80年代に入ると、どちらかと言えばそれまでの女性シンガーは市場の変化からロック調で攻撃的なアーティスト・スタイルへ転換していく中、それに反したいかにも「女性らしい」歌で登場したのがこのエイミー・ホーランド。POPフィールドにおいての女性ヴォーカルの魅力を最大限に引き出したのは後にダンナとなるマイケル・マクドナルドとパトリック・ヘンダーソン。特にM・マクドナルドの音への影響はやはり大きく、ポール・ブリスの“how do I survive”で始まるなんてのはこの3人の親密な関係をズバリ現していますね。ストリングス・アレンジはニック・デカロにミキシングはアル・シュミットと、裏方陣もプレイヤーと共に豪華。丁寧に時間をかけて作られただけはある聴き応えの名盤。
魅力的な音楽の溢れる70年代後半に発表されていたこのAURA、当時ハワイでも盛り上がっていたSEAWINDやLEMURIAに代表されるホーン・セクションを駆使したメロウ・ファンクバンドの流れを汲んだものでありました。一曲目のダンサブルなファンク・チューンはどちらかと言うと幕開けの景気付け的なようなもので、このバンドの良さは2曲目からの女性ヴォーカルをフィーチャーしたフリー・ソウル展開ではないでしょうか。メロウなナンバーをはさみつつの「magic
lover」、「no beginning, no end」、「short and sweet」などは怒涛のホーン・ファンク。そしてボーナストラックとして収録された「the
feeling's right」は極上のAORなど音楽性豊かな構成。しかしながらこれは本土上陸を狙った知名度の向上や売上を狙ったものではなくメンバー11人中8人を占めるメンドーザ・ファミリーの活動記録を単に記録しておきたかったがために作られたものとの事。まあ、詳しくはライナーに書いてありますので興味がある方だけが読めばよろしいのですが、そんな純粋な思いから来る音楽に留めておくにはもったいない程、センスの塊のようなアルバム、もっと良い音で聴きたかったなあ。このアナログな音質も妙に味があることはあるのですが。
★★★ 嬉しいなあ
Bill Cantos/who are you (1995)
AORが一番AORしていた、一番愛され聴き継がれていたあの頃のサウンドを忠実に受け継いだ感のある好作品。90年代半ばにしてこの懐かしさは心地良いです。絶頂期の代表アーティストが次々と別路線へ移行する中、良くぞ出てきてくれました。スティーリー・ダン的な一曲目や、マリリン・スコットがボビー・コールドウェルとのデュエットでイエロージャケッツの作品をカヴァーし人気を博した「daddy's gonna miss you (show me your devotion)」を取り上げるなど、王道を行くベーシックAORを求めていた人には是非おすすめですね。
さてそんな露骨な「そっくり」ミュージックは当時まったくセールスにならず、これではイカンと奮起し作られた2nd。特定のアーティストからの影響に偏らず、ポール・ブリスのPOP感覚がより開花されたと言えそうなカラフルな音色を楽しめるアルバム。エイミー・ホーランドのカヴァーでヒットした“how
do I survive?”は彼女が歌うのもニヤニヤなM・マクドナルドライクの素敵なナンバー。清廉なバラード“someone
else's eyes”やコーラスがズバリはまった“Chicago”など、より音の巾を広げつつマーケットを意識した作りはそのまんまスティーリー・ダンであった1stと対照的すぎてしまったところが逆にマイナスであったのかも。どちらにしても追随型アーティストの典型ですね。1st、2nd共に音としては素晴らしいのが惜しいのですが。
ニューヨーカーである彼のメロディーとロスのサウンド・クリエイターとの融合により作られたアメリカン・ポップの良い雰囲気を感じさせる好盤。ファーストよりもサウンド面でパワーアップといったところ。Leland
Sklar(b)やEd Greene(ds)なんて懐かしい名前も見られますが、ルーサー・ヴァンドロスがアレンジ&コーラスで参加した「s'good enuf」(keyはD・フォスター)やドナ・サマーと共作によるバラード「all through the night」なんて名曲ですね。とってもアメリカンですがのほほんとしてていいなぁ。
ソングライターとして様々なアーティストに曲を提供しているだけあり、なかなか極上の内容となっているアルバムです。一曲目の“got to find love”は一聴かなりベタな歌謡ロック的イントロで「うわー」と思いましたが良く聴けば日本のそれとはやっぱり一味違う。その後の展開からもさすが下積みの長い人だけあってレベルの高い楽曲ばかり。まずこの人の特徴はファルセット。それは自分がゲイでありその不安や苦悩を表現するために用いているそうですが、とにかく五十嵐正氏によるライナーを読んだほうが良いですねそれは。この人を知る上で大変内容の濃いライナーですから。デヴィット・ベノワが全面参加も盟友アーノルド・マッカラーと共通するところですがここではサイドメン的役割。「黒人音楽に恋した白人の若者についてのコンセプトアルバム(五十嵐氏)」となっているホワイト・ソウルの良品。
最近の新しい音も多少は聴いていますが、これにはやっぱり唸らされてしまったなぁ。正直、スティーリー・ダンとしての復活作「two against nature」を聴いて自分の中でいくばくかの納得いかない部分があったり、はたまた恥ずかしながら近年の「再結成ブーム」にまで気が及んでしまった私ではありました。しかしドナルド・フェイゲンのソロ2作はまた別の感覚で聴いていた私がS・ダン最新の「everything
must go」をすっ飛ばして何気なく購入したこのソロ新作、あらためて素晴らしい。まず率直な感想としては音が丸くなった印象。前作ではかなり激しかったヒネクレ展開が抑えられて、耳にスッと入ってくる素直なメロディーになりました。それでいて細かく計算された無駄のないアレンジは変わらずさすがとしか言いようがなく、一聴すればこの人と気付く独特の音は今まで通り。さらに我々に訴えかけてくるパワーが増したように感じるのは私だけでしょうか? またフレディ・ワシントンの起用は大正解でしたね。この人は一音一音の粒が確りとしていてD・フェイゲンのようなシンプルかつ凝ったアレンジにピッタリはまります。
若者の視点で描いた「ナイトフライ」、中年期での視点が「KAMAKIRIAD」、そして終焉について語った本作で三部作として完結との事。まあそれはライナーでもゆっくり読んでいただいてまずは聴きましょう。終焉(死)がコンセプトと言いつつも本人曰く葬式で流れるような作品ではなく、それどころか彼一流のユーモアたっぷりに綴られた音と詞の世界が待っていますヨ。●●ラボの新作にしばらくハマッていたりしてましたが、そんな私の頬をパンパンと平手打ちしてくれたようなアルバム。失礼ながら(笑)。
クロスオーバーな曲作り担当(?)であったB・ホランドが抜け、前作でゲスト参加に留まっていた英セッション・ギタリストの名手ロバート・アーワイが正式加入することに。結局ボビー・テンチ、マックス・ミドルトン、クライヴ・チャーマンらの第二期JBGからの3人に、名セッションメン二人がサポートした形でこのグループは歴史を閉じます。それまでの攻撃的でもあったギター・サウンドにR&Bを下地としたファンキー・ロックが根本であったこのグループのスタイルも、ジャジーでソフィスティケイトされた音色のR・アーワイのギターにより雰囲気が一変。“she
is my lady”や“losing you”においてはAORとしての1曲として紹介できてしまうほど洗練されてしまうのでした。幕開けとなる“got
my ‘led boots’on”はジェフ・ベックのあの曲とは対照的なホーンも入るファンキー・ポップで、いきなり体を揺らしてしまうほど。ソウル/ロックからクロスオーバー、AORと位置づけられる音を好まれる方にはオススメできます、が、この進化が逆に「ハミングバード」と言うバンドの存在価値を薄めてしまったのは事実でしょうね。私は好きなんですけど(笑)。
★★★ ジャケ引きも
IMPERIALS/stand by the power (1982)
CCMの大御所グループの82年度作品。ジェフ・ポーカロとスティーヴ・ルカサーが参加している事で有名な盤ですね。メンバー4人揃って笑っているジャケは、一人一人の外見からもいかにもCCM、と言った清らかな雰囲気がありますが内容はなかなかの優等生AOR。それぞれハズレの無い曲が並びありがたい。しかしながらその声質からは、ルカサーのギターが効いたようなロック調のものよりはゆったり聴かせるメロウ系のほうが合っていると感じますね。ブルース・ヒバード作の“under
his reign”、ジェームズ・ニュートン・ハワード作の“all for the asking”あたりはやはりGOOD!
クインシー・ジョーンズのアルバムで抜擢され話題になった彼がついにというかやはり同プロデュースにより発表された記念すべきファースト・ソロ・アルバム。マイケル・マクドナルドと共演したあの「YAH MO B THERE」が収録された作品です。とにかくクインシーが手がけた気合の入った一発目であり、バック・ミュージシャンの豪華さはそのまんま「愛のコリーダ」といっても良いでしょう。アップにしろスローにしろ楽曲の質が良く安心して聴ける一枚となっています。うーん。イイ声してますね〜。
ソロ2作目となる本作は、なんと日本のみのリリース。それも当初からその意図で製作されたものではなく元々は本国での発売を予定していながら、それがお蔵入りしてしまったと言うことです。確かにひとつひとつの楽曲はそれぞれしっかりと作られていて、1stよりもポップでリスナーの間口を広げた親しみやすさがあり、これが本国リリースなしとは寂しい。しかし、Mike
Piccirillo & Gary Goetzmanのコンビ作によるナンバーが大半を占める内容は、1曲単位では良くはできているのですが、すべて「〜風の曲」、「どこかで聴いたことがあるフレーズ」等がつきまとうものばかりで個性足らず。やはりそんな中でもJ・ヴァレンティ本人作の数曲が光るなぁ。80年代初頭当時の音、良いとこどりみたいなズルい(笑)アルバムですが、楽しめます。