OPA/goldenwings (1976)
 
 ウルグアイ出身のウーゴ・ファットルーソとホルヘ・ファットルーソ兄弟がアメリカで吹き込んだラテン・ジャズ・ファンクアルバム。レーベルはFantasy傘下のmilestoneだから大変な名門ですね。当然音の方も一級品で、どちらかと言うとラテン風味は抑え気味に、ウーゴのアグレッシヴな鍵盤を中心にした軽快なジャズ・フュージョンとなっている。本場のプレイヤーが作る音ながら、かなりアメリカナイズされた逆輸入(?)的な雰囲気があり、確かにアメリカや日本のミュージシャンがラテン「風」に作るモノとは明確に違う「本物」感はあるのだけども、そんな民族音楽の部分をあまり強く打ち出していないところがイイ。音の基本はあくまでもジャズ・フュージョンなのだ。プロデュースはアイアート・モレイラで、南米から渡ってアメリカを音楽活動の拠点にしたところは先輩にあたるパーカッショニストだ。この兄弟は元々アイアートのソロ数作にサポートしており、このアルバムはその縁、もしくはクロスオーバー/フュージョンへの注目とセールス的にも人気が上昇していた70年代後半期において新人アーティストの発掘を進めていた大手レーベルの思惑との中、強いアイアートの推しがあって制作されたと推測されます。

 さて、そんなウルグアイアン・フュージョンの内容としては1曲目にいきなりアルバムタイトル曲“goldenwings”で始まります。ファンキーなイントロに乗って弾き始めるウーゴのエレピを聴いて思わずジョージ・デュークが思い浮かんだ。ウーゴの演奏もなかなかのテクニシャンで、このフィーリングは同時期のアイアートと組んでいたデュークと瓜二つの音なのだ。なるほど完全にデュークのセンスのみから生まれた曲だと思っていたMPS数作からのラテン・フュージョンは、実は陰ながらアイアートがアドバイザーになっていた部分が大きかったと言うわけかと。

 話をこのアルバム本題に戻すと、2曲目“paper buttrflies”では一転、母国語らしきヴォーカルも披露し、南米系が一番に強く出た叙情的なナンバーとなっているが、この曲にしても他の曲にしてもアレンジの起伏のつけ方が巧いと言うか、決して一辺倒の単調な流れにしないところは聴いていてとても刺激的なアルバムだ。そしてこの“paper butterflies”と共にリューベン・ラダの曲となる“african bird”ではその名の通りアフリカ民族的コーラスからウーゴの鍵盤とサポートするヘルメート・パスコアールのフルートがバトルするナンバーとなっており、南米系ミュージシャンがアメリカ向けにアフリカ風味のインストを作ってしまうと言う構図がなんともユニーク。これらリューベン・ラダの2曲を除き他はファットルーソ兄弟のオリジナル曲で占められていますが、彼らが作り出す音はアイアート自身も参加するラテン・パーカッションを全編的に効かしたどれも疾走感やグルーヴ感の高いものばかりで、また良い意味で洗練していたアメリカ音楽へのリスペクトも感じられる。ともかくアレンジに関しては大変練りに練って、手の込んだ作りになっていますね。静かな曲から躍動的な曲まで、どれもモタれずに一枚をあっと言う間に聴かせてくれる中身の濃さは素晴らしいと思います。ちなみにウーゴはこのOPAだけで終わらずにミルトン・ナシメントなど他の南米系アーティストやジャコ・パストリアスにもサポートしており、やはり相当な音楽的力量の持ち主であったと、このアルバム一枚だけでもその程が伺えます。初聴ながらどこか既聴感があったのは、前述のG・デュークだけではなくミキシング・エンジニアがKerry McNabbだったこともあった。この人もフランク・ザッパとの仕事からデューク、そしてアイアートとミキシングを担当してきたわけで、そんなところも全体の音に隠れていたのですね。(2013/1/23)



01.GOLDENWINGS
02.PAPER BUTTERFLIES (MUY LEJOS TE VAS)
03.TOTEM
04.AFRICAN BIRD
05.CORRE NINA
06.PIECES:TOMBO/LA ESCULA/TOMBO/THE LAST GOODBYE
07.GROOVE


Produced by Airto


Hugo Fattoruso (key,vo)
Jorge Fattoruso (ds,vo)

Ringo Thielmann (b,vo)


guest artists:

Hermeto Pascoal (fl,perc)
David Amaro (g)
Airto (congas,perc)






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