George Duke/master of the game (1979)
 
 久しぶりの更新となります。昨年の大きな出来事、フェバリット・ミュージシャンであるジョージ・デュークが亡くなって半年が過ぎ、彼のEPIC時代の全アルバムが国内盤としてリマスター、紙ジャケット版で発売されました。こんなリイシュー記念はしたくなかったのですが、今回は初の国内盤となり、自分としても思い出深いこのアルバムを紹介したいと思います。

 すでにブログでも何度も話をしている事ですが、自分がこのジョージ・デュークと言う音楽家を知ったのは今回ご紹介するアルバム「master of the game」でした。実のところはFMラジオで耳にしたわけで、自分が店のレコード棚を掘って見つけたわけではありません。その頃は自分はまだ中学2年生、レコ掘りを趣味にできるほどの小遣いをもらっていたわけではありませんでしたから、もっぱら音楽収集は無料で情報を仕入れる事のできるFMに頼っていたわけです。同じ世代の方々ならあーはいはいと頷いていただける事でしょう。

 それは、忘れもしないFM東京の深夜番組「アスペクト・イン・クロスオーバー」でした。クロスオーバー/フュージョン系のアルバムを一枚丸ごと流してしまう、しかもレコード片面をノンストップで、A面/B面を2部構成ですべて聞かせてしまうと言う、今考えると恐ろしくも素晴らしい番組でした。この番組の凄い所は業界や聴衆に媚びず、送り手側がとてもマニアックに番組を作っている所でしたね。だからこそ、その頃はそれほど知名度も人気もたいしてなかったジョージ・デュークの、しかも日本国内盤も企画・発売されることのなかったこの「master of the game」を、まだ義務教育を受けていたような子供でも耳にする事ができたのですから自分としてはこの番組にはただただ感謝しかありません。いや、ただアルバムを一枚全部流して、司会者が合間に好き勝手にコメントするだけですから、逆に考えればとてもお気楽な番組作りをしていただけとも取れるのですけどね。

 とにかく、最初の“look what you find”のイントロに鳥肌が立ちましたね。この曲から次に“every little step I take”へ続く流れで完璧にやられてしまいました。これが、ジョージ・デュークなるミュージシャンを探求していくきっかけとなった初体験だったわけです。この音体験が、彼にのめり込むすべてだった、と言っても良いくらいの衝撃でした。その当時としてはですね。

 これは自分が勝手に名付けているファンキー・デューク3部作の3番目にあたりますが、「don't let go」、「folllow the rainbow」と共通しているのはファンク&ソウルを核としてヴォーカル/コーラスを重視した音作りになっている事、そしてポップである事に徹底している、といったところですが、それでもそれぞれ少しずつニュアンスが変わって来ている部分に気付きます。今こうやって冷静に聴いてみると、これまでのファンク&ソウルなアルバム作りをさらに発展させているようであり、それがどうもオーバー・プロデュースされてしまったような過渡期的制作であった印象も受けるのです。EW&Fへのリスペクトを究極的に示したアルバム冒頭の前述2曲や対照的に黒々しさ爆発のファンク“games”、Lynn Davisのキュートなヴォーカルをフィーチャーしたディスコ・ビート“I want you for myself”など、それぞれ1曲1曲の単体ではインストルメンツの使い方ひとつ取っても高いレヴェルの楽曲が並ぶのですが、アルバムを通した流れのバラつきはMPS時代に逆戻りをしてしまった様。アルバム後半、ポップ一辺倒でヒネりの薄い“I love you more”から必ずラテン調の1曲を挟むお約束だった“dog-man”がひたすら陽気過ぎる無理矢理感、そして彼の好きだったP-ファンクをモチーフとしたフュージョン組曲でシメる構成などは、ややもすると聴く者を翻弄させてしまうだけで終わってしまう危険が孕み、一般的にはソウル好きにはもちろんの事、ジャズ・フュージョンのファンにも彼の音楽姿勢を容認し辛くさせているのではないかと。アルバムとしての纏まりが強かったのは統一感のあるファンキーさで「don't let go」、さらにポップに昇華させた「follow the rainbow」に軍配が上がり、そういった点からもこの「master of the game」の日本国内盤が発売されなかった理由が見えるわけですね。しかし、様々な音楽を全般的に吸収し、それを自己の音に組み込み進展させる能力の高さはここでも素晴らしく、それが当時としてハイ・レヴェルに発揮されていたのがこのアルバムだった事は確か。彼を知る初体験の音としてこれを耳にできたのは大変幸せな事だったと思う。賛否両論あるアルバムだろうことはわかりますが、自分としてはまさにこれこそがジョージ・デュークだったのです。(2014/3/15)



01.LOOK WHAT YOU FIND
02.EVERY LITTLE STEP I TAKE
03.GAMES
04.I WANT YOU FOR MYSELF
05.IN THE DISTANCE
06.I LOVE YOU MORE
07.DOG-MAN
08.EVERYBODY'S TALKIN'
09.PART,1 THE ALIEN CHALLNGES THE STICK
10.PART,2 THE ALIEN SUCCUMBS TO THE MACHO INTERGALACTIC
FUNKATIVITY OF THE FUNKBLASTERS


Produced by George Duke for George Duke Enterprises


George Duke (vo,key,syth)

Byron Miller (b)
Ricky Lawson (ds)
David Myles (g)
Sheila Escovedo (perc,ds)
Napoleon Brock (vo)
Lynn Davis (vo)
Josie James (vo)
Jerry Hey (tp,fl-h)
Roland Bautista (g)
Gary Herbig (as,ts,fl,piccolo)
Bill Reichenbach (tb,b-tb)
Fred Washington (b)
Ray Obiedo (g)
Gary Grant (tp)





George Duke 追悼特集(ブログにて掲載中)

George Duke(mars Groovy House)

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