D'Angelo/brown suger (1995)
 音楽の楽しみ方も人それぞれですが、まず若くしてこの才能、に驚きですね。ソングライト、アレンジ、プロデュース、そしてヴォーカルとバックのほとんどの楽器もこなしてしまいます。リズムはどうやら打ちこみのようですが、逆にこの間の空いたスカスカ感が今のソウルを象徴しているようで、ルックスともどもツボにバッチリはまってしまった感じ。ワンマン・ショーもいいですが、他の才能とのコラボレーションも興味が沸くところですね。
Daniel Sahuleka/sunbeam (1981)
 「ぶんぶく茶、ぶんぶく茶」のスキャットがいきなり頭に残る“ev'rybody feel the groove”(原盤ジャケットより)で始まるオランダ発ワールド・グルーヴィー・ポップの傑作とも言うのかな?的アルバム。と、言うのもダニエル・サフレカ自身はインドネシアの血を持つ人。それがオランダで現地の白人・黒人混合ユニットと一体となり、なにしろ明快なポップ・アルバムを作ったわけですが、これがまたアメリカでもイギリスでもない、そのどちらにもかつて憧れた我々日本人のメロディー感覚に通じるダッチ・ポップなわけで、全世界の何処より日本でウケると言うのも頷けるわけです。その母国インドネシアを歌ったのか“Jakarta”では普通にジャジーなナンバーになっているのは拍子抜けでしたが。クセのあるヴォーカルに好き嫌いが分かれそうですが普通にメロウ・グルーヴ作品としても楽しめます。
DAVE MATTHEWS BAND/busted stuff (2002)
 一応カテゴリはアメリカンロックなのでしょうが、私好みのいろいろな要素が詰まった深みのある音で、単純に8ビートサウンドを想像していると意外な音を聴かせてくれるバンドでした。D・マシューズのギター&ヴォーカルを中心としてベース、ドラムスという基本ユニットに、サックスとヴァイオリンで音の厚みをつける構成となっていてとても渋い。メンバー5人中3人は黒人というのも変わってますね。特に、ドラムスのCarter Beaufordがタイトででキメ味抜群のプレイをしてくれてカッコいいです。あ、ジャズ・ピアニスト&コンポーザーのデビッド・マシューズとは全くの別人ですからご注意のほど。
Benoit (David Benoit)/heavier than yesterday (1977)
 スムース・ジャズ界で今も一線にて活動している鍵盤奏者のこれが1stソロ。1曲目のチープなフュージョンが時代を感じさせますが、続く“I wish right now would never end”で一転シャレた女性ヴォーカルナンバーに。今の時代のJ-POP的な雰囲気もありなかなか親しみの持てる曲です。しかしこのアルバムでの一番人気はハウスカヴァーなどで知られた“life is like a samba”なんでしょうね。白人アーティストらしい爽やかさと清涼感に溢れたアレンジの中にクールなベノワのピアノが素敵。
David Benoit/can you image (1980)
 グルーヴィーなラテン・フュージョンや女性ヴォーカルを使ったポップ・ナンバーなど、多様な音楽性を見せた1stからやや間を置かれたこの2nd、このアルバムでD・ベノワはその後のスムース・ジャズ・ピアニストとしての方向性を決めたようだ。フュージョンのカテゴリではスリリングで攻撃的、または演奏テクニックばかりが注目されていた時代の影に隠れてしまったようなアルバムだが、後に全盛となるスムース・ジャズ時代の先見性をも掴んでいたサウンドであったと言えるだろう。白人らしい透明感のあるピアノに品の良いアレンジが素敵だが、確りと演奏力を見せるソロ・プレイも有りただユルいだけの音楽にしていないところはさすが。
David Benoit/digits (1983)
 さすがにアルバム冒頭を飾るのはキャッチーなフュージョンながら、どちらかと言うと清廉なアコースティック・ピアノで叙情的に流れるインストルメンタルが中心となるのがこのデヴィッド・ベノワである。ややもすると天気予報のBGMとなってしまうのがこのカテゴリなのだが、そうはさせない力量が彼にはある。しっかりと聴きこめるソロ・パートを取っている部分もその後現れてくるスムース・ジャズの類とは一線を画すところだろう。後半にそっと挿まれるアーノルド・マッカラーによるヴォーカル曲“you never love me the same way twice”もこのアルバムの質感をグッと高めてくれる好ナンバーだ。
David Benoit/every step of the way (1988)
 品の良いアレンジでそのきれいなピアノ・フュージョンはいかにも女性向き。癒し系のピアノではなにか物足りない時はこの人あたりでちょうど良いのではないでしょうか。「the key to you」ではデビット・パックがリードボーカルで歌っています。いいなあこの曲。曲によってのバックミュージシャンが多彩で、スタンリー・クラークハーヴィー・メイソン、マイケル・ランドゥ、ネイザン・イースト、ジョン・ロビンソン、シー・ウインド・ホーンズなどが参加しています。
David Diggs/elusion (1978)
 マルチ・プレイヤー、デヴィッド・ディグスのフュージョン系インスト・アルバム。ギターと鍵盤のみならず、曲作りからプロデュースまですべて自身が指揮を取るところはさすが幅広い音楽交流の持ち主だけはある。演奏テク云々よりは、そんな彼のコンポーザーとしての才能を楽しむアルバムかなと。クリスチャン・ミュージックのフィールドでも活動していた繋がりが関係しているのかどうか、ベースにシーウインドのケン・ワイルド、そしてそのまた繋がりからかドラムスにハーヴィー・メイソンが参加している事でも知られた作品。ストリングスを効かせた爽やかなアレンジにフリューゲルホーンのソロをフィーチャーしたタイトル・ナンバーがシーウインドと瓜二つ。うーんやっぱり70年代サウンドはいいなぁ。
fly away〜the songs of David Foster (2009)
 デイヴィッド・フォスター好きのヨーロッパのミューシジャンが発起人となって企画されたが、結果フォスター本人を始め数多くの著名AORシンガーが集まる結果となった、コアな、AORの、ディヴィッド・フォスター・マニアのためのトリビュート盤。それこそアースの”in the stone”やマントラの“nothin'you can do about it”まで収録されているのは嬉しい限り。参加ミュージシャンやシンガーを見るだけでも一発買いの豪華面々には本当に驚き。
David Gates/ falling in love again (1980)
 ソフト・ロックグループ「BREAD」の中心メンバーであったD・ゲイツ。ソロ・アルバムも精力的に作っていたようで80年代に入りかなりAOR寄りになったのでは、と思わせますが、それでも純白人系の爽やかさは失われてはいません。“silky”の節まわしがエリック・タッグの“got to be lovin' you”にソックリなのがやたらと気になるアルバム。しかし、どう見ても人の良さそうなオジサンなのにクラシックカーと色っぽい女性をバックにしてチョイ悪オヤジ気取っているのは似合わないなぁ。音楽だってちっとも悪っぽくないし。
David Lasley/missin' twenty grand (1982)
 ソングライターとして様々なアーティストに曲を提供しているだけあり、なかなか極上の内容となっているアルバムです。一曲目の“got to find love”は一聴かなりベタな歌謡ロック的イントロで「うわー」と思いましたが良く聴けば日本のそれとはやっぱり一味違う。その後の展開からもさすが下積みの長い人だけあってレベルの高い楽曲ばかり。まずこの人の特徴はファルセット。それは自分がゲイでありその不安や苦悩を表現するために用いているそうですが、とにかく五十嵐正氏によるライナーを読んだほうが良いですねそれは。この人を知る上で大変内容の濃いライナーですから。デヴィット・ベノワが全面参加も盟友アーノルド・マッカラーと共通するところですがここではサイドメン的役割。「黒人音楽に恋した白人の若者についてのコンセプトアルバム(五十嵐氏)」となっているホワイト・ソウルの良品。
David Oliver/jamerican man (1977)
 コチラでドーゾ。
David Pack/anywhere you go (1985)
 軽くなっちゃいましたねー。80年代POPをそのまま思い起こさせるようなライトサウンド。アンブロのころのバンド音は影をひそめ、ソロとしてひたすら売れセンを狙った音作りをしています。それにしても髪型とヒゲは暑苦しい!80年代も後半に差しかかったらもうそんなルックスをしていちゃだめですよね。
David Roberts/all dressed up (1982)
 AORブーム終末期に発表された彼のワン&オンリーアルバム。ルカサー&グレイドンのギター、Jポーカロのドラム、Mポーカロのベース、Dフォスター、グレッグ・マティソン等、スター的AORクリエイターがブームの最後に力の入った作品を作ってくれました。曲がなんといっても良い。初期のシング・ライク・トーキングあたりが、いかにも「影響受けまくってます」って感じの泣かしメロディー。隠れた名盤として、今でも人気の高いアルバムです。
David Sanborn/hideaway (1979)
 フュージョン系アーティストで人気の高かったのが、ギターとこのサックス奏者でしたね。デビッド・サンボーンは「鳴きのサックス」と呼ばれる独特のアルトで一気にスターダムへのし上がりました。白人系のミュージシャンはあまりのめり込むことがない私ですが、このアルバムの中の「カーリーへ捧ぐ」は数多いサックスの曲の中でも、メロディーラインの良さで五指にはいるナンバーとなっています。
David Sanborn/as we speak (1982)
 サンボーンのプレイは歌心があるとか、独特の「鳴き」がたまらんとか、確かに素晴らしい人なんですけど、まあそこはおいといてまずこのアルバムがキャッチーかつ爽快感に満ちたものである要因は一言で言うとマーカス・ミラーマイケル・センペロの存在なのでしょう。哀愁のアルトをここまでファンキーにしたのはほぼすべての曲で聴ける前者の鮮やかなスラッピングであり、POPにしたのは後者のセンスが光るコードのギターであったり、ヴォーカルによるもの。特にフュージョン・アルバムの中に入るヴォーカル・ナンバーはクオリティの高いものが多く、ここでもM・センベロの歌う2曲は素敵の一言。
David Sancious/forest of feelings (1975)
 アルバムタイトルからしても時代的でソソられる、ビリー・コブハムのプロデュースによるファースト・ソロ・アルバム。黒人アーティストが表現するジャズ・ロックとしては意外にもプログレ色が強く、それでいて超絶プレイ系や難解さを押し付けるようなものではなく、各パートのフレーズにどこか親しみを持てるのはやはりハートフルなブラック・ミュージシャンらしさが(どうしても)出てしまうからなのでしょうか。プレイやアンサンブルにおいて技巧をクールに追い求める白人のそれとは対照的です。D・サンシャスはアコースティックピアノ、エレピ、シンセ、オルガンと鍵盤ならなんでも持ち込み、曲によってさまざまなカラーを見せるファーストソロらしい力作。B・コブハムはお忍びで数曲ティンパニを叩いていますが、裏方だけではなく実際にドラムスで参加していたならもっと注目されていたアルバムであったでしょうね。
David Sancious & Tone/transformation (the speed of love) (1976)
 WOUNDED BIRD RECORDSからセカンドアルバムがCD再発されていました。個人的に壮大なコンセプトを持った組曲の多いジャズ・ロックは苦手なほうなんですが、スリリングなセッションの中にもこの人の黒人らしいPOPフィーリングがチラチラッと垣間見えるところが私の嗜好的にギリギリのラインで「好きなアーティスト」の仲間入りを果たしている理由となっているようです。キーボーディストとしてのセッションがほとんどだったから知らなかったのですが、ギターもうまいデスこの人。全体ではかなりプログレッシヴロック的なアプローチをされていて、タイトル曲は18分を超える大作。しかし、ダレることなく最初からキメパターンバシバシのスリリングなセッションで、これがライヴだったら鳥肌たちまくりだったかもしれません。かなりかっこいいです。キーボード(ギター)、ベース、ドラムスのシンプルなトリオ編成というのも私好み。各パートの演奏テクニックよりも曲の雰囲気とアンサンブルを楽しむバンドですので買ってみようかなと思った方はその所お間違いなきようお願いしますね。。
David Sancious and Tone/dance of the age of enlightenment (1976)
 →コチラでドーゾ。
David Sancious & Tone/true stories (1978)
 黒人のキーボーディストなのですが、元々はブルース・スプリングスティーンのバックをはじめ、クラプトンやスティングとも一緒にやってきたアーティストで、このアルバムはかなり白っぽいというか、プログレがかったジャズ・ロックをやっています。かなりプログレッシヴロックに影響を受けたのですねこの人は。黒人でありながらこのサウンドの白さは何なのだ?と。変拍子も出てくるしね。次作ではついにジェフ・バーリンを参加させちゃうしさ。しかしながらまだまだ人種差別とまではいかないにしても、黒人が作るプログレ・ジャズ・ロックなんてイメージからして受けるわけがなかったのでしょう。惜しいなあ。まあ受けなくても良かったのかもしれませんけどね、あまりにもセールスが低いアルバムはCD化が危なくなるのですが、思い切って取り上げてくれたONE WAY Recordsに感謝。拍手!
David Sancious/just as I thought (1979)
 ん〜。いいですねえ。このアルバムも70年代の後半に発表されたアルバムなんですが、なんでこの時期のアルバムは名盤が多いのでしょうか。一曲目の「run」なんかはジェフ・ベックを聴いているようなギターやベースまで披露してしまっている暴れぶり。他ではベースにジェフ・バーリンとT.M.スティーブンスが担当とかなり強力な内容となっています。しかし、マニアックになりすぎずにヴォーカル曲も少々はさんではいるのですが、これまたあくまでもアルバム全体の緊張感を損なう事の無いように作られた控えめなナンバーで、とにかくその当時自分がやりたい音楽を素直に表現していた雰囲気がうかがえますね。スタンリー・クラークのアルバムの中で良く目にしていたアーティストでしたが、それとはまったくイメージの違う、カッコいいインスト・フュージョンです。
David Sancious/the bridge (1982)
 プログレ・ユニットの「David Sancious & TONE」としての活動から離れ、ソロとしての可能性を追求したワンマン・アルバム。サンシャス好きとしては通らざるをえないアルバムでした。ソロ・ピアノアルバムとしてだけではなく、シンセや得意(?)のギターも用いて自己表現世界を作り上げている。ここで聴くべきは鍵盤の技巧ではなくあくまでもセンス。彼はTONEの頃から黒人的な要素をほとんど感じさせない音楽をやってきましたが、ここでも白人奏者ではないかと思うくらいクラシカルな響きやリリカルなピアノを聴かせつつ、時折感じるリズム&ブルースのエッセンスがどうしても隠し切れずにいるところ、いや、意図的ではなくてもさりげなく黒人プレイヤーからにじみ出る感性が逆にこのタイプのミュージシャンとしては唯一無二な存在として確立されているのだと思います。ピアノのみの小品集から後半のシンセ多重録音による大作へ移る構成でデヴィッド・サンシャスと言う音楽家の本質が浮き彫りになる一枚。できればこのアルバムから入りたかったくらい。
David Spinozza/spinozza (1978)
 セッションギタリストとしてはかなりのキャリアを持ちながら、ソロ・リーダー作としてはわずか2枚のアルバムしか発表していない彼のファースト。確かに、フュージョンシーンではギタリストのアルバムというと派手なプレイに目が行きがちな頃で、スピノザのような渋い脇役的な存在はどうしてもスター・アーティストと比べると後手にまわってしまうのはいたしかたないところ。これは、今まで脇役だった彼が自由に好きなことをやっているな、と感じられる音楽的に幅の広い内容。一曲目の「superstar」から意表をつく出だし、次のレオン・ペンダーヴィス作によるサンバもかっこいいし、かなりカラフルで楽しいアルバム。ただギターの音色に強い個性がなかったのがやはりセッションメンらしくもあり、ソロ・アーティストとして大成できなかった致命的な部分でしょうか。
David T. Walker/on love (1976)
 CD化されたOde3枚の中で個人的には元々一番耳なじみのあったのがこのアルバム。若かったその昔はギターに関しても好みが「若く」、最初に聴いた時にはこの甘美なタッチに対する理解力がなかった頃でしたが、歳を重ねやっとその味がわかるように。歌っているかのようなギターをつまびくことのできる唯一無二の存在がジョー・サンプルやチャック・レイニー、ジェイムズ・ギャドソンら鉄壁のサポートと、より現代的になったアレンジの上で十二分にその「歌」を聴かせてくれた。その時代的に言えばまさに「ソフト&メロウ」の至宝と言えましょうか。
David T. Walker/ahimsa (1989)
 2007年初ソロ公演ではこのアルバムからのナンバーを多く演っていましたね。詳しくは→コチラで。
David Williams/take the ball and run (1983)
 セッション・ギタリストのデヴィッド・ウイリアムスが出したソロ・アルバム。中身はと言うと聴いてあらびっくり。結構良く出来たブラック/AORアルバムだったりするからこりゃー、いいの拾ったな、という感じ。83年というとAORはブームが終焉となりそんな中埋もれて行った作品という事になりますが、メロディアスなスローナンバーはセンスが良いし、プログラミングを使った「次の時代のブラック」にもアプローチ。時代の狭間で工夫を凝らし作られた作品だと思います。彼のカッティングギターとヴォーカルを中心にビル・マイヤーズジェフ、マイク、スティーヴ・ポーカロ兄弟、ネイザン・イースト、カルロス・ヴェガやベースを弾いたジョージ・ジョンソンなどバックメンも豪華。聴けますよ。
David Williams/somethin' special (1991)
 そんな、そこそこアメリカでは活動していたD・ウイリアムスが90年代に入りUKからさりげなく発表していたアルバムがこれ。全編ヴォーカル入りのブラック/ソウル仕立てで古臭くも無く、かといって90年代らしいかと言えばそうでもなく、メロディアスな曲調の中に生楽器とエレクトリック・テクノロジーが融合していた80年代中期のような雰囲気。路線としては以前から変わらず、アメリカではもうすでに時流から遅れたサウンドでも、やはりギタリストである彼の生きる道はこれしかなかったのでしょう。当時としては珍しいギター・アルバムとしても聴くことができますね。ジョン・ロビンソン、ジェフ・ポーカロ、フレディ・ワシントン、ジェームス・ジェマーソンJr.、ビル・マイヤーズ、アンドレ・クラウチらそうそうたるメンツが参加。
DAYTON/hot fun (1982)
 ファンクよりどちらかと言うとブラコンテイストなソウルが中心のこの3rd。“krackity-krack”や“gunch”のようなエレクトリックファンクもありますがやはりやや甘目。様々なスタイルのブラコンを器用にこなす所は良い(ラストの“movin' up”はすぐわかるEW&Fのパクリ!楽しいですけどね)のですが、バンドとしての強力な個性がないのが痛い。次作の“the sound of music”のような目玉となる一曲でもあったらなぁ。軽く流す感じの、平均点的アルバム。
DAYTON/feel the music (1983)
 80年代もそれこそ前半、エレクトリカル/ヒップポップ時代が本格化する前の'80s・ファンクで良質なグループと言えばこのデイトンも。一曲目“the sound of music”ひとつとっても懐の広いメロディアスなダンスナンバーが力量を感じさせますね。コーラスの入れ方やアレンジが洒落ていて、これがオハイオのバンド?みたいな良い意味でのイメージ違い。もう一つの聴き所はRoger Troutmanがプロデュースした“love you anyway”。急にロジャー色になりますがここでもメロを効かすヴォーカルとの調和が素敵。ブラコン好きにも是非。
Debra Laws/very special (1981)
 ヒューバート&ロニー兄貴のプロデュースによるロウズ・ファミリー末娘のソロ・デビューアルバム。一発目はこれぞロニー・ロウズラリー・ダンコンビ!と言わんばかりのクールなファンキー・チューン。アニキ独特のサックスやL・ダンの宇宙的シンセが絡んでくるところはおなじみの展開ですね。しかしこのアルバムが素敵なのはロニー色で押すだけでなく、「meant for you」、「your love」での女性ヴォーカルの良さを生かしたフリー・ソウルな部分を見せるところなのかも。有名なタイトル曲ではロニー兄貴もヴォーカル参加でこれがまた渋い。売れセンを意識しつつも音楽性の高い作りはさすがクロスオーヴァーな兄弟の力、といったところでしょうか。
Dee Dee Bridgewater/just family (1978)
 スタンリー・クラークのプロデュース。しかしすごいなあこのジャケット。彼女は次作ではジョージ・デュークをプロデューサーに迎え、バリバリのブラコンアルバム(bad for me)を発表したりするのですが、これはジャズ・ミュージシャンがフリー・ソウル的な展開、POPリスナーにも積極的にアピールした当時のクロスオーバー、フュージョンシーンの影響をヴォーカリストも受けてしまったそのものの作品と言えるでしょう。バックは上記の二人にレオン・チャンクラーハーヴィ・メイソンロニー・フォスターアルフォンソ・ジョンソン、レイ・ゴメス、デビッド・T.・ウォーカー他。現在の彼女はまた一ジャズ・ヴォーカリストに立ち返って地道な活動を行っているようです。
Dee Dee Bridgewater/bad for me (1979) はこちら
Dee Dee Bridgewater (1980)
 和田アキ子さんの5thアルバム…あ、いやいや、ジャケ写で思わず連想してしまいましたが、あらためてセルフタイトルをとった本作、ストリングスを多用したフィリー・ソウル風のグッと落ち着いた作品となりました。個人的には前2作のジャジー&コンテンポラリーな音の方が好きですが、あくまでも主役はシンガー本人の歌なのですから、バックの音がどうだとかは本人にとっては大きな事ではないかもしれません。でも、彼女がこの音で勝負する必要があったのかなかったのか、少し疑問が出るところではありますね。
DELEGATION/eau de vie (1979)
 UKブラック・ヴォーカル・トリオが70年代の終わりに発表した2ndが日本で再発。当時流行していたスタイルのアメリカン・ソウルの影響により、その良さを忠実にUKミュージック・シーンにおいても受け継いだ感のある極上のナンバーが続きます。プロデュースはKen Gold。そして収録曲のほとんどは彼とMicky Denneの白人コンビ(DENNE&GOLD)の作と言うところは、サウンド的にもブラックミュージックの影響を受けた日本人が当時作っていた音に似たような所があり、今の日本とUKのレア・グルーヴ人気を考えても共通性が感じられて面白いです。全面的にギターで参加のロバート・アーワイがカッティングするメチャ・シック風の曲を中心にアルバム後半もこれでもか!と言うくらい怒涛のダンス・チューンの連打。キモチイイですね。
Deniece Williams/when love comes calling (1979)
 モーリス・ホワイト設立ARCコロンビアからの79年作という所ではエモーションズの「come into the world」と比べると面白いアルバム。同時期でデヴィッド・フォスターのプロデュース、バッキングもTOTOの面々を中心に(一部旧友レイ・パーカーJr.プロデュースもあり)と言うとどうしても「I AM」的な音を想像してしまいがちですが、ジェレミー・ラボックのストリングスアレンジが感動的な「touch me again」などでも感じられる通りここではしっかりとデニース嬢自身の魅力を考えたヴォーカル・アルバムとなっています。タイトル曲はもろ、ファンキー・フォスター節なんですけどね。
DEODATO/2 (1973)
 「super strut」のイントロに、お〜デオダートだぁ〜と嬉しくなってしまう。まあ、全体では「ラプソディ・イン・ブルー」や「サテンの夜」など、楽団の音楽的なアルバムなのですが、「skyscraper」のグルーヴィー・ジャムなんかはファンキーなデオダートの本領発揮というところですね。ジョン・トロペイの古いギター音もなかなか味がありますなあ。US盤を買うべし!ボーナストラックにはスティーリー・ダンの有名カヴァー「do it again」も入っています。
DEODATO/love island (1978)
 さすが、トミー・リピューマ!デオダートのアルバムの中では、一番のカッコ良さ。(いや、彼の音楽を聴く上で、カッコ良さを求めていいものかどうかですが・・・)「太陽神」の縁からか、EW&Fがバックアップして作られた曲も入っています。しっかりとブラジリアン・サウンド的な部分も残しているし、これまでのデオダートのイメージを覆す一枚。音楽的に良いアルバムです。
DEODATO/knights of fantasy (1979)
 いきなり安めのディスコティック・オーケストラになっちゃいましたね。自分としては前作の「love island」が良かっただけにこの軽さはちょっと笑ってしまいます。とにかく、ストリングスの使い方とか、女性コーラスの入り方なんかが、「ディスコ」なんですよ。BGMにもならないくらいの苦笑いです。はっきり言ってしまうと失敗作ですね。
DEODATO/night cruiser (1980)
 前作でディスコ・ミュージックを意識した音になっていった彼ですが、まだまだ試行錯誤的な部分があったのは否めないところでした。今回はシンプルなセンスの良いアーバン・ファンク。デオダートが一人のミュージシャン・キーボーディストとして存在しスッキリとまとまった音になっています。ディスコ楽団のような安っぽさはなくなりました。ワーナー時代のこれら数作品はデオダート・ファンには賛否両論でしょうが、なかなか面白い時代であったと思います。

DEODATO/happy hour (1982)
 本格的にブラック・コンテンポラリーへ傾倒していった頃の代表作ですね。クール&ザ・ギャングなんかをプロデュースしていましたが、ブラジリアンの彼が黒人音楽の世界に入りこんで行ったきっかけは、やはりEW&Fとの接触だったのではないでしょうか。(アースの場合は逆にブラジル音楽への敬愛心からデオダートを登用したのですが)らしくない、といえばそれまでですが、この頃の活動を知る上ではそれなりにわかりやすく、聴きやすい作品となっています。
Dexter Wansel/life on Mars (1976)
 デクスター・ワンゼルと言えばまずこのアルバムということになるのでしょうか。MFSBのサポートとなったらズッポリその筋のフィリー、と思いきやそのホーンやストリングスの効いた一曲目はゴージャスな中にも緊張感のあるクールなナンバー。どこか当時の事件物ドラマのテーマっぽい作り。いや、それがバッチリ(笑)。挟まれるヴォーカルナンバーはホッとされつつも全体を通してそんな濃厚な曲調が占めていて、キーボーディストと言うよりは音楽家としてのトータルアルバムなんだろうなあ。つまりは、かっこいいのです。
Dexter Wansel/what the world is coming to (1977)
 俺はフィリー・ソウルの中だけで終わるミュージシャンではないぞ!みたいな奥の深さを見せた一曲目のインストルメンタル、なんて感動的なんでしょう。しかしリズム隊を中心とするサイドメンがどうも地元完結型の個性に乏しい方々ばかりでイマイチ評価に結びつかなかったところが残念でしたね。作る曲はかなり良いので本当に惜しい。ジーン・カーンの歌う「dreams of tomorrow」がこの傑作のハイライト。マリリン・スコットがアルバムタイトル曲としてカヴァーしたほどの名曲です。
Dexter Wansel/voyager (1978)
 フィリー・ソウル界のクセ者キーボーディスト、デクスター・ワンゼルの3枚目。78年ともなれば録音機器、技術もだいぶ良くなって、音全体が垢抜けてきましたね。まあそれでもかなり泥臭さはあるのですが。70年代ってご存知時の通り大雑把な音楽カテゴリーの壁を取っ払っちゃう動きがあって、それがジャズ方向からクロスオーバー・フュージョンのアーティストが出てきて大当たりしたのですが、この人はソウル方向からクロスオーバーしちゃってる人だったのです。全体ではゴリゴリのチョッパーベースで押し通す一曲目のようなソウルですが、タイトル曲のスリリングなフュージョンインストルメンタルを聴くと「ああ、目指しているなあ」と感じざるを得ませんです。
Dexter Wansel/time is slipping away (1979)
 そうそう。やっぱこのストリングスを入れなくちゃPIRのアルバムじゃないよねって感じで始まる本作。今回は無理にジャズ的なアプローチをせずにソウルを基調としつつ、よりファンキーなサウンドで親しみやすくなっていますね。ほとんどが歌入りですが、インストなんかもろそのものの「funk attack」なーんて言っちゃうくらいですから。POP度さらに五割増しってところです。ジョーンズ・ガールズもしっかりとコーラスで参加。
UNIVERSE (featuring Dexter Wansel) はコチラ
Diana Ross/ross (1983)
 ダイアナ・ロスがゲイリー・カッツやレイ・パーカーJr.らをプロデューサーに迎えて制作した本作は、前作のセルフプロデュース作の不振によりわずか10ヶ月で発表されたものだそう。マイケル・マクドナルドドナルド・フェイゲンなどそうそうたる楽曲制作陣とバックサポートに囲まれていますが、確かに急仕上げの感は否めない印象(全8曲と言うのも物足りず)。さりげなく流せるライトポップなんだけど、左から右に抜けて行って後に残らないんですね。メロディの良いバラードでも一曲あればまた印象も変わっていたかも。音作りに対する時代の節目に制作、歌い手双方アーティストの混迷を感じるアルバム。唯一自らがプロデュースに参加したラストのソウルナンバーが一番良かったと言うのが…
Diane Tell/chimères (1982)
 加・ケベック州出身のフレンチ・カナディアンと言う希少なポップ・シンガー1982年作。おおよそAORと言うべきアレンジに乗るフランス語のヴォーカルが新鮮。“La falaise”のようなヨーロッパの郷愁を感じるしっとりとしたナンバーもあるが、基本は北米系のポップ・サウンド。冒頭“Souvent longtemps énormément”から“Tes Yeux”の流れでガッチリと掴まれる。やはりこの手のは女性シンガーがバッチリはまりますね。時折現れるスキャットにジャズの素養もチラホラ。バックはホーンにGeorge YoungやJohn Faddisの名前もありつつ、他はほとんどが現地ミュージシャンながらソツのないAORサウンドを展開。
Dionne Warwick/friends in love (1982)
 ジェイ・グレイドンプロデュースの、1枚まるごと彼の「らしさ」あふれる名盤。D・ワーウィック自身については特に思い入れが無いのであえてここでは何も言えませんが、ジェイ・ファンにとって最も愛する時代に発表されたものであり、と共にその時代の終焉を感じさせるものであった作品でした。一曲目の「for you」からそのハーモニック・ギターといい、シンセの音色と言い、一時代を象徴する不滅の音がちりばめられています。「can't hide love」のカヴァー、一聴してStevie作とわかる「with a touch」等、アルバム後半もダレずに良い曲がめじろおしな大変聴き応えのあるアルバム。歌唱力のあるシンガーのプロデュース作品と言う点で、アル・ジャロウの名作2枚ととても良く似た雰囲気がありますね。
DJ SPINNA & BOBBITO/the wonder of stevie (2003)
 SPINNA&BOBBITOによるスティーヴィー・ワンダーのカヴァーを集めたコンポジションアルバムです。二枚組になっていてDISK1はDJミックス、2はストレートなコンポジションで構成されていて、二枚とも収録曲は同じなのですがミックスとストレートで曲順を変えているところは細かい配慮がなされているようです。70年代の音源からを中心に集められているようで、ホセ・フェリシアーノやキューバ・グッディングの居たMAIN INGREDIENT、ヒューゴ・モンテネグロなど選曲が渋い。名曲「as」はジーン・ハリスのカヴァーで楽しめ、これも今CDとして聴けるのは貴重なようです。ノーマン・ブラウンラムゼイ・ルイスなど馴染みのあるカヴァーも入っていたのですが中でも懐かしかったのはシダー・ウォルトン唯一(?)のフュージョン「animation」からの「another star」。何か面白いアレンジで頭に残っていましたが20年(以上?)ぶりに聴いて、一生懸命音楽を収集(カセットテープに録って・笑・)していた学生時代を思い出してしまいました。スティーヴィーはカヴァー曲でも本当に奥深いですね。うんうん。
Djavan/luz (1982)
 ポピュラー・ミュージックがデジタル化の一途を辿っていく境目であったこの時期、このアルバムの出現は大変衝撃的であると共に、ある意味何かを「あきらめ」の境地に至っていた自分にとって救いの神のような存在であったように思います。当時のMPBとしては最高にコンテンポラリーでいて、けっして媚びる事無く「ブラジル」を感じさせるジャヴァンのヴォーカルが見事に溶け合った傑作。スティーヴィー・ワンダーがハーモニカで参加と言うおまけつき。ロニー・フォスター、いい仕事してくれましたね。
Don Brown/I can't say no (1977)
 ブラウンスミスのドン・ブラウン、77年に出したソロ第1作。自らも奏でるアコギをフィーチャーした暖か味のあるサウンドながら、どこかヒネりもあるアレンジが渋いプレAORの良作。ギター、ベース、ドラムス、そして申し訳程度の鍵盤と言う無駄を削ぎ落としたシンプルな構成で少しも弱さを感じさせないのはやはりその素晴らしいメロディ・センスがあるからか。ヴォーカルはけして巧いとは言えないながらもそれ以上に曲作りの巧さに唸る一枚。じっくりと聴き込むとさまざまなアイディアが見える、実に味わい深いアルバムだ。
Don Grolnick/hearts and numbers (1985)
 若くしてこの世を去ったドン・グロルニックの初リーダー・アルバム。ソロアルバムは85年になってやっと発表されたと言うのが不思議なくらい、70年代からさまざまなアルバムに顔を覗かせていましたね。クロスオーヴァー・ミュージック創世記からの旧友、マイケル・ブレッカーをフィーチャリングしたこのアルバムはまさにニューヨーク。個性的なコードを使う一曲目からして、今のただ心地良いだけのスムース・ジャズとは二味くらい違う味わいを醸し出してくれています。渋い。
Don Grusin (1981)
 かなり日本企画を漂わせるドン・グルーシンの1st。録音もクセがなくていかにも当時のジャパニーズ・フュージョン的な音です。アーティスティックな音が好きな人にはおすすめできません。兄デイヴと比べると一発でアーティストがわかるような個性が無いように感じますが、このライトな音作りはそれはそれで気持ちよく聴けますね。ギターはもちろんリー・リトナーマイケル・センベロ、ベースはエイブラハム・ラボリエルとネイザン・イーストが担当。特にリー・リトナーのギターが入る曲は彼のソロアルバムを聴いているようです。
Don Grusin/10K-LA (1984)
 続く2ndはフュージョンと言うよりも時代のプログラミング・ビートに乗った懐かしささえ感じるポップ・アルバム。1stと決定的に違うのはPhil PerryLeslie Smith、Valerie Carterらが参加したヴォーカル曲が大部分を占める作りで、Eric Taggの歌うミディアム・ナンバー「Julia Ann」がイイ感じ。明らかにポップになっていますね。帯に「全天候型ポップ」とあるのがなんとも80年代的で笑えますがたしかにこの爽やかさはズバリな表現だったかも。
Donald Byrd/places and spaces (1975)
 元々はコッテコテのジャズ・トランペッターだったわけですがラリー・ミゼルによって一躍レア・グルーヴマスター的存在になったドナルド・バード。音はこれぞグルーヴィーと言うようなミゼル節の中でペットのソロは急にジャズだったりするんですよね。全体のサウンドとして気持ちよく聴けば良いだけなんですけど、どこか「ジャズのオッサンが乗せられて吹いている」みたいなイメージがついてしまうのはしょうがないところか。自分で曲を作らないのが致命的。あ、アルバムはカッコいいですよ。念のため。

Donald Byrd/and 125th street,N.Y.C (1979)
 ソウル、R&B系に傾いていくジャズミャージシャンが70年代後半は多かったのですが、ジョージ・デュークやマーカス・ミラーが大成功を収めた「表系」とすると、ロイ・エアーズやこのドナルド・バードはどこか垢抜けきらないブラックミュージックの中でゆっくりと我が道を進んで行った「裏系」と言う事ができると思います。この泥臭いファンキー・ジャズ・ソウルが今のクラブシーンでは再注目されているというのですから、わからないものですね。
Donald Fagen/the nightfly (1982)
 とりあえずジャケットがカッコいいですよね(笑)。日本人って、こういう「雰囲気モノ」弱いんですよ。スティーリー・ダン的な音を想像していた私はチト拍子抜けしましたが、聴きこむとかなり味のある音でヨイです。ウエスト・コースト的AORとはまた違ったアダルト・ミュージックの定番的作品です。
Donald Fagen/kamakiriad (1993)
 前作から約10年、一聴しただけでドナルド・フェイゲンとわかる声とアレンジが戻ってきました。この人の不思議な「裏切られる展開」は独特ですよね。自分なりの音楽的感覚を正反対、逆と言うよりも、4〜50度方向にうまく反らして行く、このかわし方が絶妙の持ち味です。前作よりもさらにパワーアップしましたね。おすすめです。
Donald Fagen/morph the cat (2006)
 最近の新しい音も多少は聴いていますが、これにはやっぱり唸らされてしまったなぁ。正直、スティーリー・ダンとしての復活作「two against nature」を聴いて自分の中でいくばくかの納得いかない部分があったり、はたまた恥ずかしながら近年の「再結成ブーム」にまで気が及んでしまった私ではありました。しかしドナルド・フェイゲンのソロ2作はまた別の感覚で聴いていた私がS・ダン最新の「everything must go」をすっ飛ばして何気なく購入したこのソロ新作、あらためて素晴らしい。まず率直な感想としては音が丸くなった印象。前作ではかなり激しかったヒネクレ展開が抑えられて、耳にスッと入ってくる素直なメロディーになりました。それでいて細かく計算された無駄のないアレンジは変わらずさすがとしか言いようがなく、一聴すればこの人と気付く独特の音は今まで通り。さらに我々に訴えかけてくるパワーが増したように感じるのは私だけでしょうか? またフレディ・ワシントンの起用は大正解でしたね。この人は一音一音の粒が確りとしていてD・フェイゲンのようなシンプルかつ凝ったアレンジにピッタリはまります。
 若者の視点で描いた「ナイトフライ」、中年期での視点が「KAMAKIRIAD」、そして終焉について語った本作で三部作として完結との事。まあそれはライナーでもゆっくり読んでいただいてまずは聴きましょう。終焉(死)がコンセプトと言いつつも本人曰く葬式で流れるような作品ではなく、それどころか彼一流のユーモアたっぷりに綴られた音と詞の世界が待っていますヨ。●●ラボの新作にしばらくハマッていたりしてましたが、そんな私の頬をパンパンと平手打ちしてくれたようなアルバム。失礼ながら(笑)。
Donnie/the colored section (2003)
 21世紀になってまたもや現れたスティーヴィー・クローンの代表格。アルバムタイトルを象徴する幕開けの短いナンバーや、続くNCソウルではまだその部分は感じさせなかったのだが、3曲目の“cloud 9”でついにそのスティーヴィーっぷりは全開に。やはりバックグラウンドとなるアーティストが偉大だと、引き継ぐ者も自然と才人になるらしく、音作りやヴォーカルはただ唸るばかり。ただ、変幻自在な音楽スタイルは、いかにも「キー・オヴ・ライフ」の真似事的な印象もあり。「スティーヴィーへの崇拝」は隠さなくても良いが、それをさらに現代のソウルを表現する者として積極的に昇華していく姿勢が欲しかったかな。しかし、そんな彼をバックアップするのはMOTOWN。陳腐なアルバムではない事は確か。ご安心を。
Donny Hathaway/collection (1990)
 リアルタイムでは聴いていなかったアーティストなので良く知らなかったのですが、やはりカジッておかなければならない人でしたね。前から「this christmas」は気になっていたもので。今でも生きていたならどんな歌が聴けていたのだろうと思いますね。入門用の一枚です。
Donny Hathaway/live (1972)
 これがまた渋いんだよなー。マーヴィン・ゲイの大名曲「what's goin' on」で始まり、キャロル・キングの「you've got a friend」のイントロではオーディエンスが大騒ぎ。後半はコーネル・デュプリーやフィル・アップチャーチといった往年の名脇役とのジャム・セッションになっちゃってます。クラブ的な小会場でのライヴだと思いますが、貴重な、とても生々しい彼の歌が堪能できる一枚です。
Donny Hathaway/these songs for you,live! (2004)
 名盤「LIVE」からの数曲と、未発表のライヴ音源を含む構成で新たに発表されたアルバム。言わずと知れた「LIVE」はソウル好きによるソウル好きのための…的な内容であったのに対し今回は「someday we'll all be free」などを含むダニー自身のペンによるメロディアスなナンバーを頭の3曲に持ってきたり、「yesterday」や「superwoman」といった未発表カヴァーなど今の耳で聴いてもまさに「新たなライヴ名盤誕生」と言わざるを得ない。そしてこちらでは歌だけでなくダニーのピアノ・プレイがずいぶんと楽しめる内容となっていて、アーティストとしての彼をあらためて感じさせてくれます。さあ、たまには感動しましょうよ。
DOOBIE BROTHERS/the very best of the doobie brothers (1993)
 これはいい。アメリカンロック黄金期の70年代から、マイケル・マクドナルドの加入によるAOR路線の第二期へ、代表曲のオンパレードです。「ドゥービーと言えばこれ」が詰まった全18曲。これ以前に発売していた「best of the doobies」もヒットしましたが、これはその名の通りベリー・ベストと言える選曲で大変お買い得です。
DREAMS (1971)
 ブレッカーズ立ち上げ前のランディ・ブレッカー(tp)とマイケル・ブレッカー(sax)に、バリー・ロジャース(tb)という3人のホーンをサウンドの核とし、ジャズ・フィールドからビリー・コブハム(ds)、ジョン・アバークロンビー(g)、ポップ/ロック・フィールドからジェフ・ケント(key)、ダグ・ラバーン(b)が合流して結成された幻のグループ。3人のホーンがたっぷりとフィーチャーされていながら、すべてヴォーカル・ナンバーとなっているところはフュージョン黎明期グループと言うよりは、当時全盛であったシカゴやブラッド・スウェット&ティアーズらの後釜を狙ったと言うところが正解でしょう。しかし後半の組曲仕立てなどジャズ・エレメンツが多分に現れるアレンジは単なるブラス・ロックと一線を画すものではありますね。最初はおとなしく、さすがのコブハムも若いんだなと思ってたら次第にあの手数バシバシドラミングがしっかりと聴けました。ウレシー。
DREAMS/imagine my surprise (1972)
 コチラでドーゾ。
DUKES/bugatti&musker (1982)
 歌声に好き嫌いが分かれるところでしょう。私は苦手な部類です。はは。サウンドは冒頭の「mystery girl」をはじめ、AOR好きには良く出来た作品が多かったということで、かなり人気になったアルバムでした。なにせ、バックがTOTOを中心とした当時絶大な支持を受けていたスタジオミュージシャン勢ぞろいでしたからね。これも日高米(英)低的作品の代表格です。プロデュースはアリフ・マーディン。
Dwight Druick/tanger (1980)
 カナダにはフランス語を公用語とする地域があり、そんな中から生まれるフレンチ・カナディアンのポップスも数多く存在するが、これはAORの一番ホットな、時期的に傑作が次から次へと生まれ出でていた1980年の作品。1曲目のギター・ソロ・パートに似せたようなスキャットがイイ“voudou”から最後まで、都会的かつダンサブルな、アレンジ面でもこれぞAORと言ったツボを見事に捉えた曲の数々が惜しみなく流れて行く構成が素晴らしい。カバーはドゥービーとTOTOと言うのも直球勝負だが、とりわけ“george porgy”は原曲に忠実なアレンジの中、フランス語の小洒落感が素敵にマッチした名品。


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