなくなるか、どちらの「BLACK SUGAR」かは聴く人次第。責任は持ちません。(2008/7/2)


1. WALKIN'
2. AMOR DE VERO
3. CHINA
4. TOO LATE
5. VIAJECITO
6. THE LOOSER
7. FUEGO
8. VALDEZ IN THE COUNTRY
9. DON'T YOU WORRY ABOUT A THING
10. THE DAWN OF MY MADNESS
11. I WANT TO BELIEVE
12. CHECAN
13. KATHY
14. ALL ABOUT LOVE
15. WAKE UP
16. LA CAMITA '78
17. MUVETE,MUEVETE


 BLACK SUGAR (1971)

 BLACK SUGAR II (1972)




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