新旧問わず、最近ハマっているアルバムを紹介します。





Sarah Vaughan/brazilian romance (1987)
 
 正直な話、このサラ・ボーンと言う偉大な女性ジャズ・シンガーのアルバムを手にするのは初めての事で、kanafu marieさんのブログ「FLOWER ROAD」での紹介を見て思わず購入。ここでの鍵盤担当がジョージ・デュークだったのですね。セルジオ・メンデスのプロデュース、ミルトン・ナシメントのサポートに、引き出しの広いG・デュークのピアノやアルフォンソ・ジョンソンのけだるく、かつヒューマンなベース、カルロス・ヴェガの確かに刻まれるリズム等、かためられた豪華な製作陣がどれ程のクオリティの音を出し、それに女王たるサラ・ボーンのヴォーカルがどう絡んでくるのか、とても楽しみでした。彼女のブラジル作品集はこれで3枚目との事で、前2作が本場ブラジル録音であったのに対し今回はアメリカ録音。推測としては、時代が要求していたコンテンポラリー・アルバムを作る上で、それなら歌うのはポップやソウルではなく好きなブラジル音楽にしよう、という考えであったのではないかと。それほどこのアルバムは一枚通してそれほど深い南米色を感じさせずサラッと流れていくものなのでした。その点G・デュークに弾かせたのは正解。“romance”でのタッチは彼でなければ出せないものですね。誰にでもすんなりと入っていける当時として最新のアレンジにも対応でき、ブラジル音楽にも精通した腕のあるピアニストと言えばこの人だったのでしょう。しかし、あらためてサラ・ボーンのヴォーカルには脱帽。やっぱりジャズは違う。

 余談ですが思いだしたのが以前に続けて観た二つのビデオ。最初にロック・バンドとして好きなRUSHのライヴ「a show of hands」をビデオで観て、「おお〜、ニール・パートすげーなー!」とか、ベースを持ちつつシンセも弾きながらあのカン高い声で歌っちゃうゲディ・リーに「なんだこいつ〜?」とそのパフォーマンスに驚いていたものですが、それを観た直後にパット・メセニー・グループのビデオを観てしまったんですね。やっている音楽は対照的で静かに流れていくのですが観終わった後の感想はひと言「ジャズの勝ち!」。メセニーはもちろんポール・ワーティコのドラミングにしても繊細な表現力(音の伝え方)が違うのです。もちろんロックの持つパワーとジャズの技巧を比べるのはナンセンスなのですが、音を表現するステージの違いと言うものはまざまざと見せつけられたものでした。何をいまさら、と言う気もしますけど。

 とにかく言いたいのは今回はサラ・ボーンのヴォーカルに、「これが歌を歌うと言うことなのよ」とあらためて教えられてしまったと言う事。普段ポップ・ヴォーカルしか聴いていないと気がつかないんですけど、バックの音が今風なのでなおさらそれを感じるのでありました。まったく誤魔化しのきかない世界で歌い続けてきた彼女を、ジャズに対してとっつきにくかった方にも気軽に体験できるチャンスですよ。是非どうぞ。(2007/4/9)

01.MAKE THIS CITY OURS TONIGHT
02.ROMANCE
03.LOVE AND PASSION
04.SO MANY STARS
05.PHOTOGRAPH
06.NOTHING WILL BE AS IT WAS
07.IT'S SIMPLE
08.OBSESSION
09.WANTING MORE
10.YOUR SMILE


Produced by Sergio Mendes
Arranged by Dori Caymmi

Sarah Vaughan (vo)

Milton Nascimento (vo)
George Duke (key,p)
Alphonso Johnson (b)
Dan Huff (g)
Dori Caymmi (g)
Carlos Vega (ds)
Paulinho Da Costa (perc)
Hubert Laws (fl)
Tom Scott (ts,.lyricon)
Ernie Watts (as)
Marcio Montarroyos (fl-h, tp)

and,others.




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