Phil Keaggy/play turu me (1982)
 
 80年代前後で何か良サゲな音楽を探すとなると、CCM系のアルバムからって言うパターンが最近定着しつつあるのですが、クリスチャンでもない自分がそんなんでイイのかと自問自答しつつ、やはりいかにも宗教色の強い曲やゴスペル然としたのは避けたいところではある。それでもCCMに食指を伸ばしてしまうのは、70〜80年代のポップ・ミュージック、それもデジタル・ミュージック化される前の、人の手によるプレイで音を作っていた時代のおいしい部分を、あくまでもクリスチャン・ミュージックらしく品を保ちつつ取り入れ、それがメジャー・レーベルから出される物から数年遅れをとったサウンドだとしてもCCMと言うひとつのカテゴリとして確立していて、安定したクオリティが見込めるからなのです。中にはとんでもなく素晴らしいアルバムがあったりするから、そんな出来の良い作品に出会ったりした時の喜びを、様々な新しい音を探求していた少年時代と同じように感じられる嬉しさ、ワクワク感を期待できる貴重なカテゴリとして重宝しているのですね。

 さてこのフィル・ケギーはそんなCCM系の白人ミュージシャンでエレクトリックとアコースティック・ギター両方を使いこなし、ヴォーカルも自身がとるマルチ・プレイヤー。どちらかと言うとアメリカン・ロックをバックグラウンドとしつつ、ややフュージョン寄りなアレンジを行うと言った、白人AORファンには特にウケの良い音を作る人じゃないかな。それでも持ち味のハードロック的なソロを取るものからアコースティックで清廉なナンバーまで様々なスタイルの曲調を3分前後のコンパクトな長さに纏め、この時代に全12曲もポップてんこ盛りで楽しめる所も嬉しい。そしてついにタイトル曲“play thru me”ではスティーリー・ダンのエッセンスを取り入れてしまったところが最大のニヤニヤ。とにかくこの人はギターの音が綺麗なんだよな。アッツいソロでもバッキングでも濁りの無いクリアなギターを聴かせてくれる。そのセンスの良い曲作りからアレンジメントにばかり重きを置いていそうで、実はしっかりとギタリストのアルバムになっている所がいいですね。アメリカン・ポップ/AORのパクリではありつつも、決してお安くはない、フィル・ケギーと言うミュージシャン像がブレなく伝わってくるかなりレベルの高い良盤。しかし、この頃のCCMアーティストってみんな口ヒゲ生やしているところは気になりますな。流行りだったのでしょうか? (2011/11/23)




01.HAPPY
02.CAREFREE
03.NOBODY'S PLAYGIRL NOW →
04.CHERISH THE MOMENT
05.SHE CAME TO PLAY
06.PAPA SONG
07.THE WALL
08.MAKE A CHANGE
09.TRAIN TO GLORY →
10.PLAY THRU ME →
11.HIS MASTER'S VOICE
12.MORNING LIGHT



Produced by Phil Keaggy & Bob Cotton
Arranged by Phil Keaggy

Phil Keaggy (g,b,vo)

Jim DeLong (ds)
Hadley Hockensmith (b)-#01,#03
Smitty Price (key)
Michael Fisher (perc)






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