新旧問わず、最近ハマっているアルバムを紹介します。






Benard Ighner/little dreamer (1978)
 
 クインシー・ジョーンズのアルバム「BODY HEAT」。この中で楽曲構成における一番のポイントとなったのは、言うまでも無くリオン・ウェアの“If I Ever Lose This Heaven”と、今回ご紹介するベナード・アイグナーの“Everything Must Change”だった。前者はアルバム最後に配置され、後者は3曲目であったが、次の曲を挿んでrepriseを置くほど、このアルバムの中で大きな「役割」を持っていた。この曲は数多くのアーティストにカヴァーされるほどの名曲となり、同じ年にはマリーナ・ショウの名作「WHO IS THIS BITCH,ANYWAY?」をプロデュースし、数曲を提供していたほどの人なのだが、意外にアーティストとしてその後は目立った活動をしていない。そんな彼が実は日本企画で一枚のアルバムを残していた。それがこの「LITTLE DREAMER」。
 針を落とすといきなりあの“Everything Must Change”の深遠な世界を彷彿とさせる“Life Goes On”に始まり、低音ヴォーカルでとことんダークに攻めるアルバムと思いきや、続く“Ascension”〜“Sing to me”、そしてタイトル・ナンバーの“Little Dreamer”は特に明るく弾むリズムに乗って軽快に歌い上げる、その重厚なイメージを覆す展開を聴かせてくれます。1978年ながら垢抜けていて親しみやすいのは、ほぼ全面的に叩いた村上“ポンタ”秀一、デビュー間もない頃ながらも深みのある音を出す渡辺香津美のギターなど、ジャパニーズ・セッションによるものでしょうか。ドラムスとギターは日本のプレイヤーに任す、と言うのは本人が希望していたらしいのですが、日本人らしい明快で丁寧なバック・サポートは確かにピッタリはまっています。そしてなんとこのアルバムの中で深町純が2曲弾いていて、“It's The Same Old Story”でのピアノは「らしい」タッチが嬉しくなってしまいました。
 ラストはやはり“Everything Must Change”のセルフカヴァーで渋くシメ。つまりこれはマリーナ・ショウの“Davy”もあれば“Rose Marie”もあるように陰と陽のバランスをとり、ストリングスやホーンも使った豊かなアレンジの中にベナード・アイグナーと言う才能を遺憾なく表現してくれた質の高いヴォーカル・アルバムと言えるでしょう。ベナード・アイグナーとこのアルバム制作にまつわる話は、プロデューサーも務めた宮住俊介氏のブログに詳しく書かれていますのでそちらをご覧下さい。日米を行き来して苦労された話が楽しく書かれています。
 わずか数年の間だけ表舞台で活動し、さっさと引っ込んでしまったようですが、それは莫大な印税収入を得ただけではなく、創る音楽に対して自分と言うものを頑固に持っていたからだったのでしょうね。(今でも地元サンディエゴで音楽を続けているそうです) それが良いか悪いかは別にして、その才人ぶりはこのアルバムからも滲み出ているのです。再発に関しては壁の高い、かのアルファ・レコードと言う事で、おそらくCD化は難しいのでしょうが、その話は以前に出ていたようですね。立ち消えになってしまったようで残念。お皿を回しつつ当時の雰囲気に浸るのも悪くはないのですが。。。(2008/4/12)


SIDE 1

01.LIFE GOES ON
02.ASCENSION
03.SING TO ME
04.LITTLE DREAMER

SIDE 2

01.AND IT GOES ROUND & ROUND
02.Medley: IT'S NOT SO STRANGE〜IT AIN'T STRANGE
03.IT'S THE SAME OLD STORY
04.EVERYTHING MUST CHANGE


Produced by Shun Miyazumi & Benard Ighner

Benard Ighner (vo,key,perc,a-g)

Keith Ighner(b)
Shuichi “Ponta”Murakami (ds)
James Gadson (ds)
Kazumi Watanabe (g)
Edward Arkin (g)
Jun Fukamachi (p,syth)
Motoya Hamaguchi (perc)
Peter Christlieb (ts)
Richard “Blue”Mitchell (tp)

and others...




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