ブログ内でオリジナル・アルバムを全て解説しました
「GROOVY HORSE」



George Duke Band LIVE REPORT (Blue Note Tokyo 2010/3)

George Duke LIVE REPORT (Billboard Live Tokyo 2011/3)

CLARKE/DUKE 4 LIVE REPORT (Blue Note Tokyo 2012/12)



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jazz workshop 1966 of SAN FRANCISCO/GEORGE DUKE QUARTET (1966)
 ジョージ・デューク・カルテットとしてのファーストレコーディング作品。なんとこのアルバムが発表されて50年近くの時間が過ぎようとしています(もちろん私は記憶もない赤ん坊の頃ですね)。ここではっきりするのは彼のスタートは正統派ジャズ・ピアニストであったということです(そんなことは充分承知なのですが)。ここで収録されているのは本当の新人らしくすべてクラシック・ジャズのカヴァーばかりで、彼のペンによる曲はひとつもありません。その後多方面に渡って活躍する彼の面影はありませんが、ひとつのルーツを知る上ではとても面白いアルバムでした。10代の若き新鋭ピアニストの荒削りながらもアグレッシヴな演奏が聴ける貴重な一枚です。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-233.html
save the country (1970)
 ソロとしては記念すべきファーストアルバムとなった作品です。彼自身のペンによる曲はソロ・パートを強調したジャズ色の強いものですが、この頃はもうフランク・ザッパと活動を共にしていた時期でありローラ・ニーロ(タイトル曲)やビートルズ(come together)などをカヴァーするあたり、POPフィールドへの音楽的な幅の広さを早くも見せつけた作品となっています。ギターによるロック的な味付けに貢献しているのが、なんと若きジェイ・グレイドン。彼の熱心なファンにしてみても、このアルバムは気がつかなかった一枚ではないでしょうか。アーニー・ワッツ(sax)やチャールズ・フィンドレイ(tp)らのホーン・アーティストも参加しており、この時代としてはゴージャスな音で楽しめます。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-236.html
the inner source (1972)
 前年に録音され世に出るはずであった「solus」からの曲と、新たに加えられた曲を合わせ2枚組として発表されたMPS第一弾。side-1の1曲目“au-right”はいきなりエレクトロファンク-ジャズで幕を開け、続く“love reborn”は何回もセルフカヴァーされておなじみの原曲。現代音楽風の曲もあったりとジャズを基調としていながらもどこか違う。鍵盤奏者としてできる限りの事をやろうとしている若きデュークの姿があり、その音楽性の広さを早くも見せつけた作品。しかしそれでも“feels so good”のような温もりのあるメロディーでホッとできたりするのがいいなぁ。コロコロと響くデュークのエレピも時代を感じさせつつ味がありますね。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-240.html
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faces in reflection (1974)
 レオン“NDUGU”チャンクラー、ジョン・ハードと組んだトリオ編成。その最小編成ながらのっけからデュークのエレピとシンセが飛び交うハード・クロスオーバーでガッチリ掴まれる。で、ナット・アダレイに提供した“Capricorn”のセルフカバーでガラッとスキャット混じりのスローに落としてしまうところ、これが俺なんだと言わんばかりで憎いったらありゃしない。ドラムスのNDUGUは当然としても、ベースがアコースティックを用いているところもジャズとして聴くには斬新なサウンドであり、シンセサイザーを使った幻想的なミディアムテンポのインストや初のヴォーカル・ナンバーなど、本人が言っている通り1つの型には嵌らない、フランクザッパ/マザーズの主要メンバーとしても活躍していた頃の古いジャズに囚われない姿勢が早くも音楽的に開花していますね。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-244.html
george duke & feel (1974)
 前作のトリオ編成にグループ名を「feel」とつけて新たに作られた意欲作。基本的にはエレクトロジャズの形をとっているようです。ここで、アイアート&フローラ・プリムのブラジリアン・アーティストが参加、以後親交を深めていくことになります。盟友フランク・ザッパも参加。(2007年7月に世界初CD化されました。FAVORITEでも紹介しています。詳しくは→コチラ)
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-246.html
the aura will prevail (1975)
 初期のジョージ・デュークを語る上では、このアルバムが必ず挙げられる作品です。アーティストとしての歴史の中で、音楽的な転換点となったことがうかがえます。発せられるひとつひとつのメロディー、フレーズがさらに洗練され、随所にこれぞジョージ・デュークと唸るパターンがちりばめられていて、多様なジャンルの音楽を一つのデューク・ミュージックとして融合させる事に見事に成功しています。もちろん彼の鍵盤を中心とするクロスオーバー・ミュージック・アルバムですが前作で試みたブラジル音楽や、“fools”のような彼自身のヴォーカルをフィーチャーしたナンバーなど、アルバム一枚に様々な顔を見せつつ全てがデュークそのものであるところが素晴らしい。こういった構成は後にも彼のアルバムにおける基本スタイルとなった。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-248.html
I love the blues, she heard my cry (1976)
 いきなり、アイ・ラヴ・ザ・ブルース、と来ちゃいました。ただのジャズ・キーボーディストならこんな飛躍はしないでしょうね。ジョージ・デュークのさらなる進化、と言うよりも、本格的にファンク/ソウルへの傾倒が感じられる一枚。ジョージ・ジョンソンがセッション的に参加も興味深い。しかしながらブルースを演っているのはタイトル・ナンバーのみで、さらにはハードロック調まで飛び出すなどジャンルの分け隔てなく前作以上にバラエティに富んだ曲配置となっていますが、それぞれの曲調が「そのままやん!」と言うものが多く、まだここでは自らの音楽的な巾の広さをただ見せつけたいだけと言った印象がある。本格的にデューク流のスタイルが確立されていくのはこの後の作品と言えます。ただそうは言ってもデュークはデューク。フローラ・プリムの歌うラテンからエイトビートに変化する“look into her eyes”など構成の面白い曲も多い。名曲“someday”収録。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-250.html
the inner source (1976)
 1971年にMPSより発表されたアルバムのリイシュー盤。MPSでの1st「solus」の発売が遅れたために2枚組としてこの2ndと組み合わせになったと言われる作品です。貴重なのは唯一、彼のトロンボーン演奏が聴けること。71年という時代を考えても、かなり先を行っていたのではないかと思われるニュー・ジャズです。その後、ヴォーカル曲として復活する「feels so good」、おなじみ「love reborn」のオリジナルがここで聴く事ができます。
librated fantasies (1976)
 針を落とすといきなりフランク・ザッパなヴォーカル・ナンバー“don't be shy”。ジャズ・フュージョンを聴きたい人は拍子抜けだろうなと。そしてさらに続くもヴォーカルが中心の“seeing you”。こちらの方がデュークらしいラヴ・バラードで半ばからのコーラス・フレーズなど嬉しくなってしまう。さてこうなると完全にポップ・アルバムかと勘違いしてしまいそうですが、そんな所を極めた“tryin' & cryin'”のようなロッキン・ミディアムなヴォーカル物も挟みつつ、聴き進んで行くうちにPOP/ソウルからは少し離れてインスト物中心になって行き、わりと純粋にフュージョンしちゃってるところもあるアルバムです。特にラストのタイトル曲は圧巻!アイアート・モレイラの強力なラテンの味付けでスリリングな展開を見せるカッコ良さ。NDUGUのテクニカルかつ黒っぽさギンギンなドラムスに、フレットレスでファンクするアルフォンソ・ジョンソンのベースと完璧なリズム・ユニット。めまぐるしく変化するデューク・サウンドがまたひとつ進化した。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-251.html
the dream (1977)
 一転、ゲストミュージシャンなしで完全セルフレコーディングを行った実験的アルバム。シンセサイザーの多重録音による一人オーケストラ風の音で占められています。MPS時代最後の作品で、かなり地味な作りですが、この後のEPIC時代のアルバムにもこのような顔を覗かせることがあり、一度は作ってみたかったコンセプトアルバムだったのでしょう。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-252.html
the dream (1978)
 これはそのドイツ盤ジャケ。上は日本国内盤。ちなみにUSでは「The 1976 Solo Keyboard Album」としてまったくこれらとは別のジャケットにてCDリイシューされています。公式には1976年に制作されたものであると言う事です。
from me to you (1977)
 いよいよEPIC時代の快進撃の始まりです。大手に移り、かなり洗練された音になってきました。レコーディング体制も良くなったのでしょう。冒頭の壮大なイントロからデュークのシンセがここぞとばかりに爆発するファンキー・フュージョン「carry on」へ。こんなニクイ演出が、これがジョージ・デューク。この曲はラストの決めパターンも鳥肌モノで、こんな形でオープニングを飾りつけるセンスがカッコ良過ぎ。アルバムとしてはロマンティックなスキャットからファンクに切り替わる“you and me”などヴォーカル物を中心にしてはいますがブルースやソウルのエッセンスを加えるにしてもやややり過ぎな曲調になってしまう傾向があり、少し若さを感じてしまうところではある。しかしながら特にside-Bでのスタンリー・クラークをゲストに迎えたハード・フュージョンはさすがと言わざるを得ない圧巻の内容。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-255.html
reach for it (1977)
 重いシンセのオープニングは前作に共通しているようで雰囲気はかなり違う。それもそのはず、続くはキメパターンが完璧なインスト・フュージョンに流れて行くわけであった。さらに続くもManolo Badrenaのパーカスが効いたラテン・ハード・フュージョン“hot fire”(「大都会PART III」のテーマで高橋達也と東京ユニオンがイントロをパクッたナンバーです)とのっけからインスト押しの展開。こんなデュークもカッコ良し。そしてこのアルバムには後にDUKE'S FUNKの代名詞となりライヴでは必ず演る事となる“reach for it”がタイトルナンバーとして収録されヒットした。メロウミディアムからファンタスティックなファルセット・ヴォイスが響き渡る、これも「もうひとつのデューク」な“just for you”やひたすらPOPなソウル“searchin' my mind”などヴォーカル・ナンバーも佳曲が多く、ファンキーソウル、R&B的なナンバー、女性コーラスの多用、ブラジリアンテイストのインスト、そして鍵盤奏者としての実力を再確認するハード・フュージョンを一枚に詰め込みつつすべてがジョージ・デュークらしさで占められていると言う、最も音に勢いのあった70年代後半の数作品に共通する展開がここから本格的に始まった。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-256.html
don't let go (1978)
 さらに、ここから「master of the game」へと続くウルトラ・ファンキー・グルーヴの3部作が始まるわけです。シーラ・Eも全面参加。パワフルなパーカッションを生かしたダンサブルな内容。この頃のデュークはアース・ウィンド&ファイアをリスペクトしていたようで、ラリー・ダンの音世界にも通じるシンセの使い方をしていたりします。それにしても様々な音楽に対する見識がないと出て来ることは無いフレーズの数々、ファンキーながら深い、それでいて黒っぽさガンガンでとにかく楽しめる。根がエンターテイナーな彼だからこそなのでしょうね。探究心とどん欲さ、そしてデュークならではの音の楽しさに溢れたアルバムです。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-257.html
〜pacific jazz〜 (1978)
 これはマイナーレーベルからイレギュラー的に発売された希少盤。1970年に発表された「save the country」から数曲、また当時のメンバーによる未発表曲が記録されています。レコーディングも1969年と古く完全なジャズアルバムですが、当然のことながらファーストアルバムで見せたPOPフィールドへ強いアプローチも感じられ、ロックテイストに良いスパイスを与えたJay Graydonもしっかりと参加。「save〜」とともに、おそらく彼の名を目にする最も古いレコーディングだと思われますが、ギターの音はかなり時代を感じさせられますね。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-237.html
the primal George Duke (1978)
 収録曲、メンバーもすべて1966年に発表のジョージ・デューク・カルテットとして出された本当のファーストアルバム「jazz workshop」と同じ。つまりリイシュー盤ですね。彼のソロアルバムというよりは、ジョン・ハードのベースやドラムス、ベース・トランペットの4人(カルテット)からなるジャズセッションとして聴くアルバムです。でも、主役のジョージ・デュークがやっぱり一番目立っていますけどね。結構スリリング。
follow the rainbow (1979)
 創作意欲の旺盛だったこの頃。この79年は3枚のアルバムリリース。これは、フランク・ザッパの影響か?違うか(^^; オープニングの“party down”に象徴されるように本作はさらに洗練されたファンキーグルーヴの嵐。そして“say that you will”、“sunrise”などのミディアムにも名曲が多くファンキー・ポップなデュークがさらに進化した。さらには“festival”のようなお馴染みのラテン・フュージョンもしっかり収録され、やはり様々な顔を見せつける姿勢は変わらず、しかもプレイひとつとってもセンスの塊。統一感を持ってひとつのスタイルを追求するミュージシャンの方が好きなリスナーにはおすすめできないのですが、それとは正反対の嗜好な自分としてこの人はピッタリ嵌った音芸家。当時不評だったとは思えないほど良く出来た、この一粒一粒の完成度が驚きな作品です。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-259.html
master of the game (1979)
 そしてこれが、私が初めてジョージ・デュークを知った運命の作品。シーラ・Eのパーカッションが乱れ飛ぶ1発目のスーパー・ラテンファンク“look what you find”にノックアウト。当時中学生だった自分はこの音楽に出会ってしまった事が衝撃の一言で、ジョージ・デュークと言う人が自然と持ち合わせている多様性フィーリングは私の感性にピッタリと嵌り以後、すっかりフリークになってしまったのです。ここではP-FUNKへの傾倒と言った部分も見せており、ハードなフュージョン物はまったく演っていない。(インストはかろうじてラテン調の“dog-man”があるのみ)全体としてはさらにポップになっているが、それでいてこんなにインパクトの強い傑作が日本では未発売(惜しい)。それは鍵盤奏者としてのアイデンティティが薄れてしまったかのように感じるからで、当時の日本ではウケない、なかなか理解の得難いアルバムと捉えられてしまったからであろう。ジャケットのドラクエやファイナル・ファンタジーなどでの「ゲームに出てくる最後のボスキャラ」みたいな絵はこの時代としては将来のTVゲーム時代到来の予感をしていたか?凄い先見の眼の持ち主だったかと。そんなことはないよね。
 こちらもどうぞ→「FAVOURITE」
a brazilian love affair (1979)
 このアルバムを一番とする人が多いほどの名盤。ファンク3部作を成し遂げた後一息ついて、以前より親交の深かったアイアート/フローラ・プリムや重鎮ミルトン・ナシメント、ラウル・ジ・スーザらをゲストに迎えて作られたブラジリアン・フュージョンアルバム。録音もリオとLA相互で行われておりブラジルのミューシシャンも多数起用されている。名曲“Brazilian love affair”が収録されているのもこのアルバム。元々プレイヤーとしても南米系ミュージシャンのプロデュースもやりはじめており、ラテン・ミュージックやMPBへの敬愛が強くこんなアルバム作りをしてみたいとの思いがあったのでしょう。一枚を通じて1つのコンセプトを強く打ち出しているアルバムはジョージ・デュークとしては珍しい事でした。突然こんな作品を出してしまうところが彼の音楽的な懐の広さ(これもフランク・ザッパの影響?)の表れでしょう。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-267.html
dream on (1982)
 ニュー・ジャズの鍵盤奏者からクロスオーバー・ミュージックの寵児へ、そしてファンク・ミュージックへの傾倒、さらにはブラジリアン・ミュージックアルバムの発表と70年代を駆け抜けたデュークが80年代に入りやらかしたのはスタンリー・クラークとのユニット「CLARKE-DUKE PROJECT」でした。年々飛躍を続けて来た彼が同じく広い視野を持って活動をして来たベースの盟友と組んでポップ・アルバムを作ってしまったのだから驚きつつもどこか納得感の方が強かったですね。ああ、ついにやったかと。この「dream on」はそんな勢いに乗って生み出された彼自身としても最大のヒット作。ファンク3部作の頃よりも、さらに洗練されたディスコサウンドになりセールス的に大成功しました。「shine on」は当時の彼のライヴでも、オール・スタンディングナンバーになり、演っている彼自身もとても楽しそうでした。あんなライヴはもうないでしょうね。ただ、「shine〜」が目当ての日本のオーディエンスが他の曲をつまらなそうに見ていたのが印象的でしたが。まぁそりゃそうだろうなと。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-269.html
guardian of the light (1983)
 「DREAM ON」、「CLARKE-DUKE PROJECT」の成功でかなり余裕ができたのか、いかにも金をかけたと言わんばかりのバックミュージシャンてんこもりの大作。ストリングスまで生音でオーケストラしちゃってます。前述2作の成功により本作はさらにPOPを極める作りとなっていますが、どこか、調子にのりすぎてしまった感があります。“reach out”は“shine on”で、“born to love you”は“sweet baby”のそれぞれ二番煎じに聴けてしまうのがヒット作だけにハナにつく。個人的にはファルセットのコーラスが美しいAOR調の“you (are the light)”が好み。ジャパン・ライヴにも同行させたほどこの頃気に入っていたルイス・ジョンソンのチョッパー・ベースがこのような音にはハマッていて懐かしさもありですが、柳の下の泥鰌感アリアリな一枚。このアルバムのおかげか、同じ年に発表した「C-D2」は出がらしでつまらなかったですね。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-270.html
rendezvous (1984)
 EPIC時代最後の作品。前作のような大風呂敷を広げた作りではなく、悪くはないのですがやはりヴォーカルナンバー中心になっていて全体的に小粒な仕上がりです。それと言うのもこれまではほとんどが自作の曲のみでアルバムが作られていたのですが、ここではJerry KnightやPIECESのGeoffrey Leibらからの提供曲も数曲入れ、チープなブラック・コンテンポラリーをやってしまっているからで、どこか、ミュージシャンとしてのこだわりを捨ててしまったかのようにも聴こえてしまいますね。もう、この頃はブラコン界のトップ・プロデューサーにもなっていて、かなり忙しかったのでしょう。契約の関係で仕方なく作らざるをえなかった感じが漂っています。ラストの“Ipanema lady”で南米系の音を復活させたのは救いかな。 
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-273.html
thief in the night (1985)
 エレクトラ移籍後のファースト・アルバム。アルバム制作において迷走をしていたデュークが手に取るようにわかる、その当時のアメリカン・ポップにかなり傾倒してしまっているアルバムだ。エピック時代までのデュークは自らが時代を切り開いて来た感があるが、ついにここで彼は本意とは違った音楽業界の潮流に流されることとなってしまう。当時として最先端のポップ・ミュージックで一枚統一する事を余儀なくされた彼が一番力を入れたのが、彼自身のヴォーカルだった。インストルメンツで個性を捨てざるをえなかった彼が彼らしさを保つためにはヴォーカルしかない。そうでなければ、全9曲中4曲の曲作りを他者に依頼するようなアルバムでジョージ・デュークとしてのアイデンティティを示す事ができなかったのだろう。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-274.html
george duke (1986)
 初っ端の“broken glass”でのデジタル・ファンクはこここまでフッ切れてくれれば良し!みたいな痛快さ。しかしデュークがこのままのペースで行くわけもなし、続く2曲目“I just want to be in your love”でガラッと切な系のメロディーをカマすインスト・フュージョンにしてしまうところが憎い。その後は“good friend”のようなバラードを織り込みながら80年代中期らしいソリッドなビートをバックにしたブラック・コンテンポラリーが並ぶ。これまではデューク自身のヴォーカルを聴かせていましたが、ここではLynn Davis,Josie James,Carl Carwellらお馴染みのコーラス隊に任せている部分が見受けられるところもまた違ったデュークのポップ化と言いましょうか。“stand with your man”ではByron Miller&NDUGUコンビを用いてまんまreach for itなファンク・チューンを復活させたのはウレシイね。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-275.html
night after night (1989)
 ひとつの転機となったエレクトラ・レコードへの移籍でしたが、その前2作は試行錯誤に悩まれる日々だったことが音から現れていた。「thief in the night」の失敗、アイデンティティーを取り戻すかのような次作、そしてめまぐるしく変化するアメリカ音楽業界の中でこれからジョージ・デュークが取っていくべき音楽的方向性の基礎がこの「night after night」で示されたように感じます。それは全てではないが、スムース・ジャズへの対応だった。もちろんオープニングの“miss Wiggle”での攻撃的なシンセの響きやスタンリー・クラーク&アルフォンソ・ジョンソンのツインベースにジャン・リュック・ポンティ、マイケロ・センベロ、アイルト・モレイラら往年のミュージカル・フレンズと共にレコーディングした“fuzzion”など強力なフュージョンも捨てていないところはさすがと言うところですね。これまでに培ってきた音楽的経験によりさらに完成度の高い音作りに反映させて行くと言うところでしょうか。着実にトータル・ミュージックコンポーザーの道を歩んでいるようです。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-279.html
snapshot (1992)
 ヴォーカルトラックあり、BGM的フュージョンあり、ファンクありと、とてもバラエティに富んだ作品になっています。音に余裕が感じられますね。前作と共に、へたなアルバムを買って損をするならジョージ・デュークを買っておけばはずれはありません。ただ、それは70年代の勢いを知るリスナーなら逆に物足りなさを感じてしまうところはあるでしょうね。アメリカ音楽界自体が混沌としていった90年代に入り、彼に出来ることは時代に流されず、かつ取り残されずの姿勢で自らの音作りを行う事だったのでしょう。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-282.html
illusions (1995)
 スムース・ジャズを取り入れた前作「snapshot」での流れを引継ぎつつ、今回はさらに力強さを合わせ持たせた印象がある。彼の鍵盤はとてもしなやかだが、ただ優しいだけのイージーなジャズが台頭してきた時だからこそ、必要性は認めつつも自分は一味違った料理を仕上げてやろうと。その意気込み、と言うか職人魂が伝わってくるアルバムだ。新たな仲間と共に旧友との収録曲も交えた、デュークの90年代を代表するアルバムとなった。
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muir woods suite (1996)
 それで、自身のリーダーアルバム作りに行き詰まりを感じたのかどうかは知りませんが、ガラリと作風を変えたこの作品。1993年モントルー・ミュージック・フェスでのライヴ盤で、オーケストラをバックに組曲仕立てのクラシック&ジャズ的な内容になっています。この懐の広さが彼らしい。スタンリー・クラーク(b)、マザーズからの旧友チェスター・トンプソン(ds)、おなじみポリーニョ・ダ・コスタ(perc)らがサポート。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-285.html
is love enough? (1997)
 挑戦的な作風だった「muir woods suite」からデュークが一呼吸置いて作ったアルバムは自らの本質的な音楽に回帰したものだった。それは主にブラック・ミュージックであり、前作のオーケストラ・アルバムとはまったく対照的な位置に存在する。この作品はダイアン・リーヴス、ラシェル・フェレルらの身内や、ジョナサン・バトラーといった今まで使わなかったゲストまで、デューク本人が歌う部分もあるがそういったヴォーカルやコーラスを音楽の中心に置いた曲作りを行っている。とてもポップではあるが、80年代の頃のような「売れセン狙い」のものではなく、アルバムの冒頭から比較的ゆったりとした流れで進んで行く構成だ。アルバム全体に漂うアダルトな雰囲気からデューク流のクインシー・ジョーンズ的なトータル・アルバムと言えそうな内容。
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after hours (1998)
 全編インストルメンタル・アルバム。特にここではピアニスト・ジョージ・デュークとしての姿が浮き彫りになっているが、諸作で良く聴けたようなシンセの多重録音によりアイディアをふんだんに盛り込んだ、と言ったものではなく、とてもストレートに鍵盤を弾きこむレコーディングとなっている。フュージョンと言うには落ち着いているし、スムース・ジャズと言うにはジャジーでソロが多い。両者の丁度中間点にあるような作風だ。これは夜の時間を意識したアルバムだそうで、仕事が終わって家に戻った時間帯に流れる音楽としたものらしい。その前置きとして1曲目の“rush hour”があり、この曲だけが唯一のテクニカル・フュージョン。朝の慌しさを表したスリリングなナンバーの後にホッと一息つく夜の曲が続いて行くと言った構成になっている。
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cool (2000)
 ワーナー・ブラザーズ最後のアルバムとなった本作は、2000年代の幕開けに相応しくさらに新たなチャレンジを見せてくれた。その名の通り“cool”な最新のブラック・ミュージックである。それは前半のプログラミングによるシンプルなリズム・トラックをバックにしたデュークのヴォーカルを聴けば感じ取れる事だろう。無駄をそぎ落としたアレンジの中に本人やゲストのシャンテ・ムーア、ハワード・フューイット、フィリップ・ベイリーらのコーラスが夜の闇に誘われて行く。しかし一聴最新のNEO・ソウルに迎合しているようで、フローラ・プリンを迎えたラテン・スタイルやゴスペル、アフリカンなど様々な色を出す所はやはりジョージ・デュークと言ったところであり、アルバム中盤から後半にかけてはNDUGU&バイロン・ミラーのコンビを復活させて人の手によるリズムを中心にした曲作りに戻している所など、本質的な彼の音楽には全く変わりがない。新たな一面を見せてくれたがそれでもジョージ・デュークらしい作品とも言えるのだ。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-288.html
face the music (2002)
 自らのレーベル、BPM(big piano music)を立ち上げ送り出されたアルバム第一弾。本人が言うように音楽キャリアのターニングポイントとなった作品らしく、21世紀に入りこれから為すべき音楽姿勢の答えを出したと言えるでしょう。これまでは広くあらゆる音楽ファンに向けていた作風が目立っていたが、ここでよりリスナーの間口を狭め、こだわりをもったアルバム作りをする一ピアニストに戻った感があります。バックも今までのメンバーはほとんど姿を消し、ベースにクリスチャン・マクブライド、ドラムスにジョン・ロバーツとのトリオに今後デュークお気に入りのギタリストとなるジェフ・リー・ジョンソンのギターで一枚統一した極めてジャズ寄りな、それでいてソウル・フィーリングをも合わせ持つ21世紀のジャズをやっているのです。一曲目の「the black Messaiah(part two)」は30年前のキャノンボール・アダレイバンド時代のデューク作品の焼き直し。この曲のみライブ録音のようで曲が終わった後、MCのバックに流れるはあの「カプリコーン」!!(これも元々はC・アダレイ時代に発表された曲)そのようなルーツを辿りつつも新しく、ラストの11分にも及ぶジャムも圧巻の作りで、いやー、ジョージ・デューク、渋くなったな。大レーベルからのアルバム制作と言うしがらみから脱し、自由な発想で「自分の音楽」に直面したある意味痛快な一枚。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-289.html
duke (2005)
 約3年のブランクを置き放たれたBPM第二弾は自分の名をアルバム・タイトルとした。これは1986年の「George Duke」以来2回目の事だ。これは前回同様今回も「ジョージ・デュークのすべて」を見せる内容と言う事に他ならない。またもやここで本質的な彼のポップな世界に戻って来ているのである。なんともハッピーなインストでアルバムの幕が開き、続くはリード・ヴォーカルを取るデュークの声がなんとも懐かしい。2000年の「cool」もヴォーカル・アルバムだがこれまでのスタイルとは意識的に変えていたネオ・ソウルだったのに対しここまでナチュラルなヴォーカル・ナンバーは久しぶりの収録だ。前作とは対照的なエンタテイメント性の高いインストルメンタルとお得意のポップ・ヴォーカルのナンバーを織り交ぜた、これぞ、デューキー・ミュージック!を知らしめる内容となっている。レコーディング・メンバーも要所要所で様々なベテラン・プレイヤーが顔を見せて大変豪華。特にアイルト・モレイラと再演したラテン・タッチの“sausalito”やNDUGU、バイロン・ミラー、シーラ・Eらとの18分にも及ぶ同窓会フュージョン“hybrids”がハイライト。ちなみに本作はボーナスDVDとして1983年の日本公演ライヴ映像が付いていると言う、まさに「デューク」なパッケージングだ。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-290.html
in a mellow tone (2006)
 一言で表せばトラディショナル・ジャズ・アルバム。Brian Brombergのアコースティック・ベースと新進女性ドラマーTerri Lyne Carringtonとのトリオ編成を軸に、曲によってホーンやギターを加える構成で一枚統一されている。今まで録音を共にする事のなかったミュージシャンを起用したのもジャズ・アルバムとして今までのアルバムとの違いをより鮮明にするためだったのだろう。しかし、至極トラッドでスタンダードなジャズをやりながら、ミュージシャンは比較的現代の若手〜中堅を選んだのはフレッシュな「今の音」にこだわったからか。タイトル・ナンバーは幼いデュークが音楽に興味をもつきっかけとなったデューク・エリントンのカヴァーで、カヴァー曲をアルバムタイトルにするなんて事は「save the country」以来で珍しい事。つまりはそのタイトルがこのアルバムを物語っていると言う事だろう。コンセプトは「メロディー」であるそう(melody is important!)で、ジャズの中でもメロディアスで、メロウな調のナンバーをカヴァーとオリジナルで織り交ぜて綴られている。そして彼の代表曲、クラーク・デューク・プロジェクト時代に生まれた“sweet baby”のピアノ弾き語りヴァージョンは全く別物の仕上がり。ピアニストとしての確りとした演奏力に引き込まれつつ、心地良いこの「あっさり」感はデューク自身の優しいヴォーカルにあるのかな。「ポピュラー・シンガーのジャズアルバム」的な香りがするのはやはり彼のその音楽的資質から来るものなのでしょう。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-291.html
dukey treats (2008)
 “treats”とは食後の軽いスイーツを意味するらしい。ジャケットはチョコレートを持って微笑んでいるデューク。しかもそのチョコの型は彼の代名詞とも言える、ギターの様に肩からかけるショルダー・キーボードだ。今回はこれで、楽しくくつろいでくれ、と言ったところかな。初っ端はデュークの掛け声から始まるスタジオ・ジャム・スタイルのファンク。どちらかと言うとMichael MansonのスラッピングとRon Bruner Jr.のハネるドラミングとの掛け合いに身体を揺らしてしまう始まり方におお、そう来たか、と思うもすぐに次曲“I tried to tell you”でいつものデューク・メロウに。このガラッと変わる展開はもうすでにお馴染みですね。全体的には70年代のファンキーなデュークが戻ってきたようでもあり(なにしろタイトル・ナンバーはNduguとByronにシーラ・Eのリズム隊による“dukey stick”再現ですから)、やはりこの人らしくデビューから40年以上に渡る今まで、ありとあらゆるスタイルの音を吸収し続けた自己の音楽性をあらためて披露しているようでもあり、な個人的にはニヤニヤしてしまうアルバム。アルバム後半に、デューク流セプテンバー'08と言えそうなEW&Fスタイルのナンバーが飛び出す(しっかりFred Whiteがヴォーカル参加!)のも嬉しい内容ですね。旧くからの仲間はもちろん、新しいサポート・ミュージシャンにも恵まれた大変豪華な作りにもかかわらず、このジャケットからにじみ出る余裕が憎いなぁ。並のアーティストなら「大作」扱いでしょうね。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-292.html
déjà vu (2010)
 2年ぶりの本作は前作「デューキー・トリーツ」の流れを踏襲する形で、ロナルド・ブルーナーJr.、テディ・キャンベルのドラムスにマイケル・マンソン、ラリー・キンペルのベースと言う、バンドとしてもツアーを行っているほど息の合った、今現在における最良のレギュラー・メンバーと共に録音を行った作品となりました。音のカラーの多彩さはいつもの通りですが、以前このアルバムについてのインタビューでも本人が言っていた通り、マイルス・デイビスへのオマージュ“ripple in time(for Miles)”に象徴されるように「ファンキーでありつつ、古いタイプではないもっと自由な“今のジャズ”」を強く意識している部分が全体としても感じられます。女性コーラスが爽やかな、おなじみとなったブラジリアン・サウンド“a melody”で幕開けとなり、曲によってブルージーであったり、ポップであったり、もちろんファンキーであったりと、とてもスマートなアレンジの中にそのマルチ・パフォーマーとしての豊かなセンスをさりげなく醸し出すアルバムとなってはいますが、以前と違うのはただ多様な音楽を詰め込んだカラフルなアルバムではなくその中に統一感があるところ。軽く受け流すスムース・ジャズの類とは確りと一線を画す、じっくりと聴きこめばそのひとつひとつのアレンジの深み、そしてプレイヤーとしてのワザに唸らされてしまうのは今更ながら流石はデューク!と言ったところですね。そして、何と言ってもニヤニヤしてしまうのはタイトル・ナンバーの“déjà vu”。古くからのファンなら「don't let go」のラストをシメた“preface〜the future”を思い出してしまうでしょう。“déjà vu”はそれをさらにミステリアスな曲調にしたような感じで、R,ブルーナーJr.の熱いフィルによって重厚感が増していますね。インタビューでも「自分が昔やってた音楽がまたあるようなないような…」と自ら言っていましたが、このようなナンバーを最後に持って来るのも、アルバムを通してデュークのファンならどこかで聴いたことがあるような、それでいて新しい音であると言う、まさにデジャヴに包まれた一枚と言えるでしょう。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-293.html
dreamweaver (2013) new!!
 3年の月日をかけて送り出された新作は、昨年cancerによって亡くなられた愛妻Corineに捧げられたものとなっていました。当然ながら妻の死を受け入れられず音楽に向かい合えない時期があったようですが、ある朝に見た朝日をきっかけにメロディーが素直に沸いて出てきたそうで、ファンとしては無事(?)にこの最新作を耳にする事ができたようです。デュークがこちらを見つめ、その指先からは七色のオーロラが発せられていると言う、デザイン的に日本のデザイナーには生み出せないセンスのジャケットがまず目を引きますが、今回のアルバムタイトルは「夢織りびと」。中ジャケのピアノ線から七色の織り糸に変わる絵から、その「夢を織る人」はデュークであるとわかります。これはデューク自身がとても素直な気持ちで作られたアルバムと言っているのですが、ジャズ、ファンク、ソウル/ヴォーカルなど様々な曲調が繰り広げられるのは今まで通りなれど、今回はそれぞれが実に落ち着いている。わかりやすく言えば熟練職人の落ち着きだ。エンタテイメントを「狙った」ものではなく、ナチュラル・フィーリングによって生み出されたメロディーを基に素直な今のデュークを現しているのだろう。妻の死に直面し、悲しみにうちひしがれながらも、その現実を乗り越え音楽に向かい合えるようになった、なにも飾ることのないジョージ・デュークの今がここに在ると言えましょう。それで、肝心の音なのですが、実はこれがまた新しい。様々なカテゴリの音楽が出てくるのは変わらないのですが、今までのアルバムとは音が確実に違うのです。前作「デジャヴ」がその名の通り既聴感に満ちたものであったのに対し、今回は一区切りついた後のような一新された感があります。その鍵盤のプレイ、フレーズやヴォーカルでデュークらしさは十分に伝わるのですが、全体の音の構築がまるで生まれ変わってしまったかと。悟りを開いたかのようなアルバム全体から漂う強い精神性がそう感じさせるのかもしれませんが、少なくとも新味は感じていただけるものとなっています。ラシェル・フェレルとデュエットする“missing you”の痛切だけではなく、“ball & chain”で歌うティーナ・マリー、そして数曲で参加するお気に入りのギタリスト、ジェフ・リー・ジョンソンなど、妻だけではなく音楽仲間の相次ぐ死去を目の当たりにしてきたジョージ・デュークが「夢織りびと」となって哀悼と共に音楽への愛を紡いだアルバム、実に聴き応え・ありです。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-294.html


CLARKE DUKE PROJECT

 1970年代から、ジョージ・デュークとスタンリー・クラークは良くツルんで活動をしていましたが、1981年、ついに正式にユニットを結成!音楽に対する懐の広さ、基本的にPOP志向である共通性から、生まれるべくして生まれたコンビと言えるでしょう。

 
CLARKE DUKE PROJECT (1981)
 やってくれました!二人の個性が良く噛み合って気持ちの良いアルバムに仕上がっています。元々ジャズ畑でテクニックもあり、音楽性も豊かな彼らですが、ヴォーカルナンバー中心でとびっきりのPOP作品です。「sweet baby」はビルボードチャートにも上ったほどのヒット・ナンバーに。「shine on」発表前ですから当時日本では圧倒的にスタンリー・クラークの方が知名度がありましたが。
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CLARKE DUKE PROJECT/2 (1983)
 しかし、この安っぽいジャケ写はなんとかならなかったのでしょうか。2作目は勢いで作ってしまったような感じがして、1曲目がつまらないのでアルバム全体のまとまりがないですね。セールス的にもファーストには遠く及ばなかったようです。このころのジョージ・デュークはちょっと調子に乗りすぎたオヤジのような印象がありますね。
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Stanley Clarke and George Duke/3 (1990)
 さすがにもう、「プロジェクト」なんて恥ずかしくて付けられなかったようですね。ユニット・アルバムとしています。7年ぶりのサード。音も大御所の二人らしく、余裕があるものです。でもこれって、スタンリーのベースがなければ当時のジョージ・デュークのソロアルバムとたいして変わらないのでは?とも感じますね。まあ、セカンドよりは遥かに安心して聴けるアルバムとなっています。
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THE STANLEY CLARKE-GEORGE DUKE BAND/live in Montreux (1993)
 1988年に行われたモントルーでのライヴ。ジョージ、スタンリーのユニットにドラムスはおなじみLeon"ndugu"Chanclerというフフフなトリオによるセッションとなっています。大ヒット曲「sweet baby」はさすがに収録されていますが、全体はオリジナルアルバムで見せていたようなPOPさはほとんどなく、クラークのグルグル早弾きベース飛びまくりのファンク・ジャムになっています。ライヴらしくってこれはこれでイイですね。JAZZ DOORってドイツのレーベルなのかな?音はブート盤のようであんまり録音良くないです。


もう一つのGeorge Duke

 数多くのセッション、レコーディングに携わり、デニース・ウイリアムスジェフリー・オズボーンなど他のアーティストのプロデュースも行ってきた彼ですが、個人的には80年代以降のブラックコンテンポラリー系のプロデュースアルバムにはあまり興味がありません。彼がいかにも彼らしいフレーズをキーボード、シンセで表現していたのはやはりジャズ・インプロが炸裂していた70年代のセッション活動からの音源に聴き取ることができます。もちろん完全ではありませんが、私の所有アルバムからそれらを中心にをご紹介しますね。


THE Billy Cobham-George Duke BAND/“live” on tour in europe (1976)
 コブハム-デュークの他にアルフォンソ・ジョンソン(b)、デビュー間も無いジョン・スコフィールド(g)という今となってはかなり豪華メンバーだったバンドとしてのアルバム。ライヴ録音。全体の雰囲気に合っていないのに無理やりヴォーカルナンバーを挟んでしまうところが彼らしい。本来は個性の強い4人のバンドサウンドを楽しむ作品のようで、ジャズファンにも評価されている一枚。
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Dee Dee Bridgewater/bad for me (1979)
 これはいい!とにかくプロデュースといいほとんどのナンバーでデューク節炸裂の弾きまくりキーボードといい、そんじょそこらのブラコンアルバムなど軽く吹き飛ぶ超ファンキーグルーヴ! 特に後半の本家ラリー・ダンを迎えた「tequira mockingbird」のヴォーカルバージョンからボビー・ライルによる「don't say it」への流れは鳥肌モノ。思わず体がリズムを刻んでしまいます。「don't let go」から「follow the rainbow」あたりのジョージ・デューク・ファンクと同じ傾向のサウンドですので、好きな方は必ずチェックしてほしい一枚ですね。
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Michael White/the X factor (1978)
 ぬおぉぉを〜。バイロン・ミラーのペンペン・チョッパー音と”ンドゥーグ”チャンクラーのドラムスコンビ。これはまさに「don't let go」と同じ音。70年代にジョージ・デュークがプロデュースしたアルバムの中ではかなり「裏名盤」と言えるのではないでしょうか。もちろんダウィリ・ゴンガのセッションネームで彼自身もキーボード、シンセを弾きまくっています。全体の構成はヴォーカル曲を含むフリー・ソウル/フュージョンで、ヤン・ハマー&ジェフ・ベックのようなスリリングなナンバーもあり一言、カッコイイです。ここでのマイケル・ホワイトは黒人のバイオリニストの方の人で、現在はほとんど活動していないようですが、これほどの作りのものが当時セールス的にもほとんど受け入れられず、エレクトラという大手のレーベルのものでも再発もされないとは、このスタイルのジョージ・デュークの作り出す音に対して評価がいかに低かったかがわかりますね。この時代が好きな人なら是非おすすめです。
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101NORTH (1988)
 これは80年代の録音ですがかなりレアな一枚。ジョージ・デュークバンドの作品として発表したもののようです。ちょっとさっぱりしたイージー・リスニング風。実験的な意味合いが強い音で、普段の彼のリーダー・アルバムでは感じられない「間」があります。大変地味な作りですが、おもしろい。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-276.html
101NORTH/forever yours (1991)
 前作の地味な作りから一転、Carl Carwell,Everette Harpら4人をメインメンバーとし、脇をバイロン・ミラーやポール・ジャクソンJrなどのジョージ・デュークファミリーでガッチリ固めてヴォーカル曲中心のポップ路線となりました。ブラコンプロデューサーとしてのデューク色が良く出た作品で彼自身のキーボードも大きくフィーチャーされています。セールス的には全然でしたが内容はかなり高いレベルであると言えます。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-281.html
Eddie Henderson/sunburst (1975)
 カッチョ良し。とにかく全編デューク節のセッションを聴くもよし、70年代のファンク・ジャズを堪能するもよしの壮快アルバム。エディ・ヘンのトランペットがもちろん主役ではありますがとにかくサウンド全体がかっこいい。ベースがアルフォンソ・ジョンソン、ドラムは叩きまくり時代のハーヴィー・メイソン、サックスにベニー・モウピンとくればおわかりいただけますよね? ボビー・ハッチャーソンも一曲だけマリンバで参加。ファンキーですぞ。
Frank Zappa/apostrophe(') (1974)
 一連の作品の中でもジョージ・デューク色の良く出た作品。とはいっても、ザッパはザッパなので心して聴かないと最後まで持たないかもしれません。かなり、すっとぼけた感覚でとんでもない方向に飛んで行ってしまいそうな展開です。しかし、音楽的には大変優れたアルバムで、奇才・フランク・ザッパを支えるキーボーディストとして、マザーズ最強の時代を築き上げました。
Frank Zappa/one size fits all (1975)
 1曲目の「inca roads」ではG・デュークのファルセットヴォーカルも聴く事が出来る、フュージョン色の強い部分もある興味深い作品。しかし、F・ザッパの音楽的才能にはただただ頭が下がります。これだけの音を四半世紀前にやられてしまうとは。マニアックなサウンドですが、ジャンルにこだわらず音楽を楽しめる人には是非聴いていただきたい。この感覚には思わず唸らされてしまうでしょう。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-247.html
Frank Zappa THE MOTHERS/piquantique SYDNEY 1973 (1999)
 ジャン・リュック・ポンティも参加した1973年のライヴ。イアン&ルース・アンダーウッド夫妻、ブルース&トム・フォウラー兄弟、ラルフ・ハンフリー等にキーボードがジョージ・デュークとマザーズ最強の布陣での貴重な音源。ブート盤のため音質は悪いですが、スリリングなジャズ・フュージョン曲が多くとてもカッコ良いです。もっと良い音で聴きたかった。
THE JEAN-LUC PONTY EXPERIENCE with George Duke TRIO (1969)
 バイオリン奏者、ジャン・リュック・ポンティとG・デュークトリオのジョイントライヴ録音。エレクトロ・ジャズ創世記の時代で彼らもその先駆者だったことが再認識させられます。ベースは70年代中期まで活動を共にしたジョン・ハード。ハービー・ハンコックのカヴァーが収められているところも貴重です。当時はハービー方が知名度があったのですが、若きジョージ・デュークがファンキー・ジャズにさりげなく影響を受け始めている様子がうかがえますね。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-234.html
Peter Magadini/polyrhythm (1980)
 超マイナー盤ですねえこれは。録音は1975年で、ドラマーのPeter Magadiniのリーダーアルバムとして発表されたようです。カルテットのジャズ・アルバムですが、キーボード担当としてG・デュークが大きくフィーチャーされています。2曲目はデューク自身が書いた曲が収録されていますが、MPS時代にも通ずる雰囲気が味わえます。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-266.html
Flora Purim/open your eyes you can fly (1976)
 このあたりからフローラ・プリムのアルバム製作において、サウンド面で最も中心的役割になっといたのがジョージ・デュークなのです。すべての曲でキーボード、シンセ、ピアノを担当し、本人を食ってしまうほどの存在感を出しています。アルバム前半はリターン・トゥ・フォーエヴァーの影響からチック・コリアの作品を中心に、夫であるアイアート、ベースはロン・カーター、アルフォンソ・ジョンソンらが参加。
Flora Purim/nothing will be as it was...tomorrow (1977)
 本作はパトリース・ラッシェンアル・マッケイ(ギターでも参加)&フィリップ・ベイリーのEW&Fコンビによる作品を取り上げ、よりPOPな仕上がりで、参加アーティストもG・デュークはもちろんバイロン・ミラー、レオン・チャンクラーなどのおなじみメンバーに、ジェイ・グレイドンのギターと豪華な顔ぶれでとても興味深いアルバムとなっています。ただし、ミルトン・ナシメント作の曲が全8曲中3曲と、ブラジリアン・ジャズである事には変わりありません。
Flora Purim/that's what she said (1978)
 1978年発表ですが録音は76年にされていたようです。とにかく一言で、カッコいい。MPS時代のジョージ・デュークのアルバムの中でそのままF・プリムがヴォーカルをとっているようで、スリリングな展開を見せてくれます。彼女の歌自体は好き嫌いが分かれるでしょうが(私はどちらかと言うと・・・?)とにかく演奏だけでも価値ありです。ここでもブレイク前のジェイ・グレイドンのリズムギターが聴ける貴重な音源でもあります。おすすめですよ。
Flora Purim/everyday,everynight (1978)[F]のページで紹介しています。
Flora Purim/carry on (1979)
 いいね!この時期はジョージ・デューク自身も一年で3枚のアルバム製作と、ノリにノッていた時期でもあるし、大好きなファンク路線ともう一つの柱としていたブラジリアン・サウンド路線をフローラ・プリムのアルバムで融合させてしまった感があります。同時期でもありディー・ディー・ブリッジウォーターの「bad for me」的かなと思いきや、やはりそこはしっかりと南米の香りのする作りとなっています。しかし、タイトル曲はジョージのEPIC移籍作を飾った鳥肌的名曲。アル・ジャロウとのデュエットでそれまでのフローラのアルバムにはなかったド派手展開を見せます。バックもレオン"Ndugu"チャンクラー、リッキー・ローソン(ds) マイケル・センベロ、デビッド・アマロ(g) バイロン・ミラー(b) シーラ・E(perc)ら「follow the rainbow」ファミリーがビシッと固め、彼女の真のファンにしてみれば異色!邪道!のオンパレードかもしれませんが私としてはツボにしっかりはまってしまいました。
Sonny Rollins/easy living (1977)
 全面的にキーボード、ピアノで参加した作品。最初の「isn't she lovely」のカヴァーではこの頃の彼らしい音がきけますが、やはりソニー・ロリンズの作品と言うこともあり、ジャズの基本的な部分からは大きく外れることのないようにしっかりとプレイしています。しかし、全編弾きまくっていて存在感はバッチリですね。ファミリー的ギタリストだった元PAGESのチャールス・イカルス・ジョンソン、バイロン・ミラーも参加。
THE THIRDWAVE/here and now (1999)
 1970年に発表されたフィリピンの五人姉妹(13〜19歳)ヴォーカルグループのボサ・ジャズアルバムがリイシュー。全面的にアレンジ、指揮をジョージ・デュークがとっており、バックのサウンドも彼のトリオを中心に懐かしげなサウンドとなっています。中でも2曲ハービー・ハンコックを取り上げており(処女航海、カンタロープアイランド)当時のデュークがかなりHハンコックに影響を受けていたことが伺えますね。しかし、こんなマニアックなサウンドで10代の女の子がサラッと歌ってしまうとは。。。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-238.html
Raul de Souza/don't ask my neighbors (1978)
 これもデューク・プロデュースの隠れた名盤。ブラジルのジャズ・トロンボーン奏者が当時のフュージョン・ブームに乗ってこのようなアルバムを発表したわけですが、音はカッチョいい頃のデューク・サウンドそのまま。丁度「don't let go」の時の音ですね。デュークはもちろんSkip Scarborough、Harvey MasonMichel Colombier、Wayne Shorterなどなどの曲をやっています。ラウル・ジ・スーザと言えばなんといっても「スーザボーン」でしたね(最初、てっきりジャズの「スーザホーン」奏者かと思ってしまいました。あんなデカイ楽器で?マジ?と。やっぱり違いましたが(笑))。彼が考案したという4つのバルブ(普通のは3つらしいです)がついたトロンボーン。今でもそれを吹いているのでしょうか???
A TASTE OF HONEY/twice as sweet (1980)
 ミゼル兄弟プロデュースの黒音からガラッと一変、80年代ソウルの洗練された音で届けられたこの作品のプロデュースがジョージ・デュークでした。ジェフリー・オズボーンをプロデュースした時に近い音作りで、ヒット・チャートを考えつつ(she's a dancerなんかはモロ)、「follow the rainbow」〜「master of the game」あたりのテイストも見せる丁寧かつカッコいいアレンジが気持ち良い一枚。バックもデューク・ファミリーで固められていますよ。シングルカットもされた坂本九のカヴァー「sukiyaki」は良く流れていましたが、ここでの琴のアレンジはHIROSHIMAのDan Kuramoto。ここでもいろいろな繋がりを見せてくれました。
馬解説→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-265.html
Cal Tjader/amazonas (1975)
 アイアート・モレイラのプロデュースにより製作されたヴァイブ奏者カル・ジェイダーのフュージョン・アルバム。とは言いつつも、アレンジはすべてジョージ・デュークが行い、音もこの頃のデューク色が満開。アイアートとの仲が相当良かった事がわかります。タイトル曲であり、アルバムの最初を飾るジョアン・ドナートの“amazonas”ではほとんどデュークのアルバムか?と思うほど、ジェイダーのマリンバがポコポコと浮いてしまうような。他の曲もアイアートはもちろんヘルメート・パスコアール、セルジオ・メンデス等THE・ブラジルと言わんばかりの布陣の中にデュークの“corine”も取り上げていたりしますが、これはジェイダーのプレイと言うよりもデュークの渋いアレンジを聴くためのアルバムかも。

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