Al Jarreau/my old friend 〜celebrating George Duke (2014)
 

 アル・ジャロウ、この人しか居なかっただろうな、と納得した。没後1年も経たずに世に出されることになったジョージ・デュークのトリビュート・アルバムである。G・デュークと言う音楽家をトリビュートする場合、どのような形にするのかが難しい。彼の音楽は本当に巾が広く、また、自身の活動のみならず音楽界全体にも大きな貢献をして来たからだ。であれば様々な形でのトリビュートが可能なのだが、ピアノやキーボーディストとしての彼をクローズアップさせたインストと言う形では、本人の個性が強いために聴く者を満足させるものが作り難い事は容易に推測できる。デュークのプレイやアレンジを超える事は難しいのだ。それなら、稀代のメロディ・メイカーでもあったデュークとしてトリビュート・アルバムを企画したらどうか? ことヴォーカルに関してはそれぞれの持ち味をそのまま出せば良いし、もちろんデュークより巧いヴォーカリストはいくらでもいる。本人へのリスペクトを損なわずに、原曲とはまた違った魅力を引き出しやすいのもヴォーカル・ナンバーの良い所だ。

 では、誰が?これも難しい。レコード会社が企画しさまざまな歌手に1曲ずつ歌わせて寄せ集めたなら簡単(でもないが企画としては簡単)だが、思い入れや接点の無い歌手に出てこられても興ざめと言うもの。ここまでの音楽家ならそれなりの人が歌ってくれなければならないわけだ。そんな自分の個人的な思いを叶えてくれたかのように、まだあの悲しい知らせから1年も経たない間にアル・ジャロウが立ち上がってくれた。まるで、いてもたってもいられなかったように。

 アル・ジャロウとジョージ・デュークは約50年来の旧友だった。それこそ二人がプロデビュー前から音楽を通じて知り合っていた仲だ。その後、それぞれは活動を別にするが、1979年にフローラ・プリンの「carry on」をプロデュースした際、デュークはデュエット・ヴォーカリストとしてアルを呼んでいたり、そのアルのアルバム「this time」からレコーディングに参加し、ついには「heart's horizon」のプロデュースまで行うようになる。(共同プロデューサーのジェイ・グレイドンも実はデュークとは60年代からの旧友でもある)近年、1965年の記録的なレコーディングながらアル・ジャロウがジョージ・デュークのピアノ・トリオをバックに歌うアルバムが発売されると、また二人でライヴ・ツアーを行うようになり、2012年には日本でもビルボード・ライヴ東京で公演を行っている。
(→http://groovyhouse.blog20.fc2.com/blog-entry-157.html)
 つまりは、それほどの仲だ。キャリアとしても、ヴォーカルの技量でも、一番大切なジョージ・デュークとの間柄に関しても、ヴォーカル曲においてのトリビュート・アルバムを仕切るのはこの人を置いて他には無い。このあまりにも速い決断にデュークも天から喜んでいるはずだ。

 アルバムは「breakin'away」に収録されたペイジス作“my old friend”のセルフ・カバーで幕を開ける。この曲だけはデューク作ではないが、デュークとの思いを捧げる上で象徴的なナンバーと成り得るものだ。そして、2曲目から全てがトリビュート・ナンバーとなる。名ミディアム“someday”、ヴォーカルの代表曲“sweet baby”、朋友スタンリー・クラークのアコースティック・ベースが印象的な“Brazilian love affair”、ラストのDr.Johnをフィーチャーした“you touch my brain”など、ファンクやディスコでの人気曲をあえて外し、今の彼(ら)に相応しい大人の選曲となっているこの重厚感がうれしい。これら一通りを耳にして、あらためてジョージ・デュークと言う人はなんと素敵なメロディー・センスを持っていたのだろうかと思い知らされてしまう。さらになんと言ってもインストナンバーにうまく詩をつけて歌ってしまう、アル・ジャロウお得意の芸当がここでもマイルス・デイヴィスの“backyard ritual”で披露される。これはご存知「TUTU」で唯一ジョージ・デュークのプロデュース曲。当時のレコーディング・メンバー、マーカス・ミラーも参加し華を添えている。ただ単なるカバー的なトリビュートではなく、このようなアル・ジャロウでなければ作れない内容となっているところが大変素晴らしいアルバムだ。天国のジョージ・デュークと再び心のタッグを組んで、彼自身が大きな思い入れを持って制作されている事が十分に伝わってくる。是非聴いていただきたい。(2014/7/19)


01.MY OLD FRIEND
02.SOMEDAY
03.CHURCHYHEART (BACKYARD RITUAL)
04.SOMEBOSSA (SUMMER BREEZIN')
05.SWEET BABY
06.EVERY REASON TO SMILE/WINGS OF LOVE
07.NO RHYME, NO REASON
08.BRING ME JOY
09.BRAZILIAN LOVE AFFAIR/UP FROM THE SEA
 IT AROSE AND ATE RIO IN ONE SWIFT BITE
10.YOU TOUCH MY BRAIN


Produced by John Burk, Stanley Clarke, Marcus Miller and Boney James


Al Jarreau (vo)

George Duke (#8.key)
Gerald Albright (sax)
Patrice Rushen (key,p)
Paul Jackson Jr. (g)
Stanley Clarke (b)
John Robinson(ds)
John Beasley (key)
JUBU (g)
Marcus Miller (b,b-clarinet,prog)
Mike Cottone (tp)
Gregg Phillinganes (key)
Lenny Castro (perc)
Brandon Coleman (key)
Rob Bacon (g)
Boney James (ts,prog)
Alex Al (b)
Dianne Reeves (vo)
Lalah Hathaway (vo)
Jeffrey Osborne (vo)
Kelly Price (vo)
Dr.John (vo)

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