新旧問わず、最近ハマっているアルバムを紹介します。






James Vincent/mystery of love (2002)
 
 自身のレーベルからItsAboutMusicに移ったものの、いまだにインディーのままで活動するジェームス・ヴィンセント。このアルバムを聴いてその理由がわかったような気がしました。以前ここでも紹介したファースト・ソロ“culmination”をはじめ70年代の数作が次々と日本国内盤として昨年リイシューされていたようで、なるほど本国よりも日本でウケるのもうなずけるメロディーラインを持ったアーティストなのです。それならこのアルバムや2001年の“pure satisfaction”なども国内盤で売っても良いのでは?と言う出来なのですが、メジャー・レーベルから発売された70年代の諸作はEW&Fのホワイト・ファミリーやハーヴィー・メイソン、ピーター・セテラ、シーウィンドらバック・サポートの話題性などもあり、対してこちらはそういった付加価値がなくJ・ヴィンセントの魅力のみで勝負するしかない。とりあえずリイシュー盤の売れ行きにまかせるしかないでしょうね(まあ厳しいでしょうけど)。

 ギタリストとしては元々アステカに居たくらいですからカテゴリを越えた音楽性の豊かさを持つ人ですが、こちらとしてはなんと言っても本人の渋いヴォーカルをフィーチャーしたアダルト・コンテンポラリー路線が彼の真骨頂と勝手に思い込ませてもらってますw。 このアルバムはインストとヴォーカルものが半々の構成ではありますが、ヴォーカル・ナンバーは一回聴けばすぐ歌えてしまうタイトル曲の“mystery of love”をはじめどれもどこか懐かしいジャパニーズ・AOR的な雰囲気があり、逆に今どきこんな音楽を作る人がいたのか、とヘンな心配をしてしまうほど今の欧米音楽時流からの外れっぷりは、個人的に「大変ありがたい存在」とは思いつつ、やはりインディーの世界でしか表現できないのかな、と。

 インストものもアルバム冒頭のサイケデリック・フュージョンやアコースティック・ギターによるメランコリックなナンバーなどバラエティに富んでいて飽きさせない内容。しかし、ギタリストとして突出した個性やテクニックがあるわけではなく、器用なんだけどその一枚物足りない所がこの人のポジションなんでしょうね。あともうひとつ、ドラムもベースもプレイヤーによる録音なのですが、キッチリとやりすぎていてコンピューター・ミュージックのように聴こえてしまうのが残念。もうすこし遊んでくれてもよかったかも。

 まぁ些細な弱点はありますが、とにかく2000年代に入ってこのような音に出会えるのは嬉しい限り。往年のAOR時代に育てられた日本人以外にこのような音楽を堂々と作ってしまう人がいるなんて、ねぇ。インディーでも何でもいいじゃないですか。良いものは良いのだ。それが本人にとって純粋に表現したい音であるならば、聴き手であるこちらも純粋に応援したいアーティストである訳です。(09/06/16)



1. DEAR JOHN (Adapted from John Coltrane's Mr.Sun)
2. ETERNALLY
3. I FOUND YOU, BRIGITTE
4. MEDITERRANEAN NIGHTS
5. MOROCCO
6. ONE TRUE LOVE
7. CAT DANCER
8. THE MYSTERY OF LOVE [m3u]
9. 5 REVISITED
10. YOU AND I



Produced by James Vincent

All music written by James Vincent
All lyrics by James and Brigitte Vincent (except“I found you”by James)

James Vincent (g,vo,key)
Ron Diehl (key)
Philipe Felnandez (b)
Allen Roglud (ds,perc)


Its About Music.com (James Vincent)

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