David Oliver/Jamerican man (1977)
 
 生まれ、育ちは米国・フロリダながらジャマイカの血を持つソウル・シンガーが遺した数作から今回はそのデビュー・アルバムを。そのタイトルも「Jamerican man」とはまんまじゃないか、と言いたくなりますが、そのヴォーカル・スタイルもジャメリカンと表現して良いのか、とても個性的。どこか歌の線が危なげな高音のノドがおおよそのソウル・シンガーのそれとは異質であり、確かにレゲエをやらせたらそれこそハマってしまいそうな声質の持ち主。しかし、その違和感も独特の持ち味として、かつ、やはりこの種の音楽をやるだけあって時には力強いシャウトをかましてくれるパワーも持ち合わせていますね。

 さて、このアルバムはRonnie Lawsがアルバム・タイトルにまでしてしまった“friends and strangers”の原曲が収録されていることで有名な一枚。この曲の作者がDavid Oliverなのであり、まさにそのヴォーカル・ヴァージョンと共にロニー版のあのフレーズ、アレンジの源がここで聴けるわけです。大手マーキュリーに在籍していたとは言え、たいしたヒットもなかったD・オリバーの曲を何故取り入れたのかと言うと、両者に共通するプロデューサーのWayne Hendersonの存在でしょう。製作時期もほぼ同時期であり、自身が手がけたシンガーの曲をロニーに薦めていった事が容易に考えられますね。なにしろレコーディングもアレンジのWilliam Jefferys、Bobby Lyleの鍵盤、Roland Bautistaのギターやベース、ドラムスに至るまでほとんどそのまま同じメンバーが担当しており、全てはW・ヘンダーソンの「仕切り」によって両アルバムがほとんど同時進行で製作されていったのでしょう。まぁ、良く有りがちと言えばそんなパターンなのですが、大きなヒットや名作と呼ばれる部類の作品は出なかったものの、ジャズとソウルとの新たな橋渡しとしてプロデュース業に力を入れ始めたW・ヘンダーソンが残したもうひとつの記録として興味深いものはありますね。

 A面の1曲目でいきなりジャマイカンな曲調はご愛嬌と言ったところで、もちろん本路線は2曲目からに現れる。R・バティスタのカッティングが左右に振れるイントロで始まる“love so strong”はハピネスな明るい楽曲ながらB・ライルのJazzyな鍵盤が絡み、続く“MS.”はデイヴ・グルーシン調のミステリアスなイントロで始まるソウル・ミディアムの佳曲で、主役のハイトーン・ヴォーカルが際立つ。そしてA面最後に配置された“friends and strangers”はどこか陽気な方向に持って行こうとする間奏に疑問を感じつつもロニー版にほぼ忠実なWilliam Jefferysのアレンジにうれし懐かし。そしてB面はパワー・ソウルな楽曲が続き、B・ライルのプレイが光る“munchies”のアレンジに乗るD・オリバーのヴォーカルはそれまでの印象を覆す意外な力技と言えるでしょう。なにしろ、ただ歌うだけのシンガーではなく、これら楽曲の作者としてほとんどクレジットされているのだからその能力はなかなかのモノ。純粋にソウル・アルバムとして聴くも良し、主役のキャラクターと曲調との面白いミスマッチ感を楽しむも良しの一枚。以後、幸か不幸か全てW・ヘンダーソンのプロデュースにより夭逝されるまで数枚のアルバムをレコーディングするも完成度としてはこの1stが一番。いろいろな意味で面白いアルバムです。(2011/4/19)


SIDE・A

01.WHAT KINDA WOMAN
02.LOVE SO STRONG→
03.MS.→
04.FRIENDS AND STRANGERS

SIDE・B

01.LET'S MAKE HAPPINESS
02.MUNCHIES
03.YOU AND I
04.PLAYIN' AT BEIN' A WINNER


Produced by Wayne Henderson
Arranged by William Jeffreys

David Oliver (vo)

Bobby Lyle (key,vib)
Roland Bautista (g)
Steve Guitterez (ds)
Donny Beck (b)
Vance Tenort (perc)
and others.

photography by Norman Seeff




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