Nancy Wilson/I've never been to me (1977)
 ジャズ・ヴォーカルの女王と言えばこの人でしょうか?その彼女が今で言うフリー・ソウルに傾き、ポップなバックに乗って独特の「ヒネ」のある伸びやかなノドを聴かせていたのがこの70年代。ジーン&ビリー・ペイジの華やかなアレンジのもと、ラモント・ドジャーの“flying high”によって幕を開けるこのアルバム、ギターが耳に残るのはおそらくDavid T. Walkerのカッティングであるからだろう。ファンキーなコーラスが効いた“love is alive”、ミディアム・メロウなレイ・パーカーJr.作“car of love”、ホーンとストリングスでクールに決まった“changes”など、表現豊かなベテランの歌声に負けない佳曲揃いの良盤。ギターは他にJay Graydon、ドラムスはJames Gadsonなどの大御所もしっかりと参加。
Nancy Wilson/life,love and harmony (1979)
 80年代の足音が聞こえてくる頃、ナンシーもまた音の時流に遅れることなくコンテンポラリー・ポップ化を図っていくのでした。それと言うのも全体的にリー・リトナーのカッティング・ギターが際立つアレンジになっていて、ダンス&ソウルな出だしが当時を良く物語るタイトル曲に始まり、続く“here's to us”ではまるでL・リトナーのアルバムの中でナンシーが歌っているのかと思わせるほど。しかしプロデューサーの趣味が強く出てしまったのか、凝った展開を見せる“sunshine”ではそのタイトルとは裏腹にクールな表情を見せたり、伸びやかなヴォーカルの力をあらためて知らしめる“wrapped up in the comfort of your love”など、時代追随一辺倒ではなくしっかりと「彼女」を聴くアルバムとなっています。
Nancy Wilson/take my love (1980)
 スッキリと明瞭なレコーディングは年度が進むにつれて音の変化を如実に感じ取ることができたこの時代ならではの音楽でもありました。ドラムスもこれまで一手に引き受けていたJ・ギャドソンの他、曲によってNDUGU、マイク・ベアード、ハーヴィー・メイソンらが分担し、印象の薄いポール・ジャクソンJr.がギター担当の大部分を占めたのはコンテンポラリー色を強める意味でもしかたのない人選であったのかもしれません。ジャズを下地とした確かな歌唱力をソウル/ポップの世界で表現するアルバム作りに専念していたこの頃の集大成的作品。確かにナンシーに限らず実力のあるシンガーがこういった活動をすると言うのが一つの流れでもありましたよね。リオン・ウェア作“I love you all the time”が哀愁歌謡曲の世界でいいなぁ。対照的に最後はライヴ仕立てで「私はジャズ・シンガーよ」しちゃってるのが惜しい。
Narada Michael Walden/garden of love light (1976)
 ソロとしてはファーストとなるアルバム。実は彼の作る音世界としては一番魅力的なのでは。まずはドラマーとしての彼があり、サウンドクリエーターとしての彼もあり、1976年時点で、様々なジャンル・カテゴリの壁を越えて自由な発想から音楽を作りたいという姿勢がうかがえます。後に彼が目指す「ヒット・チャートを意識した曲作り」とはまた違った独特のPOP感が漂うフュージョンアルバムとなっています。バックはレイ・ゴメスのギター中心とはいえ一曲ずつジェフ・ベックとカルロス・サンタナがゲストのナンバーあり、ベースはウイル・リー、キーボードはデビッド・サンシャスという布陣。そう、70sのスタンリー・クラークとも共通するものがありますね。
Narada Michael Walden/awakening (1979)
 ついにナラダがサタデー・ナイト・フィーヴァーしちゃったブラコン好きならよい意味で、ドラマーの彼が好きだった人には悪い意味でターニングポイントとなった作品です。アルバム前半をNY録音、後半をLA録音、バックミュージシャンもそれに応じて構成されており、個人的にはやはりあっさりとしたLA音の方が好きですね(ジェイ・グレイドンの名脇役ぶりも堪能できます)。NY録音のいかにも売れセン狙いブラコンはちょっとゴメンナサイってところです。しかし、これを機に彼は一気にヒット・プロデューサーの道を歩むこととなるのですが。
Narada Michael Walden/the dance of life (1979)
 しかしまあ、このベタなディスコ・サウンドが好きか嫌いかは別にして、ナラダはこの後アメリカンPOP界のビッグ・プロデューサーとなって行くのです。彼の場合はこの路線でも変にアーティスティックなこだわりと言うかプライドみたいなところが無く、POPはPOPだ、みんなが楽しみ、喜んでくれればいいみたいな徹底された商業指向が逆にわかりやすくて良かったのかもしれませんね。このアルバムからNYでもLAでもなくサンフランシスコ録音という所も音のベタさ満開です。
Narada Michael Walden/victory (1980)
 ベタではあるがのっけから軽快に飛ばすナラダ流ダンス&ソウル全開盤。しかし良く聴けば歌ものに力が入っているだけでなくドラミングも意外にハードプレイ。締めくくる「勝利組曲」もベタベタのインスト。しかし好き嫌いはおいといてドラマーのアルバムらしさを残しておくところは個人的には好印象。ランディ・ジャクソンの荒さはあるが太くグルーヴィーなベースや、このアルバムから本格的にナラダ・ファミリーとなったCorado Rusticiのギターが軽薄になりがちなこの手の音に奥行きを与えていますね。
Narada Michael Walden/confidence (1982)
 元々ジャズ畑のアーティストでR&B系のプロデューサーになる人はかなり居ましたが、メジャーに大成功したのはジョージ・デュークとこの人が代表的ですね。でも、正直に言うと個人的にはナラダのゴテゴテとしたブラックは好きじゃないんですよ(その割には何枚も買っていますが)。G・デュークと比べるとサウンドの作りがB級ブラコンなんですね(あ、失礼シマシタ)。やはり、そこは様々な音が作れるキーボーディストとドラマーとの違いから来るものでしょうか。でも、人柄自体がそのまま出たような音なので爽快な80'Sブラックが好きな人には結構おすすめだったりします。
Narada Michael Walden/the best of narada michael walden (1995)
 ドラマーとしてリーダーアルバムを出していた初期の作品から、やがてはBCM界のヒット・プロデューサーに至るまでの彼が一枚に収められています。彼の作るBCMは「いかにも…」という感じで苦手なのですが、初期の作品はインスト、歌ものどちらも爽やかなサウンドでいいですね。一人のアーティストの変遷を見るようでとてもオススメなアルバムです。
Natalie Cole/everlasting (1987)
 レーベル移籍や夫の死、ショックにより自らも歌を歌えなくなるといったトラブルを乗り越え見事にカムバックしたヒット作。レジー・キャロウェイやマーカス・ミラーによるプロデュース、バックもジョン・ロビンソン、ニール・スチューベンハウス、ダン・ハフ、グレッグ・フィリンゲインズ、ブルース・ロバーツ等そうそうたるメンバーにサポートされてカラフルかつ、アメリカン・ヒットチャートも意識したゴージャスな作りとなっています。ブルース・スプリングスティーン「pink cadillac」のカヴァーはこのアルバムに収められていますよ。
NAUGHTY BY NATURE/nineteen naughty nine (1999)
 ラッパー3人組の全曲ラップアルバム。曲構成はバラエティに富んでいて、とにかく喋り倒しのナンバーから「would’ve done the same for me」のようなゆったりしたスローナンバーまで飽きさせずに最後までラップでいける作りになっています。こうじゃないとこのテのは最後までもちませんよねー。
NDUGU & THE CHOCOLATE JAM CO./do I make you feel better? (1980)
 こんなアルバムを再発しちゃうんだから日本もかなりすごいよね。個人的にはなじみの深いドラマー、ンドゥグちゃんのバンドなのでジャズ・フュージョンのコーナーにしようかと思いましたが内容的には完全にこっち寄り。なにしろジョージ・デュークはもちろんのことウエザー・リポートやサンタナで活動していた経歴のある人ですから。ブラコンに手を染めるドラマー数々あれどこの人ほどほとんど日の目を見なかった人もいないのですが、めでたく日本で再発とはね。サウンドもこの人のドラムに妙に合う泥クサ系のディスコサウンド。オモロイなあ。
THE CHOCOLATE JAM CO./the spread of the future (1979)コチラ
Leon NDUGU Chancler/old friends new friends (1989)コチラ
Ned Doheny/prone (1978)
 ビバリーヒルズに「ドヒニー通り」があるというくらいの富豪のお坊ちゃんであるそうですが、CBSとの契約を打ち切られ、本国アメリカでは見送られ日本だけでの発売となったのは、随分と対照的なアーティストとなってしまいましたね。これはそんな「幻になりかけたアルバム」なのです。スティーヴ・クロッパーのプロデュース、ソウル・フレイバーの効いたメロディーとアレンジがネッド自身の典型的白人の声質と妙にマッチして、それはボズ・スキャッグスを若くしたような雰囲気を醸し出しています。
Neil Larsen/Jungle fever (1978)
 名盤ですね。ニール・ラーセンと言えばこのアルバムでしょう。私はその後のラーセン・フェイトンバンドよりもフュージョンブーム最盛期の中、この独特のオルガン・サウンドで注目された本作品が好きです。全8曲、一曲も駄曲がなく、頭(心)に残るメロディーで一枚聴き終わる時間がとても短く感じられるほど素敵なアルバムです。
Neil Larsen/high gear (1979)
 前作のヒット冷めやらぬ間に、立て続けに発表されたソロ第2作。引き続きトミー・リピューマのプロデュースにより「JUNGLE FEVER」の延長線にある作りをしていますが、どこかセッション的なイメージを強めたかったのかノリの良い曲調を増やしたようで、持ち味であるこの時代に異彩を放ったオルガンによる哀愁味が若干薄れた印象。しかしこの後ラーセン・フェイトンバンドに展開する彼のキャリアの序章的な雰囲気もあるのはニヤニヤしてしまうところですが。それでもここでは全曲インストで通してくれたのが嬉しい。しかしこのシャツのデザインすごいね(笑)。
NEW JACK CITY (soundtrack) (1991)
 一時流行った黒人のライフスタイルから描かれた映画の中でも、注目度の高かった作品の同名サウンドトラックアルバムです。サントラでありながら、90年代ブラックミュージックが一枚に詰め込まれている内容で、純粋なブラックアルバムとして聴く事が出来ます。Keith SweatChristpher WilliamsJohnny Gillらが収録されています。
Nick DeCaro/italian graffiti (1974)
 スティーヴィー・ワンダースティーヴン・ビショップ、トッド・ラングレン、ジョニ・ミッチェル。。そんな名アーティスト達の(今で言うと)カヴァー曲集的な作りなのですが、大ヒット曲を使わない選曲の渋さ、当時としては斬新な音でAORの根幹となったと言われる作品です。トミー・リピューマのプロデュースといい、デビッド・T・ウォーカーのギターといい、今また新鮮に聴こえてくるくらいとてもオシャレ。本人の歌はあまりうまくないですが。
Nick Rolfe/the mind of an evolutionary (2006)
 “movin'on”のデラカッチョ良さにぶっ飛ばされて、思わず即買いしてしまったのがこの一枚。このニック・ロルフという男、まだ30前だというのに、いや、若いからこその熱さと言う部分も確かにあるのですが、音がなにしろ嬉しいんです。プログラミングを使わない生演奏のジャズ・ファンクを基調としつつ、曲によっては歪んだギターを前面に出したロックであったり、ジャズ・ピアノが下地であった彼の音楽ベースがチラチラと現れる鍵盤プレイ、明らかに70年代〜80年代グルーヴに影響を受けた「ふる新しい」感覚のアレンジ等、めまぐるしく飛び出す音の、あまりの多彩さに戸惑ってしまうほど。今並べたように表現される新進アーティストは他にもいるし、近年はニュー・クラシック・ソウルに位置づけられる音も増えてきているようですが、彼が圧倒的に違うのは、音楽に「男気」がある事。良くありがちなオシャレ〜な音でも、甘ったるい音でもなく、そこにあるのは「男のジャズ・ファンク」。でもただ骨太ってわけじゃない。あの“just the two of us”なんて往年のナンバーをカヴァーしてしまうくらいだから、優しさも持ち合わせたヴォーカルは瑞々しくて洗練されている。しかしクールなのだ。本当にオススメ。カッコいいぞ!
NIELSEN/PEARSON (1980)
 AORマニアには評価の高かったソングライター・デュオの名盤。メロウにしてもハードポップにしてもまさに「あの頃」独特の雰囲気を持った佳曲揃いで、曲作りに対する熱の入れようが最後まで下がることなく、次から次へと質の高い楽曲が繰り広げられていく。今となってはオーバー・アレンジに感じられる向きのある“Annie”を収録するところなどは、かなりペイジスに近いものがあると思ったら、なんとギターはチャールズ“イカルス”ジョンソンであった。しかしシックなペイジスに対してこちらは作者の持つカラーであろう爽快さがあり、もっと幅広い層に受けそうなものなのに何故日本未発売であったのかが不思議。
NIMBUS/children of the earth (1980)
 ありがたきレア盤リイシュー・シリーズでお耳にかかれたお宝アイテム的アルバム。デトロイト近辺で活動をしていたAORバンドの自主制作盤が元の音源らしいのですが、これがまたひとつひとつの楽曲クオリティが高く、粒揃いのナンバーが並べられて行きます。ジャズの要素も含んだ演奏主体のAORとしては、音作りに関しては立派にメジャークラス。しかしながら自主制作らしい、的の絞りきれていない印象もありますが最後まで飽きさせず一枚聴かせられてしまいます。これだけのバンドでもひとつの地域に埋もれて終わってしまうところがアメリカ音楽界の巨大さと厳しさですね。
NITEFLYTE (1979)
 圧倒的人気の2ndに比べるとどこか地味な1st。とても爽やかです。往年のディスコサウンド的な曲もあったりしますね。スターアーティストはこれといって見当たらないのですが、ギターカッティングがクロースアップされた音づくりをしていたので、AORファンの中でも特にギターにこだわった人に好まれたグループでした。
NITEFLYTE/II (1981)
 時代の音としてはまさにタイムリーであり、絶大な人気を誇る2nd。1曲目の「you are」からこれでもかとたたみ掛けるメロディーフレーズにぶっ飛ばされます。異色のマイアミ・AORでしたね。1981年と言うとこのアルバムとPAGESの3rdでした。車の中で良く聴いたものです。本来はブラックなんでしょうけど、日本ではAOR好きに受け入れられた名盤。このどっちつかずな所が結果的にはダメだったのでしょうねぇ、本国では。
Noel Pointer/hold on (1976)
 ジャズ・フュージョンバイオリニストという希少なアーティストの作品です。この手で代表的なのはジャン・リュック・ポンティ、ステファン・グラッペリあたりですが、この人は黒人なので、一耳するとすぐわかるデイヴ・グルーシンのエレピをバックに、いかにも黒系の親しみやすいサウンドとなっています。クインシーの「ルーツのテーマ」、スティーヴィーの「スーパーウーマン」などのカヴァーも収録。
Noel Pointer/direct hit (1982)
 そして、彼も'80s FUNKの道を歩むのでした。あっと言う間に過ぎ去りぎみのフュージョン・ブームから次へ行くにはこの方向性しかなかったのでしょうか。彼に限らずこの時期はそんなアーティストが多かったように思います。しかしながら二曲目のミディアム・スローな展開の中挟まる彼のソロは雰囲気良し。ブラコン・コンピに一曲混ぜたらハマルかも。さて、このようなヴォーカルナンバー中心のソウル/ファンクな内容でヴァイオリンを使うと言うのはどうなんでしょう。ストリングスをアクセント使うのとは意味が違いますよね。時代の流れに乗っているようで、ちょっと無理やりだったかな。彼にとって80年代はちょっと辛い時期だったかもしれませんね。
Norman Brown/just between us (1992)
 初っぱなの「stormin」にぶっ飛ばされて思わず買ってしまった一枚。当時私が求めていたフィーリングの曲をズバリやってくれた!という感じでした。今聴いてもカッコイイです。「love's holiday」ではヴァーダイン・ホワイトのベースとアル・マッケイのリズムギターが、「too high」ではスティーヴィー・ワンダーがヴォーカルとハーモニカで参加。本家を持ってくるとは。。。な、泣ける。さすがモータウン。やってくれるぜ!
Norman Connors/saturday night special (1975)
 ジャズ・ドラマーとしての立場でリーダーアルバムを作っていた彼が本格的にブラック/ソウル・フィールドヘ傾倒して行った作品。ジーン・カーンをメインヴォーカルに登用したジョビンの“Dindi”などフリーソウル満載。そのギラギラなジャケットとは裏腹にまだH・ハンコックやゲイリー・バーツらがサポートしていた頃の黒々としつつもジャズマンのプライドを感じさせる部分を残しているところが良い。どう評価されたかは知りませんが。
Norman Connors/romantic Journey (1977)
 段々とブラック/ソウル・マスター的存在になって行くノーマン・コナーズですが、ジェリー・ピータースレジー・ルーカスとの二人でアレンジのほとんどを分け合った本作も確かにそんな要素を見せつつ、まだまだドラマーである彼を前に出した作りに留まっていますね。タイトル・ナンバーはレイ・ゴメスのハードなギターをフィーチャーしたスタンリー・クラークばりの壮大なインスト。そして“Last tango in Paris”や恩師ファラオ・サンダース(本人も参加)の“Thembi”などのカヴァーもそこではしっかりとプレイヤーのコナーズ。売りが難しかったでしょうね、このタイプは。
Norman Connors/this is your life (1978)
 必ずジャケットには自分の姿を出す彼が、そして女性と絡むようになった(笑)。このジャケット・スタイルはこの後も続いていくわけですが、そこには音楽生活をするにも苦労をするような一介のジャズ・ドラマー像とは決別し、優雅で豊かさに溢れたグランド・ミュージック作りを目指す彼の気高さがストレートに表れているようですね。スターシップ・オーケストラに加えてL・リトナー、デヴィッド・T.、ワー・ワー・ワトソン、J・グレイドンらとても豪華なバッキングギター陣も、ここではひたすらN・コナーズ・ワールドの脇役にすぎず。
Norman Connors/take it to the limit (1980)
 ソロ・スタートからのレーベル、ブッダから離れついにアリスタへ移籍。ジャズ・ドラマーとしての表現を極力抑え(と、言うよりは限界を感じた部分が強いと思われるが)本格的にブラック・ミュージック・マスターの道を歩むためのリ・スタートを切ったのがこのアルバム。ゲスト・ヴォーカルの起用に定評がある人ですが、特に“I don't need nobody else”でのアル・ジョンソンには思わずニヤニヤ。おおっとリオン・ウェアも歌っているゾ。毎回カヴァーが楽しみでもあり、特に“black cow”が聴けるとはねぇ。裏ジャケはやっぱり女性と絡んでいるし、やっぱりこの人にはニヤニヤさせられっぱなしですわ。
Norman Connors/MR.C (1981)
 スターシップ・オーケストラを率いたノーマン・コナーズ、と言うよりもひたすらプロデュースに専念し、彼の持つクールなソウル・ワールドをさらに進化させた感のあるアルバム。ほとんどの曲をネイザン・イーストやNduguらLAのセッションマンが担当し、軽快なブラック・ミュージックが次々と展開されて行くが逆に持ち味であった「粘っこさ」は薄れてしまった。そんな中タイトル曲のスターシップ・セッションによるインストがやけに乗れてしまう。いや、AOR好きにはナイトフライトのカバーも嬉しいのですけどね。
Norman Connors/passion (1988)
 女性と絡んでいるようなジャケ写が、いかにもこの人らしいのですが、音の方はそんなにコテコテではなく、結構サッパリとした懐かしのクワイエット・ストームになっていますね。この人もジャズ・ドラマーからR&B、ソウルの世界に傾倒していったミュージシャンですが、ジャケットを見ても想像がつく通りひたすらアダルティーに攻めている所は演歌的でもありますです。
Norman Connors/remember who you are (1993)
 モータウン・ジャズに移籍して、なかなか洗練された音になってきました。クワイエット・ストーム的なブラコンが中心ですが、自らのプレイによるドラマーらしいジャズもあり、全体的にはかなり大人っぽい落ち着いた作りになっています。この手にありがちなディスコ調の曲がないのがいいですね。フィリス・ハイマンアンジェラ・ボフィルといった女性ボーカリストの起用も渋い!
NOVA/vimana (1976)
 ジャズ・ロック黄金期にイタリアから誕生したグループ、NOVAの2nd。ブランドXのロビン・ラムレイをプロデューサーに迎え、その縁からフィル・コリンズ、パーシー・ジョーンズが参加。しかしここで何と言ってもトピックなのがナラダ・マイケル・ウォルデンのプレイヤーとしての参加でしょう。ここでの彼はバリバリのテクニカル・ドラマー。ここまで叩いてくれるのはやはりこの頃ならではって所で、このアルバムでも音の柱となってキメまくっています。この参加がきっかけとなって、ギターのコッラード・ルスティッチが後のナラダ・ファミリーとなりブラック・コンテンポラリーの世界でも活躍してしまう。この熱いイタリアン・ジャズ・ロックからは想像もつかない、何がどうなるかわからないものですね。
NOVA/wings of love (1977)
 そしてこの3rdはN・M・ウォルデンがプロデューサーにまわり、8曲中5曲がヴォーカル・ナンバーでよりポップな作りとなった。ユニゾンを決めまくるジャズ・ロックな部分はやや薄れているように感じるが、特にインストものにはまだまだテンションの高いホットなナンバーもあり、よりフュージョン色が強まったと見るべきか。ナラダの後釜となったリック・パーネルのドラムスもなかなか緩急使い分けた聴かせるドラミングですね。多国籍バンドのボーダー・レスな音世界がより深まり、間口を拡げて幅広いリスナーに訴えかける好盤となりました。
NOVO/novo complete (2003)
 横倉 裕がリーダーシップをとる和製セルメンとも言われた幻のグループが奇跡のCD再発。レコーディングは1972〜1973年にかけての年代ものですが、この頃にこんな本格的なブラジリアン・グルーヴを生み出していたとは。しかも、単なる「真似っこ」ではなく日本語の歌詞を使っているところも気持ちが良いですね。後に発表されたYUTAKAの各アルバムを聴いてみてもポーリン・ウイルソンケヴィン・レトーなどの女性ヴォーカリストをプロデュースしていた経緯からも、このグループが彼の音楽の原点であったことがチラチラッと見えてくるところが面白いです。小西康陽が「これが本当に昔の音源だなんて、とても信じられない」とコメントしている通り当時はマニアックすぎて売れなかった音でしたが今でこそ評価されるべきものなのでしょうね。シングル2枚の売上不振で発売中止となったこのアルバムが今の時代に日の目を見ることになりましたが、そういった熱心な「発掘作業」をしてくれた業界の皆様方にも本当に感謝したいと思います。エレピの使い方いいよ〜。おすすめ!


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