新旧問わず、最近ハマっているアルバムを紹介します。






David Sancious and Tone/dance of the age of enlightenment (1976)
 
 プログレッシヴ・ジャズ・ロック時代のデヴィッド・サンシャス好きにとってはコレクターズ・アイテムとなっている幻の3rdアルバム。DBサイトにも正式に制作されたアルバムとして記載されているものなのですが、2作目「transformation(the speed of love)」までをリリースしていたEPICと移籍レーベルARISTAとの権利問題が生じ、お蔵入りをしてしまったそうな。本人の公式サイトにはこのアルバムの存在をうかがわせるものはなく、やはりこれはコレクターズCDの域を出ないものなのかもしれませんがジャケ裏にある“Manufactured under license from Arista Records”を信用すれば、Wikipediaの「2004年になってやっとリリースされた」と言うのも正しい記録として良いのかなと。なにしろ音質は非の打ち所が無い完璧なもので、最近大手のレーベルでも良くあるアナログ起こしなんてシロモノではなく、おそらくマスター・テープからリマスター・プレスされたものでしょう。手に入れて1年以上も聴かず放っておいたものだったのですが、その内容に眠っていた「サンシャス好き」スピリットが目覚めてしまいました。メンバーは変わらずアーネスト・カーター(ds)、ジェラルド・カーボーイ(b)との鉄壁のトリオにあの妖精ゲイル・モラン(vo)。

 さて、全体としてはシンフォニックに響くムーグ・シンセサイザーを中心としオルガン、ローズ、クラヴィネットなど鍵盤弾き倒しの中、絶妙アンサンブルが快感のテクニカル・ジャズ・ロックは前作までと同様ですが、曲数を増やし冒頭のヴォーカル・ナンバー“wake up”から叙情的なアコースティック・ピアノが火照った耳を癒してくれる“dance of serenity and strength”、そしてD・サンシャスもうひとつの顔であるギタープレイもしっかりと有り! 牧歌的でもある静かなナンバーをここではアコースティック・ギターの多重録音で厚みを出し、しかも驚きのテクニックを披露した“gone is the veil of illusion”など1曲4〜5分の適度な構成で起伏に富んだ様々なカラーを見せてくれる素晴らしいアルバム。個人的にはやはり真骨頂のプログレ・フュージョン、11分にも及ぶ大作“dance of the glory and playfulness”で突然挿まれるジャジーなアコピの部分にゾクゾク来たりするのですが。

 これが黒人アーティストの作る音楽とは思えない、そんなギャップがまた魅力だったりするけれど、生粋のプログレッシヴ・ロックファンにはやっぱりどこか違う存在なのかもしれませんね。しかし黒人の彼がプログレ・アーティストのみを目指していたわけではなかったのは一聴瞭然。これを含めた個々のアルバムから飛び出して来るのは当時として既成概念に囚われず、人種やカテゴリを超えた自由な発想の音楽性を持つ者から生まれる音。これがデヴィッド・サンシャス流のクロスオーバー・ミュージックだったのでしょう。(2008/9/20)




1. Overture - WAKE UP (to a brand new day)
2. 1st MOVEMENT (dance of the glory and playfulness)
3. 2nd MOVEMENT (dance of purification)
4. THE DAWN
5. 3rd MOVEMENT (part I & II)
6. 4th MOVEMENT (dance of serenity and strength)
Finale:
7. GONE IS THE VEIL OF ILLUSION (part I)
8. DANCE OF GRATITUDE AND DEVOTION (part II)



Produced by Bruce Botnick and David Sancious
All compositions and arrangements by David Sancious

David Sancious (ac-p,key,org,syth,elc-g,ac-g,vo,bells)

Gerald Carboy (b)
Earnest Carter (ds,perc)
Gayle Moran (vo,cho)





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