Earl Klugh/living inside your love (1976)
 日本でも人気が高まってきたクロスオーヴァー・ミュージックシーンにおいて、ギターと言えばエレクトリックであった時代に飛び出したアコギ・プレイヤーの元祖的存在、アール・クルー。これはその名を不動のものにした2nd。とかくTVのBGM的なイメージをもたれがちな音ですがまずは一曲目の“キャプテン・カリブ”。ジェントルソウツが演奏し知れ渡ったデイヴ・グルーシン作のナンバーですがクルーのこれが初演。その攻撃的なソロはBGMなんてもったいないほどのプレイ。もちろんメロディアスで叙情的なギターの魅力を存分に楽しめるメロウ・ナンバーも、今の安易で商業指向なアコギ・フュージョンとは全くの別物。力の入り方が聴けばわかります。
Earl Klugh/finger paintings (1977)
 当時クロスオーバー・フュージョンという音楽が注目されたのは、リー・リトナーを代表とするギター・プレイヤーがこれまでジャズを聴かなかった若いギター小僧に受けたのと、これまではとっつきにくかったジャズが聴きやすくなったということでイージー・リスニング的に聴き始めた大人のリスナーが増えたからだったのでしょう。エレクトリックギター・アーティストに人気が集中しがちでしたが、彼は一人アコースティックギターで不動の地位についたものでした。デイヴ・グルーシンのエレピにのって音楽に夢中だったあの頃が甦ってきます。数曲でルイス・ジョンソンがバックでチョッパー・ベースを弾いていたのも密かに注目されたアルバムだったですね。
Earl Klugh/magic in your eyes (1978)
 デイヴ・グルーシンから離れ、ブッカー・T・ジョーンズのプロデュース作となった4th、邦題「瞳のマジック」。曲の親しみやすさという点ではこれが一番か。参加メンバーも変わり、本作で一番のアクセントとなっているのはグレッグ・フィリンゲインズでエレピでもクラビでもとにかく良い味が出ていますね。その彼が書いた“lode star”は冒頭の古臭いシンセだけが余計ですがその後は一転クールな展開でクルーのソロもキマってカッコいい。ソロ作がフリーソウルで人気のジーン・ダンラップが全曲叩き、クルーが師と仰ぐチェット・アトキンスとの共演などといった部分でも注目の一枚。しかしながら正直なところ前作までがクロスオーヴァーで本作はフュージョン、いや、さらにイージーリスニングに近くなってしまった感はあり。
EASY PIECES (1988)
 AWBヘイミッシュ・スチュワートを中心とするポップバンド。メンバーは紅一点・オーストラリア出身のレネ・ゲイヤーのヴォーカルにスティーヴ・フェローンのドラムス&アンソニー・ジャクソンのベースと、メンバーからしてテクニカルなAORソウル風だと思っていましたが、やはりそこは80年代後半。プログラミングを駆使したとても当時特有のポップな作品でした。しかし、中にはAWB的な雰囲気をもった曲も現れるところは嬉しいですね。
Ed Motta/aor (2013)
 ブラジルのポップ・シンガー・ソング・ライターがまさしく日本式にカテゴライズされた「AOR」をサウンドのモチーフにして作ったアルバム。かなり直球で勝負されたイマのAORだ。バックのミュージシャンも南米系が中心となっているが、そこにあるのはボサノヴァでもMPBでもない。聴けばすぐにピンと来る通り、曲のバックグラウンドに大きく影響されているものはスティーリー・ダン、しかも「彩(エイジャ)」、そして、ドナルド・フェイゲン「ナイトフライ」。録音が新しいと言うこともあるが、まるでインコグニートがスティーリー・ダンを演っているような感覚。そうそう、ゲストはデヴィット・T・ウォーカーだけではなくそのブルーイも参加していたのだ。この種の音の全盛期はもう30〜40年前になってしまうのですが、ジャズのスタンダードやオールディーズを愛するように、AORに対して敬意の念を持ってアルバムを作ってしまう人もまだまだ世界中には大勢いると言う事なのでしょう。
Eddie Henderson/comin' through (1977)
 UK・EMIのmasters of funk&soulシリーズの嬉しいCD化。エディ・ヘンダーソンではおなじみのプロデュースはこの頃のソウル・フュージョンに良く出ていたSkip Drinkwater(ZEMBU productions)。より耳ざわりの良い音になった本作はサイドメンも「らしい」顔ぶれでギターはリー・リトナーとアル・マッケイ、ベースはポール・ジャクソン、パーカッションにムトゥーメとフィリップ・ベイリーといったところ。ファンキーなリズムの中にこの人のペットが気持ち良く流れていきます。正直なところ同時期のドナルド・バードやフレディ・ハバードらのアルバムよりこちらのほうが好みですね。曲はパトリース・ラッシェン、ムトゥーメ、ジョージ・ケイブルス、そしてE・ヘンダーソン自身が2曲ずつ持ち寄っていますが特にキーボードやコーラスでも参加したP・ラッシェン作のナンバーはこれがまた「SHOUT IT OUT」まんまの鍵盤使いでいいなあ。(何とベースも弾いていますよ。才女ですね)Mtumeの2曲も派手派手でらしさ丸出し、カッコイイです。トランペッターのファンク&ソウルはこの後トム・ブラウンと言う新星が出てくるのですが、全曲インストのトランペットをフィーチャーしたブラック・アルバムでこれだけ気持ちの良いのってあまり無いのではないでしょうか。
El DeBerge/gemini (1989)
 アイドル・グループ「デバージ」の頃から一時は「モータウンのマイケル・ジャクソン」とまで期待されたアーティストでしたが、結果的にはビッグ・アーティストになるどころか白人アーティストに力を借り続けたブラック・シンガーとして時代とともに姿を消して行ってしまいました。どうせなら思いっきりド派手ロック調の曲でも発表して思いきったプロモーションをかければよかったのでしょうが、アーティストカラーから言って無理だったのでしょう。彼の作るメロディーはなかなか泣かせる部分もあり好きなのでとても残念なのですが。
El DeBerge/in the storm (1992)
 なんとも賑やかなジャケット。音もジャケに負けないくらいカラフル、って思ったらプロデュースは自身と共にモーリス・ホワイトだった。interludeがいくつも入っていると思ったらやっぱりね。この間奏曲を含む全19曲のボリュームたっぷりの一枚。かなりダンサブルではありますが、この人の良さはタイトル曲のようなスローナンバーで一番生きてきますね。やっぱり。
El DeBerge/heart,mind&soul (1994)
 タイトル曲は、うわうわ、いかにも「I want you」あたりのリオン・ウェア・グルーヴです。テケテケテケテケテケってギタースライドに思わずニヤニヤ。やはり、ここらあたりをさりげなく崇拝しているアーティストっているものなんですね。ちなみに、FOURPLAYでも彼がヴォーカルをとってリオン・ウエアのカヴァーを歌っていました。
THE ELEVENTH HOUSE featuring Larry Coryell/aspects (1976)
 ロック的なハードな奏法を用い、ジャズ・ギターの既成概念を壊して行った時代のラリー・コリエルが70年代に率いて活動していたイレブンス・ハウスの最終作。グループとしてのアルバムながら、やはりここでもL・コリエルのギターを聴くアルバムなのでしょう。ジョン・リー&ジェリー・ブラウンやマイク・マンデルらも曲を提供していますが、どうもグループとしてのまとまり、一体感が薄く感じられるのはメンバーがあまりテクニカルではないからか。日野皓正がここではメンバーに、ブレッカー・ブラザースの参加など聴き所はバッチリですが。
Elisha La'Verne/sensuous (2002)
 R&Bにしてもそうですが、どうも最近「イイなあ」と思える音楽はUKから来るものが多いですね。と、いうのはアメリカのマーケットで受けるものは自分としてはちょっと違う方向に進みつづけているようで、インディ・レーベルからのものでやっと合う音があったりして、お国柄いたしかたないところではありますが。このエリーシャの新作もアメリカならインディー扱いなのかな、と思いつつも自分としてはツボにうまくはまってきまして、全編統一されたムードでオーガニックソウル(いまだに良くわからん言い方ですが)を聴かせていただけてごっつぁんでした。
Ellen McIlwaine (1978)
 60年代から活動しているベテランSSW/ギタリストの4th。UAにレーベルが変わり、自身の名をアルバムタイトルにするあたりは心機一転の力が入ったものだったのか、フォーク・ロック中心の構成ながらも“you may be all I need”や“lover's lane”などのフリーソウルとも感じる渋さと黒っぽさをも併せ持った音楽スタイルを取っている引き出しの広さ。ZEMBUプロダクションズのバックアップというところも影響しているのかも知れませんね。素通りをしてしまいがちなアーティストですが、オオッと引き込まれるものが時々出てくるのですからあなどれません。
Eloise Laws/ain't it good feeling good (1977)
 ロウズ・ファミリーの中では妹デブラよりも長く歌い続け、アルバムもリリースしているわりには地味なイメージのあるエロイーズ姉さん。このアルバムだけは紙ジャケ仕様など形を変えながらCDとしても売り続けているのは何故か?最初聴いた時には本人のヴォーカルもそうだがサウンドが歌謡ソウルしているのが、悪くはないのだが兄弟の創る音楽から見てしまうとやけに下世話すぎて好きになれなかった。しかし、純粋なソウル好きには逆にこれがいいのでしょうね。自分が変わっているだけか、と妙な納得の仕方をしてしまう、B級歌姫唯一の人気盤。タイトル曲だけでも価値はあるかな。
THE EMOTIONS/sunbeam (1978)
 ノリにノっていたモーリス・ホワイト絶好調プロデュースの快作。ここではのっけからモーリスとアル・マッケイによるど・アースなナンバーから幕を開け、スローナンバーが絶妙のタイミングで入りつつも黒っぽさが効いたファンキーな内容で全体を占めています。同時期(「太陽神」〜「BEST vol,1」)のアースサウンドをよりカジュアルにしエモーションズを盛り上げていますね。次作はまんま「I AM」だけにこちらの音の方が個人的には好きかな。デオダートの「spirit of summer」をヴォーカル・カヴァーしているところなんか本当に母体と平行して音作りをしてますね。
THE EMOTIONS/come into our world (1979)
 EW&Fの持つ音楽性を他のアーティストによって表現してもらうためにカリンバ・プロダクションがあった、と言うことであれば、所属アーティストの中でそれを最も忠実に表していたのがこの「アース・シスターズ」であるエモーションズでありました。デヴィッド・フォスターなど白人ミュージシャンが参加した79年のこのアルバムは、アースで言えば「I AM」をそのまま移植した形(特にB面の雰囲気)であり、あの頃のアースや、大定番AORが好きな人にも同じように楽しめます。
ENCHANTMENT (1976)
 永遠のメロウ・クラシック“Gloria”が収録された5人組ソウル・ヴォーカルグループの1st。曲配置もつかみ系ソウルを一曲目に、続きいきなり「グロリア」でノックアウト。曲間を開けずに3曲目はシティ・ソウル/ファンクへとかなりニクい流れ。どちらかと言うと夜に聴くのが合う渋い曲調が多いのだが、決してダルくはならない。それというのもチャック・レイニーやジョン・トロペイら名手が参加しているくらいの玄人好みなアレンジがバックにあるからか。個人的にはA級名盤の域。
Eric bene't/a day in the life (1999)
 メロディー重視のなかなかしっとりとした歌声を聴かせてくれます。と、思ったら1曲だけですがロイ・エアーズ参加!渋い!まだ若いのに。なーんちって。TOTOの「georgy porgy」なんかもカヴァーしちゃっているところも、音楽性の広さを感じさせますね。
Erik Tagg/smilin'memories (1975)
 リー・リトナーの「RIT」でのフィーチャーリング・ヴォーカルで一躍有名になった彼のファーストがこの作品。このレア物がさすが日本における怒涛のリイシュー・ウェイヴに乗ってめでたく日の目を見ることに。LAセッション・ミュージシャンに囲まれた優しさあふれるシンガーソングライター・アルバムで、エリックが当時住んでいたオランダのみの発売であったと言うのがなんとももったいない話と感じるくらい、75年という時代の作品としてはクオリティの高いナンバーで綴られています。
Erik Tagg/rendez-vous (1977)
 続く2ndもオランダのみの発売であったそうですが、ほんと不思議。1stよりもさらにフリーソウル色が高まり、個人的にはドンピシャな内容。この頃の彼はスティーヴィーの「キー・オヴ・ライフ」に大きな影響を受けていたとの事で、それは曲間を空けずに続く一曲目からタイトルナンバーである二曲目「rendez-vous」の流れで早くもうかがうことが出来るし、全体的に緩急をつけた多彩な曲調でもそれを感じ取れますね。いやいや、それはおいても未発表のボーナストラックを含め素晴らしい内容。イメージ的に今の好みとはズレていた人でしたが、食わず嫌いはやっぱりイカンですねぇ。
Eric Tagg/dreamwalkin' (1981)
 前述の通り「RIT」の大ヒットによりクローズアップされた日本製作によるアルバム。当然ながらエリック・タッグを主役としバッキングはライトに抑えた心地良いAOR。どちらかと言うと丁寧なアレンジとメロディーが絶妙だった前作の方が好みな音なのですが、とにかくこれは聴いた人も多いはず。持ち味の暖かい歌声で新たなAORファンを作った時代の代表作とも言える有名盤です。今となっては懐かしさを感じるだけと言う印象かなぁ。しかし、1stからこのアルバムまで3枚をまとめて聴くと、70年代から80年代への劇的な変化がわかりますね。
Ernie Watts/chariots of fire (1982)
 その、タイトなプレイで数え上げたら限りなく膨大なセッション、バッキングに参加し、デビューから40年を過ぎた今も現役、バリバリ吹きまくる名サックス・プレイヤー、アーニー・ワッツ。この人がクレジットにあると何故かホッとしてしまいますね。これはクインシー・ジョーンズのプロデュースにより、ジェームス・イングラムがヴォーカルで参加などクインシー・ファミリー総動員といったところの豪華なバックアップ・ミュージシャンを集め、ヴァンゲリスの同名映画音楽をカヴァーしたイージーリスニングアルバム。この時期のクインシーらしく広い音楽ファンに向けられた明快なサウンドをしていますが、この中ではダニー・ハサウェイのインストとして知られる“valdez in the country”が一番「らしい」プレイをしていますね。
Esther Williams/let me show you (1976)
 直近に発売されたばかりの再発モノもたまには聴いてみようかな、と購入したのがこれ。知らない人でしたがやはり「last night changed it all」は耳にしたことがあった。このインパクトのあるアレンジはたしかに頭に残る。全体としてはかなり懐かしいディスコティックなビートで、すこし泥臭い音質も効果をかけてクラブで流せばかなり合ってしまうのかもしれません。僕にとってはこれはB級歌謡ディスコ。当時の日本でもあったような音ですよね。ちょっとルーズなベースや、一生懸命おかずを入れているドラムがちょっと痛々しいかな。なぜかヤマタケや筒美京平が偉大に思った、2004年の秋でした(笑)。
Everette Harp (1992)
 ジョージ・デュークのバックアップを得て、颯爽と登場した新鋭サックスプレイヤーのデビューアルバム。曲調はキャッチーでキレ味の良い音を出しますのでなかなか爽快です。サックスだけではなくキーボードもこなし、ほとんどの曲を自身が作り、アレンジも行っていますので、マルチアーティストとしての力はかなりあるようです。
EYE TO EYE (1982)
 Julian Marshall(key)&Deborah Berg(vo)の男女ユニット、アイ・トゥ・アイのファーストアルバム。プロデュースがGary Katzなのですが、これがまた80年代のポスト・スティーリー・ダン的な狙いを感じる音で、スッキリと無駄の無いアレンジが軽快な所は同時期のドナルド・フェイゲンにそっくり。それもそのはずバックはジェフ・ポーカロにチャック・レイニーのリズム、リック・デリンジャーのギターとお馴染みの顔ぶれ。しかし曲自体は二人がすべて作っており優しいメロディーが素敵ですね。結局はS・ダンの後釜や女性版D・フェイゲンにもなれなかった彼らは2枚のアルバムを残して活動を終えてしまうのですが。


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