Oscar Castro Neves/more than yesterday (1991)
 ブラジルの名ギタリストのリーダー作。王道を行くようなブラジリアン-ボサ・ジャズが聴けます。音楽的にもテクニック的にも聴き所が多く、ナイロン弦ギター弾きまくりのタイトル曲や、イヴァン・リンスがゲストの「unconditional love」、大盛り上がり大会の「my sweet sweetie pie」など、しっとりと落ち着いたボサノヴァもあり、この手の本物を聴きたい時にはとてもハマッている良いアルバムだと思います。




PAGES/pages(1st) (1978)
 幻と言われていたファーストアルバム。故ヴィクター・フェルドマン、マイケル・ブレッカーなどジャズ系アーティスト参加もPAGESサウンドの傾向をうかがわせることができますね。数ある一般的AORと言われているものとはまた一線を画す独特のサウンドはここから始まりました。
♪“clearly kim”♪
PAGES/future street (1979)
 比較的ファーストよりは手に入りやすかったこのセカンドアルバム。再発CDではなぜか3rdよりも長く発売されていました。ケニー・ロギンズが参加した「Who’s right who’s wrong」は密かにPAGESの中ではマイ・フェバリット。
PAGES/pages(3rd) (1981)
 AORの名盤。なにかとジェイ・グレイドンのプロデュースが注目されますが、実は大事な1曲目を今まで手を組んできたボビー・コロンビーのプロデュース曲に選択しています。確かに、2ndまでのPAGESの雰囲気をそのまま継承しつつ、メロディアスな佳曲となっています。しかし全9曲、とても短く感じられ、聴いた後も余韻が残り、次作が発表されていても不思議ではない終わり方だったですね。この後、彼らは80年代MTV的POPユニット、「MR,ミスター」へ変貌を遂げるのですが。。。
THE PARKER BROTHERS (1981)
 インディー掘り起こし物の中ではかなりレベルの高いAOR/SOULと言えるザ・パーカー・ブラザーズのワン・アンド・オンリー作。スティーリー・ダンやドゥービー・ブラザースに代表される70年代後半〜80年までの音を忠実に模倣。中には独自性まで感じるほどで、当時として最先端ではないながらもけして単なるマネ事に終わっていない。レコーディングもしっかりしており、この手のモノにありがちな陳腐さが無く好きな方なら買って損なしでしょう。L.A.でもN.Y.でもなくピッツバーグ産のバンドであった事、81年作と言う旬を少し遅れた時期であった事がインディーの域を出なかった理由でしょうが、今でこそ日の目を見るべくして耳にする事叶った一枚ですね。
THE PASADINAS/phoenix (1995)
 イギリスの黒人コーラスグループ。日本先行発売としながらも、輸入盤をみかけた事がなしと言うのは・・・まあ、良くあることですね。これで4作目だそうです。TAKE6ほどの洗練度がイマイチないかな。「round&round」はなかなかヨイですが、この1曲だけだった。
PASSAGE (1981)
 ブラジョンのミスター・チョッパー、Louis Johnsonが奥方Valerieと製作したCCMブラコンアルバム。同時期「winners」と共通する小奇麗な音でまとまっています。ここでのドラムスはJohn RobinsonとRicky Lawsonでセッションドラマーらしい優等生的リズムが少し物足りなくもあり。しかし70年代の骨太ファンクとはここでは無縁状態ですが、Louisのスラッピングはしっかりとここでも存在感を出しています。CCM系ですからジャケット共々音も上品。「winners」路線が好きなら充分楽しめるでしょう。
Pat Martino/joyous lake (1977)
 パット・マルティーノと言う人はあまり自分を売り込んで行くためにコマーシャリズムに走らなかったギタリストであったらしいのですが、このワーナー移籍2作目で初のジャズ・ロック風なクロスオーヴァー・アルバムを出してみせた。確かにジャズ・ギタリストらしい粒の細かなピッキングによる速弾きはスピード感のあるアレンジにカチッと嵌る。全編が他のメンバーとのバトルを楽しむ刺激的な構成で楽しめる、玄人好みのギター・アルバム。パーソネルはBRAND Xのドラマーから数多くのセッションをこなしているKenwood DennardやMAXUSのベース担当となるMark Leonardに、同じくセッションマン・Delmar Brownの鍵盤と言うカルテット編成となっている。
Patrick Moraz/the story of I (1976)
 YESに在籍した経歴で知られる鍵盤奏者のファースト・リーダー・アルバム。サポートにアルフォンス・ムーゾン、アンディ・ニューマークの二人をドラムスに迎え、ジェフ・バーリンのベース、レイ・ゴメスのギターと、ジャズとロックの垣根を越えて活動するプレイヤーの協力を得て圧巻の音世界を繰り広げた傑作。ここではラテン・パーカッションがひとつのサウンド・ポイントとなっているが、プログレ、シンフォニック、ハードと様々なロック・サウンドの中、随所に飛び出すラテンのリズムにクラシックやジャズ・フュージョン的なアプローチなどアルバム全体がまさに音の洪水。これは広く音楽全般に造詣が深いミュージシャンでなければ生み出す事のできないものであるとともに、意外にも気難しさがなくむしろ楽しめてしまうセンスが素晴らしい。しかもハイテンションが保たれ続けるので一度再生ボタンを押したら最後までノンストップで聴いてしまわざるを得ない超絶的音の芸術作品。
Paul Clark/out of the shadow (1984)
 CCM界では名シンガーソングライターとして知られた存在だったらしいのですが、その彼がmyrrhレーベルに残した最後にして最高傑作と言われたのがこのアルバム。なにしろ84年作とは思えないほど打ち込みレスで暖かみのあるAOR作に仕上げられているのです。この世界は音の質がメジャー・ポップ界とは3年くらい遅れて出てくるようで、知らないで聴けば80年前後の作品ではないかと感じてしまうくらい、あの頃の良質AORの雰囲気を醸し出しているのが嬉しい。ペイジスの二人が参加をしていて一曲目の“give me your heart”はまさにそのもの。しかし、二人のコーラスと言い見事にここでも70年代のペイジスになってくれているのも素晴らしいですね。
Pat Metheny Group/american garage (1979)
 そんなに「メセニー・フリーク」と言うわけでもなく、と言うよりほとんど気合を入れて聴いたことが無いのでわざわざ私が紹介するのもおこがましいくらいのアーティストだったりするのですが、一生懸命FMを聴いていた中学生の頃、パット・メセニーと言えばこのアルバムだったような気がします。まさにジャケット写真のような青空の下での突き抜けるサウンド。黒人系の音の方が好みだった私ですが、フュージョンというカテゴリの音の中で一際異彩を放っていたのが彼でした。あまり聴かないのですが、たまに引っ張り出してしまうアルバムのひとつ。
Pat Metheny Group/we live here (1995)
 そのスジの外盤屋さんでは、かなりロングランで売れていました。つい私も・・・と言うことで。イヤー、良い方向に裏切ってくれました。なるほど、これは売れるわ。もちろん独特のギターシンセ・スタイルもそのままに、多方面の人々に聴きやすくなっていると共にへたな商業思考に流されていない部分で今までの彼のファンを逃すことなくセールス的にも成功を収めた好アルバムとなっています。
Patrice Rushen/prelusion (1974)
 「新進女性ピアニスト」期待のファースト・アルバム(笑)。プレスティッジからデビューを果たした彼女はやはり本格派ジャズ・アーティストとして登場したわけです。単なるジャズ盤として聴くと、たいした評価にもならないようなものかもしれませんが、“puttered bopcorn”でハービー・ハンコックばりにクラビネットを弾きまくる姿がその後の活動と繋がってくるのかな、と。4ビートでもファンクでもこなしちゃうパトリースの音楽性に合わせなければならない点で、ドラムをNDUGUが担当したのは正解。まだヴォーカルものはここでは無し。
Patrice Rushen/before the dawn (1975)
 セカンドアルバム。より音の巾を自由に広げていった作りで、「若き女性ジャズ・ピアニスト」なんて商業的な冠は必要がないほど黒っぽくクロスオーバーしてくれちゃってます。ファンキーなヴォーカル物も一曲ありますが、ここでは彼女は歌わず当時セッションヴォーカリストとして活躍したJosie Jamesがパワフルに担当。結果的にそのほうが良かったかもしれません。個人的には彼女自身が歌い出してからの作品のほうが好きなんですけどね。
Patrice Rushen/shout it out (1977)
 まだまだアフロヘアーのままのプレスティッジ3作目。前作でもソウル・ファンク傾向をみせていましたが今回はヴォーカル物を強調し、よりファンキーになりました。若くして演奏テクはもちろんほとんどの曲が自作、プロデュースまでやっているところが素晴らしい。どこかジョージ・デューク的な雰囲気があると思ったらプロデューサー・エンジニアにTommy Vicariの名が、なるほど。珍しく(でもないか)James Gadsonがハードに叩きまくってます。ギターはAl McKayが全面参加。かなりポップになりましたがこのアルバムまではどちらかというとインストルメンタルの方が出来のいい曲がありますね。
Patrice Rushen/patrice (1978)
 彼女の名を初めて耳にしたのはあのリー・リトナー&ジェントルソウツのキーボーディストとしての参加でした。テクニカルかつ耳障りの良いクロスオーバー・ミュージック・ブームの火付け役となったあのバンドの紅一点メンバーであった彼女のエレクトラ移籍第一弾はなんと可愛らしい自身のヴォーカルをフィーチャーしたポップアルバムでした。これが今となっては「フリーソウル」とカテゴライズされる音としてバツグンにセンスの良いアルバムだったな、と再確認。こういう雰囲気って、ゴリゴリにブラックの世界だけでやってきたミュージシャンには出せない音なんですよ。とてもいいアルバムです。
Patrice Rushen/pizzazz (1979)
 愛すべき70年代〜80年代に発表されたBLACK/SOUL/FUSIONの数々。パトリース・ラッシェンもそんな私の好みにドンピシャはまりまくったアーティストでした。当時はソウルなんて日本人にとってはマニアックな領域でしたし、元々はジャズ系ピアニストとして名前が知られた彼女ですからこんな歌ものバンバンのポップなアルバムが受け入れられるはずもなかったのですが、前作同様フィールドの広さから来る音のセンスは抜群!若い彼女の歌もカワイイね!録音も良くなって古臭さもなく、今でこそ再評価されるべきアーティストと言えるでしょう。
Patrice Rushen/posh (1980)
 ブラック・コンテンポラリー路線もだいぶこなれてきたようで、次作で彼女もついに大成功をおさめるアルバムを発表するのですが、これはその序章ともいえる作品と言えるでしょう。さまざまなジャンルの音楽を泳いできた彼女の視野の広さと女性アーティストの魅力を生かしたサウンドがさらにポップになっています。邦題「おしゃれ専科」。わははー。まさにその通りですねー。
Patrice Rushen/straight from the heart (1982)
 もはや、こうなっちゃうとジャズ-フュージョンピアニストなんてアーティスト歴は吹っ飛んじゃいます。グリグリのアフロヘアーでピアノを弾いていた彼女が綺麗に垢抜けちゃって本格的なブラックコンテンポラリー路線で大成功を収めた、これは大変に有名なアルバム。ダンス・クラシックの名曲「forget me nots(忘れな草)」はここに来た人なら一度は聴いたことがあるのでは?(やっぱりフレディ・ワシントンのタイトなチョッパーメロリズムが印象的ですよね) しかし、それだけでなく唯一のインスト「number one」を含む他の曲もいいんだなあ。はずれ曲なしで満足満足。
Patti Austin/end of rainbow (1976)
 今でこそ、いやどちらかと言うと今では過去の人になりつつあるがジャズ・フュージョン界で女性ヴォーカルと言えばまず思いつく一人がこのパティ・オースチン。これが彼女のデビュー・アルバム。パッと出、というわけではなくそれまではバック・ヴォーカル等脇役で下積みをしていた彼女が満を持して「しっかりと」制作された感のある作品となっています。それと言うのも一曲を除きほとんどが彼女自身の作による曲ばかりで、それがまた良い雰囲気の曲ばかり。時代を感じさせるリバーヴのかかった録音、スタッフの面々を中心としたバックサウンド等、バッチリ70年代後半しています。アレンジは当時D,グルーシンなどにも肩を並べる程の売れっこデヴィッド・マシューズ。
Patti Austin/havana candy (1977)
 このアルバムの場合はタイトル曲よりも「that's enough for me」かな。なんと言っても出だしのフレーズ、うーん懐かしい。これはデイヴ・グルーシン色の良く現れたアルバム。この頃ってバックミュージシャンの個性のあるプレイも味わうことが出来てイイですよね。花形NYセッションメンに囲まれた、当時のコンテンポラリー・ヴォーカルアルバムの代表作。
Paulinho da Costa/happy people (1979)
 ブラジルのパーカショニストながら、この人の参加するアルバムを買えばだいたいは当たった、というくらい当時はひっぱりだこ状態の大人気アーティスト。これはその2ndでファーストアルバムのセッション的な作りからガラッとPOPになった佳作。しょっぱなはフィリップ・ベイリーをヴォーカルに迎えたアースの香りプンプンな(アル・マッケイも参加)一曲。このアルバムを聴いて「太陽神」での「brazilian rhyme」のパーカスは彼だったのだと気付いた。え・もう周知の事実? おら知らなかっただー。ビル・チャンプリンの歌う「seeing is believing」も思いっきりAORでサイコー。
Paulinho da Costa/sunrise (1984)
 前作が当時ジャズフュージョン-POP/ROCK/AOR-ブラコンとジャンルを問わずバッキングで大活躍した彼の存在を世に知らしめるものであったのに対し、時代も変わって今回はブラジリアンフュージョンを中心としつつここち良いインスト(一部ヴォーカル物もあり)アルバムとなっています。音もだいぶ洗練されてきました。キーボードにGeorge Duke、ベースにNathan East, Abraham Laboriel、ドラムスにJohn Robinson, Leon NDUGU Chanclerらが参加してます。スッキリ!
Paurine Wilson/intuition (1992)
 横倉 裕のアルバムの中で全曲ポーリンが歌っているような。。。それくらいYUTAKA色で染まっているアルバムです。とても耳ざわりの良い上品なアレンジの中でのポーリンのきれいな歌声が爽やかです。シーウインド時代の名曲「follow your road」のセルフカヴァー収録。あ、ここでは琴は使っていませんよ。ご安心を。
Peabo Bryson/through the fire (1994)
 「ピーボよりうまいのはピーボだけ!」とわかる人にしかわからないような(私はわかってしまいました)キャッチコピーに思わず笑ってしまった覚えがあります。「クワイエット・ストーム」なんて恥ずかしくなってしまうカテゴリーの代名詞にさせられてしまった人ですね。ブラコン界の細川たかしか?「through the fire」のカヴァーが良い。
PERRY & SANLIN/for those who love (1980)
 ご存知フィル・ペリーがモントクレアーズ時代から活動を共にしたケヴィン・サンリンと組んだソウル・デュオの1st。NDUGU、Charles Fearing、Nathan EastらのソツのないバッキングとともにL.A.レコーディングらしいスッキリとしたサウンドの中、P,ペリーのエモーショナルなハイトーン・ヴォーカルと対照的に渋い味わいをもつK,サンリンの掛け合いが心地良い。“you can't hide love”〜“we belong together”のメドレー以外は共作を含めすべてP,ペリーが手掛けたナンバーだがそのメロウ・ソウルなライティングセンスにも座布団5枚。
PERRY & SANLIN/we're the winners (1981)
 同じくL.A.レコーディングながらもバック・ミュージシャンをガラッと入れ替えたこの2ndは、デビュー作に比べるとジャズの域からディスコ・サウンドまで広く踏み込んだ、より黒人層を意識した作りとなっている。それはドラムスが前作のNDUGUからJames GadsonになっていたりLes McCannが参加と言うだけである程度予想できるだろう。しかし、その反面残念なのはP,ペリーのハイトーンを活かすナンバーが減ってしまっていることではないか。パワー&スウィートな持ち味がある希少なソウル・デュオだが本作をもってコンビを解消し、その後のP,ペリーのスタジオ/ソロ・ワークでの活躍はご周知の通り。
Peter Allen/bi-coastal (1981)
 これも良く流れていました。当時、デヴィッド・フォスターはこういったアダルト・シンガーのプロデュースをしてイメージ・チェンジ、新局面を見せる術に長けていましたが、中でもピーター・アレンの本作は代表的ですね。ここでもフォスターの煌くキーボードが全開です。しかし、本質的にはやはり素晴らしいメロディーメイカーであるP・アレンの楽曲そのものを楽しむべきアルバムと言えるでしょう。今のシンガーではなかなか伝わることのない、アメリカン・ポップスの良心が見えるのです。
Phil Keaggy/ph'lip side (1980)
 CCM系ギタリストのフィル・ケギーはどちらかというとロック寄りの音を出す人で、軽く歪んだ音色からアコースティック・ギターまで幅広くこなす。この80年作は前半をアコースティックで清廉なSSWに、後半をロック調が強まったAORと言う構成となっている。CCMの先入観に囚われないで聴いても爽やかなホワイト・ポップ。当時の商業ロックのおいしい部分を取り入れつつ、やや清らかだがなかなかセンスの良い音を作っていますね。
Phil Keaggy/town to town (1981)
 起伏に富んだアレンジと爽やかなヴォーカルのアルバム・タイトル曲で始まるこの81年作はギターロック系AORがさらに強まりつつ、ややフュージョン的な味付けもあり確実に前作よりパワーアップ。ギターソロもかなりフィーチャーされており、アメリカン(ポップ)ロック・ファンにはニヤニヤしてしまう内容。どこかで聴いたことのあるおいしいフレーズとともに、この人のギターってとても綺麗な音を出すのでかなり好みなミュージシャンです。バック・ヴォーカルにBruce HibberdTHE WINANSの名が有り、鍵盤にTom Keene、ベースはGino Vannelliの「brother to brother」でも弾いていたLeon Gearが参加。
Phil Keaggy/play turu me (1982)
 →コチラでドーゾ。
Phil Perry/the heart of the man (1991)
 うまー。ハイトーンも良く出るし、これぞ、プロ。と言ったヴォーカルです。R&Bというより、アダルトポップですね。曲の構成はバラエティに富んでいます。うまくて、ソウルフルなヴォーカルを堪能したい時にはうってつけのおすすめアーティストですよ。
Phil Perry/pure pleasure (1994)
 あらためて、ものすごくうまいヴォーカルですね。バックグラウンドヴォーカルとして長くセッションマンをやっていただけの事はありますし、声にも個性があって良いです。「after the love has gone」のカヴァー有り。
Phil Upchurch/upchurch & tennyson (1975)
 60年〜70年代のシカゴサウンドにおけるギター御大と言えばこのフィル・アップチャーチ。これはピアニストでもあるテニソン・スティーブンスのヴォーカルをフィーチャーしたコラボ・アルバムですが正しくは全てのアレンジを担当したCTI/KUDU時代専属であったボブ・ジェームスとの三位一体アルバムと言った方が良さそう。アップチャーチのギターは確かに職人的ですしそんなソウルフルなプレイの中にも違和感なく現代的なアレンジを施し、自身も渋いエレピを披露した若きB・ジェームスの姿も懐かしい響き。もちろんテニソンのヴォーカルによりインスト一辺倒よりも親しみやすさが出ていますね。個人的にはアップチャーチ自身も得意としているチャールズ・ステップニー作“black gold”が怪しげな雰囲気の中じっくりとギターに酔いしれることができて好みです。
Phyllis Hyman/you know how to love me (1979)
 '70s〜'80sのブラックミュージック界にその名を馳せたMtume/Lucas。そんな名コンビの全面バックアップによるレディ・ソウルの人気盤。彼女自身も元々はジャズ・ヴォーカリストであり、抜群の歌唱力をソウル・フィールドでも生かし、もう一歩前進したい、としたら共通項を持つ彼らの力を借りるのはそういった意味でもベストマッチと言えますね。ストリングスも効いたゴージャスなアレンジの中で軽快に歌う彼女。しかしながらそのノドはジャズの下地を多分に感じさせる艶っぽさがあります。
Phyllis Hyman/living all alone (1986)
 ジャズ畑のシンガーがブラコンアルバムを出す流行が一時ありましたが、このフィリス・ハイマンはいかんせんバックミュージシャンやプロデューサーに恵まれませんでしたね。エムトゥーメイのプロデュース作を頂点にその後はどんどんチープになっていってしまったよう。アルバムタイトル曲はなかなか。「風のシルエット」のカヴァーはイマイチでした。
PIECES (1979)
 Geoffrey Leibを中心とするセッション・ミュージシャン・バンド。さすが唯一発表されたこの一枚に自らの力をすべて注ぎ込んだかのごとく佳曲揃いで、最初から最後の曲までまったくダレずに流れていく秀作。ロック寄りなものもありますがやはり9曲中6曲を手掛けたG・レイブ作のホワイトソウルがファンキー。大袈裟すぎず適度に洗練されたアレンジも良い。当時は全く売れなかったそうですが、確かに華がないですからねぇ〜。アルバムで楽しむグループでしょうね。
PIECES OF A DREAM (1981)
 key,ds,bの3人からなる、かのグローヴァー・ワシントンJr.が見い出したNYのフュージョン・トリオ。と、言っても音はかなりハート・ウォーミングなBGM的インストルメンタルが中心で、演奏力を期待するハード・フュージョンファンにはチトつらいでしょうね。まあ、バンド名からしてそんな叙情的な雰囲気がありますが。
PIECES OF A DREAM/we are one (1982)
 そんな「ゆったりフュージョン」グループの2nd。多少ファーストよりもこなれた音になったようで、確かにこんなのも悪くない。Dexter Wanselらによるヴォーカル・ナンバーも前作に続き1曲収められていますが、ここではグッと落ち着いたミディアム・バラードに。黒人らしいファンキーなナンバーもあったりしますが、やはり彼らの本質はソフト路線にあり。聴き入ると言うよりは、何か他のことをしながら流れているのがふさわしい音。しかし今でも活動を続ける、そんな音の代表的グループでもあります。
PIECES OF A DREAM/pieces (1997)
 何枚もアルバムを作れるようになればその時代時代に合わせた音作りもできるようになるわけで、グローヴァーの手を離れた彼らもかなり成長、楽しませる音作りがてきていますね。Maxi Priestがゲストで歌うタイトル曲もありますが、基本的にはインストルメンタルバンドです。ピアノがフィーチャーされた「1257」なんて私好みな曲ですが、本来はホーンを生かした曲がメインの音作りのようです。ラストの「涙をとどけて」カヴァーには、やられた!と言う感じです。
PLANET3/a heart from the big machine (1990)
 90年代ともなれば、サウンド自体に変化があるのは当然の事。ジェイ・グレイドンもあのAOR全盛時のハーモニック・ギターサウンドは聴かれなくなってきています。確かにこのロック色の強い、しかもリズムは打ちこみのスタイルであの音は場違いですし、クリエイター・ミュージシャンとして昔の音をいつまでも引きずっているわけにはいかないでしょう。それとは別に、メロディアスナンバーではかなり聴かせてくれるのでOKOK。
PLEASURE/dust yourself off (1975)
 後にセッション・プレイヤーとしてもそのクレジットを良く見るようになるギターのマーロン・マクレイン(SHOCK)とベースのネイザニエル・フィリップスらが中心となったジャズ・ファンク・バンドのファースト・アルバム。このグループはこのデビュー・アルバムからの3枚全てをウェイン・ヘンダーソンのプロデュースの元に作られており、その繋がりから本作ではジョー・サンプルが鍵盤で強力なサポートを行っている。基本はヴォーカル物のファンク・バンドだがファンキーなインストルメンタル・ナンバーではクルセイダーズの弟分的になっている所も面白い。
PLEASURE/accept no substitutes (1976)
 アルバム冒頭の皆が楽しそうにコーラスするナンバーからしても、よりライト・ファンク化していったところが伺える2作目。70年代中期特有の黒々としたバンド・サウンドなら1stの方が魅力的なのですが、ややフュージョン寄りで洗練度の増したこの2ndもかなり魅力的。プロデューサーにとって蜜月であったクルセイダーズとの関係が微妙になってきたこの時期、鍵盤のサポートはジョー・サンプルではなくジェリー・ピータースに代わっている。
PLEASURE/joyous (1977)
 さて、もう大物ゲストなど使わなくても良いだろうと言うか、低予算にせざるを得なかったと言うのか、基本的にはグループ・メンバーだけで音作りを完成させた3rd。もはやメンバー自体が名の売れ始めたセッションメンになって来たところですから当然と言えば当然の話。アーバンな雰囲気さえ漂う軽快なソウル・バンドと言えばありきたりに思えがちですが元はと言えば演奏力を売りにした業師集団で、“sassafras girl”のようなラテンソウルを挟んだり、ラストはフュージョン・インスト“selim”でシメてしまうところなどはやはり一味違い侮るなかれ。それでも8人の大所帯プラスホーン・セクションやストリングスまで加えてしまう豊かな音の構築法はさすが70年代の音楽ですね。
POCKETS/come go with us (1977)
 当時盛り上がりをみせたカリンバ・プロダクションが送り出した新人グループ。ヴァーダイン・ホワイトのプロデュース。カリンバからのグループとはいえ、親であり兄であるEW&Fと比べてしまうのは酷であるし、過剰な期待はしないほうがいい。全体的に小粒な印象ですが、ゴリゴリのファンキー一辺倒ではなくて、優しさのあるヴォーカルやインストをアルバムの中で取り入れる多面性はやはり母体ゆずりか。音楽に対して肩の力が抜けた今あらためて聴くと結構心地よかったりします。
POCKETS/take it on up (1978)
 確実に音の広がりを見せた2nd。ヴァーダイン・ホワイトのプロデュースはそのままにカリンバプロダクションらしい「カジュアル・EW&F」とも言えそうなブラックミュージックをやってくれています。ところどころに聴けるアレンジのフレーズも、インタールードまであるTOMTOM84のホーンも、「らしさ」丸出し。一曲だけ収録されているインストルメンタルナンバーが面白い出来で、一変して当時のギター・フュージョンを聴いているよう。この音の広さがファーストよりもスケールアップしてます。ラリー・ジェイコブズの軽いヴォーカルもファンキーに楽しむバンドとしてピッタリ合っていたのでは。
POCKETS/so delicious (1979)
 ラストアルバムにあたる本作は音楽性の広さをあえてグッと抑えてダンス&ソウルに統一した感のあるものになっていますが数曲で見せるTOMTOM84を含む全てホーン&ストリングスの入ったゴージャスな作りはそのまま引き継がれています。後半はCharles Fearingがほとんど曲作りに参加していて、そのせいかギターの効いたナンバーが多く個人的にはこの流れが好きです。Michael Boddicker,Al McKay,Ed Greeneなど意外とゲストも多彩でしたがEW&Fの弟分から始まり、いろいろと方向性を探ってきたポケッツもこの一枚でついに終了。ブームの終わりを感じるようで寂しいですね。
THE PRESIDENT/by appointment of (1983)
 AORブームの終焉、サウンドはもちろん、視覚的にもリスナーへのアプローチがガラッと変わって行ったターニング・イヤーとなったのがおそらく1983年であったと思いますが、これはその年に発売された、堂々それまでのAOR路線を引き継ぐ音作りで現れたプレジデントの1st。もちろん録音や鍵盤の音色などは80年代の「新しさ」も取り入れているのですが、ギター・ソロを前面にフィーチャーさせる所や、なんと言っても彼らのメロディーが新時代を受け入れられなかったAOR/ポップス・ファンに今でも聴き継がれているところなのでしょう。なるほど、この「頑固なまでにメロディアス」はオランダ人ユニットのなせる業だったようで、時代背景から来るアメリカン・ミュージックとの自然な、かつ嬉しい“ズレ”がこの音を生み出してくれたのですね。
PRESSURE (1979)
 featuring Ronnie Lawsとある通りプロデュースを含めたバックアップの元、Barnaby Finchらそんなに活動の場が与えられていなかった脇役的プレイヤーが集まり作られたヴォーカル・フュージョン・アルバム。Pat KellyとMelvin Robinsonのツイン・ギターがこのグループのサウンド・カラーを特徴づけており、そのリズム・カッティングが爽やかな“hold on”や“can you feel it”などは同時期のナイトフライトブレイクウォーターらAOR/ソウル・グループに共通するものがある。「PRESSURE」だから「圧力鍋」のジャケットとは、聴かせる音楽の質から言ってもなんとももったいない事をしたかと。
Prince/the rainbow children (2001)
 今回の作品は彼のみならず最近発表された全編共通のコンセプトを持ったアルバムとしては、傑作と言っていいのではないかと感じるほど、今までのイメージを見事に(いろいろな意味で、本当にお見事です!)覆してイタダキマシタ。無機質な打ち込みリズムと時代の先端を突き抜けていくあの姿はもうここにはありません。とてもジャジーでテクニカルなバンド・サウンドの中、彼の優しいヴォーカルが胸を打ちます。ヒット・チャートとは無縁の自由に解き放たれたこの音楽が、43歳になったプリンスのさらけ出された真の姿なのかもしれません。恩師ラリー・グラハムを迎えた「last december」ではどこか懐かしいソフトロックの展開を見せてくれます。素晴らしい。
Prince markie dee and SOUL CONVENTION/free (1992)
 いいなあ。こういう雰囲気のラップは好きなんですよ。ソウルなラップと言うか。ゆったりとしたグルーヴ感の上にラップが乗っかっているような。TOTOの「georgy porgy」のカヴァーなんかラップでやっちゃったりする。こんな感覚です。
PUZZLE (1973)
 ジョン・ヴァレンティがドラムス/ヴォーカルで在籍していたブラス・ロックグループの1st。なんとレーベルはモータウンなのだ。全員白人ながらシカゴを少しマニアックにした、今で言うレア・グルーヴな要素の強い音で大変カッコ良い。収録曲のほとんどをJ・ヴァレンティ(John LiVigni)が担当し、スリリングでクールな“on with the show”で幕開け、続く“lady”ではすでにスティーヴィーの影響がここでも見られ、そして“you make me happy”でシカゴを彷彿される王道ブラス・ロックにと、粒揃いの佳曲が次々に現れこちらもゾクゾク。なるほどこの頃のJ・ヴァレンティはヴォーカルもロバート・ラムしていたのか。
PUZZLE/the second album (1974)
 続く2ndはブラスロック/ファンクから少しだけ離れ、よりアメリカンロック/ポップス寄りになりましたが、1stと比べると曲が多彩すぎて返って散漫になってしまっている、といった印象。ひとつひとつ抜き出せばそれぞれ味があるのですが、並べて聴くとどんなリスナーをターゲットにしているのか・・・、「何がやりたいのかわからない」バンドのアルバムになってしまっているのが残念。“state of mind”にかろうじて1stのPUZZLEのテイストがありましたが、他ではフュージョン的なインスト“haiku”、綺麗なバラード“my love”などが個人的には好み。しかしさすがに私もこの曲構成は理解できず。




Quincy Jones/body heat (1974)
 「everything must change」が秀逸!全編、ゆったりとしたムーディーなソウル・ワールド(ジャズとは言い難いでしょうねぇ)に引きこまれていきます。リオン・ウェアを数曲、抜擢しているのもクインシーの先見の目ありというところですね。「if I ever lose this heaven」はAWBを始め、数々のアーティストにカヴァーされるほどの名曲となっています。
Quincy Jones/mellow madness (1975)
 ジャズ・アレンジャー&プロデューサーが70年代に入りブラック・ミュージックと融合していく過程で作られた、「ボディ・ヒート」の延長線上にある作品。前作よりもファンク色を強めているのは4曲を「秘蔵っ子」とうたわれたジョージ-ルイスのジョンソン兄弟が提供しているからか。前作に続きリオン・ウェア&ミニー・リパートンが“マイ・シェリー・アモール”をカヴァーしているのも聴き所。最後はジャズ・ワルツでトゥーツ・シールマンスがハーモニカではなくギターで登場。微笑ましい始まりから最後に盛り上がって行く構成はさすがクインシー!の一言。
Quincy Jones/sounds...and stuff like that!! (1978)
 ブラザース・ジョンソンやマイケル・ジャクソンをプロデュースしたりと、本格的に黒人POPのヒットプロデューサーに変貌を遂げていくころの序章的アルバム。前作「BODY HEAT」のソウルを根本とした作りはそのまま引き継いで、さらに音の巾を広げた作品となっています。「tell me a bedtime story」では本家ハービー・ハンコックを迎え、バイオリン・ソロとゆっくりと盛り上がって行く展開はこのアルバムの中でも一番の出来と言える曲でしょう。
Quincy Jones/the dude (1980)
 大御所プロデューサーがその力を発揮してトップミュージシャンを集めて作られた、当時のアメリカンPOP最高のトータルアルバムと言える作品。そうです「愛のコリーダ」です。前作までは少しマニアック的な部分も残してはいましたが、これに関してはとにかく売れセンの楽しめる構成となっています。クインシーの作品としては、これが影響力、インパクト共にピーク的な作品でしょうね。
Quincy Jones/back on the block (1989)
 とにかく参加ミュージシャンの顔触れが豪華で、まあ、大御所クインシーのアルバムなのだから当然と言えば当然なのですが、そろそろこの金をかけた音楽の作り方にも飽きがきて来ましたね。本人もわかっているようで、この後のアルバムは別路線の地味なものをいつのまにか製作していたようです。様々な音楽が氾濫している今では、もうこの手のものでは新鮮味もないし、クインシーが作らなくてもいいのですよね。過渡期的な作品と言えるでしょう。


NEXT TOP