新旧問わず、最近ハマっているアルバムを紹介します。





FAMILY UNDERGROUND/once in a lifetime (2009)
 ここで取り上げるのは珍しく真っ黒なアルバムです。70年代にシングル盤を発売したのみで陽の目を見なかった幻のニューオリンズ・ブギー/ファンク・グループの音源が、2006年に一度アナログ盤で発売されコアなブラック・ファンに人気となっていたもので、ついに今年未発表曲を追加してCD化されました。

 泥臭いブラック・ミュージックはあまり好みではなかったのですが、思わず買ってしまうきっかけになったのがこの中に収録されている“nowhere to run“を聴いてしまったから。なにしろこの疾走感はゴキゲンすぎるww まぁそれにしても、1978年〜79年に録音された7曲はローランド・トルードーのガツンと力強いヴォーカルが荒摺り段階の演奏をうまい具合に中和させているし、どれもメロディアスであり、ファンキーであり、豊かな表情を持つ魅力的なものばかり。ただ、時代の波には敵わなかった悲しい事実も容易に想像できるものでもあるのです。
 サウンド面で年々進歩を遂げていたこの時期の音楽界。それに対しこちらは5年ほど遅れている感も否めない。同じく収録された75年吹き込みの数曲もさらに5年ほど遅れをとっている(と、言う事は69年〜70年頃ですかね)音に聴こえてしまうのです。デモ・テープを持ち込んだモータウンやキャピトルなどからは、「アース・ウインド&ファイアーに似すぎている」と契約を却下されたいきさつがライナーにあるのですが、確かに彼らのテーマ曲と評された“we are somebody”はアースの“help somebody”に通じるものがある(題名までw)し、“all we have is a song”でのファルセットの使い方やメロはモロだったりしますし、ところどころアフロ・ソウルらしき部分もあったりするのは類似性ありと見られてもしかたがないでしょうね。しかしこれらの音をそのまま「アースの真似っ子」と言ってしまうのは酷であり、あくまでも音作りの上でリスペクトされたサウンドの一つであっただけと見るのが正解で、大レーベルが契約却下するにはもっと他の理由があった気がしますね。結局このグループは誰それに似ていると言うより、当時の大レーベルが新しいソウル・グループとして売り出すには時代が求めている音と乖離し過ぎていた、と言う事なのかな、と感じてしまったのですが、そんな事は今の時代に聴く我々にはどうでも良い話。特に78年録音の各ナンバーに関してはツボにハマりまくってしまったのでした。そうなんだよなぁ〜。この「時代感」はイマのどんな技術やセンスをもってしても再現できるものではないし、なおかつそれが良質のブラック・ミュージックに乗ってグルーヴしているのですから、それはまさに、“once in a lifetime”!!

 2005年8月にニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナにより、メンバーの自宅は破壊されたが、その偶然数週間前に発見された本作のマスター・テープは奇跡的に無事であったとの事。その貴重な音源が奇跡の生還を果たしたと言うドラマティックな側面を持ちつつ、ファミリー・アンダーグラウンドの記録は30年の時を越え世に放たれたわけですね。なにしろこんなシロモノが世界に先駆け日本でいち早くCD発売されるんですから、毎度毎度の事ながら、「素晴らしい国です。日本国ってヤツは」とまたまたつぶやいてしまうわけです。(09/09/29)



01. WE ARE SOMEBODY
02. I DON'T KNOW WHY
03. DR, MUSIC
04. FOR THE LOVE OF DISCO
05. ALL WE NEED IS LOVE
06. THERE MUST BE AN ANSWER
07. ALL WA HAVE IS A SONG
08. NOWHERE TO RUN →
09. OUR LOVE'S GONE BY
10. THERE MUST BE AN ANSWER
11. I DON'T KNOW WHY
12. SUPERSTITIOUS
13. MAKE A CHANGE


01&09〜13 recorded in 1975
02〜08 in 1979

11〜13 previously unreleased.



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