[A〜D]


★★★ たっぷりです
Abraham Laboriel/dear friends (1993)
 コンテンポラリー・ミュージック界で80年代あたりからのセッション・ベースマンとしてまず挙げられるのがこの人ですが、これはそんな彼が・やっと・出したファースト・リーダーアルバム。プロデュースは盟友グレッグ・マティソン。アルバムタイトルからもうかがえるようにそれまで築きあげた人脈の結晶と言える豪華なサポート陣とともに、フィリップ・ベイリーアル・ジャロウ(エイブラハム本人のvoもナカナカ)のヴォーカルナンバーを含む、サービス精神に満ちたPOPな楽曲の数々。そんな中、しっかりと彼の太いグルーヴを感じ取ることができるのもやはりベースマンのアルバム。まさに満を持した感のある内容ですね。

★★★ ポップAIRTO
Airto/touching you... touching me (1979)
 フローラ・プリムの「everyday, everynight」同様、Bob Monacoとの共同プロデュースでアメリカン・ポップマーケットを狙った本作。ここでは全10曲中5曲をマルコス・ヴァーリがアイアートと共同で行い、ブラジリアン・ミュージックをより洗練されたスタイルで表現することを考えた作りになっています。まったくアイアート的ではないアルフォンソ・ジョンソンが書いたミディアム・ナンバーの7曲目が場違いすぎて逆に面白かったりしますが、全体としてもアイアートのアルバムとしてはかなり邪道系異色作と言えるのでは。しかし、私のwebで紹介するにはまさにピッタンコ。

★★★ やっちゃいます
Al Di Meola/elegant gypsy (1977)
 速弾きを持ち味とするクロスオーヴァーギタリスト、アル・ディメオラのスパニッシュ・ミュージックを強く意識したソロ2作目。ジャケットもそれを表していますが肝心の中身は加えてソロ・テクニックにグイグイ押されてしまう痛快さ。サンタナを彷彿とさせる“midnight tango”のような曲もありますがここでのハイライトは何と言ってもパコ・デ・ルシアとのアコースティック・デュオ、“地中海の舞踏”。二人が左右に分かれパコの余裕の伴奏にエスコートされAディメオラがここでもソロを弾きまくる(パコのソロもありますが)という展開はただひたすら情熱的でメランコリック。彼の地位を決定づけた一枚。

★★★ スパニッシュだ
Al Di Meola/casino (1978)
 スティーヴ・ガッドとアンソニー・ジャクソンのリズム隊を固定メンバーとして前作以上にスパニッシュ・ハード・フュージョン色を強めた3作目。“黒い瞳のタンゴ”がお気に入りですがこの人の“tango”がつく曲はみんな素晴らしい(笑)。アルバム全体としてベースとなる曲調が親しみやすくなっていつつ、もちろん本人のパワーは少しもダウンしていないところはこの時期乗りに乗っていたことがわかります。ギタリストとして常に人気上位だったのもうなづける実力。我が道を行く音楽家としての姿勢からも同時期流行ったギタリストの中では一番評価したい人ですね。今となってはですが。若干24歳の時に作られた脱帽的作品。

★★ 音が多彩になり
Al Di Meola/splendido hotel (1980)
 自分の音楽を「民俗音楽の延長であり、ロックやジャズのエッセンスを用いて表現している」と話したとされる彼の4作目。(ジャケはイタリアで撮影されていますね)人気も高まりさらに期待された本作はついにRTF以来の御大チック・コリアも参加することになるわけです。当時ではLP2枚組の大作で1曲も長く片面2〜3曲と言う構成でした。新進プレイヤーであったフィリップ・セスのシンセが際立つ“alien chase on arabian desert”で幕開け(今回はいきなりアラビアでした)。録音も良くなり、25年以上前のものとは思えない音になりました。彼自身が歌う初のヴォーカルナンバー“I can tell”のPOPさはご愛嬌といったところでしょうか?冗談でしょ?と笑っちゃうほどの立派なAORは、同時期この路線に走るフュージョン・ギタリストへの「どう?俺だってこんなのやろうと思えば簡単にできるんだよ」といった挑戦状だったのでしょうか。(ドラムを自分で担当しているところからもうかがえますね。こんな曲を本職にやらせたら申し訳ない、と)でも、決してその方向には行くつもりもなく、エキゾチックが売りのディメオラ・サウンドがさらにコンテンポラリーになった、お腹一杯大満足作品。

★★ むむ、時代が
Al Di Meola/electric randezvous (1982)
 パコ・デ・ルシアとのギターデュオ曲などもあり、テクニック的にも聴きごたえがあることはあるのですが、いかんせんフュージョンブーム真っ最中だったころの作品でもあり、いかにも万人受け狙い的な安易なアレンジが少し安っぽく感じられるかな?前作までを聴いた後では過渡期的に感じてしまいます。ただ、もうヴォーカルナンバーを入れたりする無意味な遊びをしないところはちゃんとわかっているようで良い。アンソニー・ジャクソンのフランジャーを効かせたベースが懐かしいですね。ドラムはスティーヴ・ガッド、キーボードはヤン・ハマー、フィリップ・セスらいつものメンバーが参加。

★★★  おもしろい
Alphonso Johnson/moonshodows (1976)
 若きアルフォンソ・ジョンソンの初リーダー作。ベースというリズム楽器でありながら、とても人間臭い音を出す彼は、独特の「アルフォンソ・グルーヴ」を持ちながら実に様々なセッションに顔を出していましたね。これは当時仲の良かったジョージ・デュークの参加や、今ではなかなか聴かれないナラダ・マイケル・ウォルデンのパワーあるドラムスなど興味深い作品となっています。

★★★  モコモコッ
Alphonso Johnson/yesterdays dreams (1976) 
 フィリップ・ベイリー、ダイアン・リーヴス、ジョージ・デュークパトリース・ラッシェンマーク・ジョーダンデビッド・フォスターら大ブレイク前で一セッションアーティストとしての参加が興味深く聴ける、前作よりPOPになった今や入手困難な一枚。しかしながら主役はアルフォンソでありいつものモコモコとしたファンク・ベースは健在です。ベースラインだけ聴いていても面白い人ですね。この人。

★★ いろんな音が
Alphonze Mouzon/funky snakefoot (1973)
 なんといってもウェザー・リポートの初代ドラマーであった彼ですが、元々ジャズ・ドラマーとしてデビューし、70年代前半はジャズ・ロック、後半はクロスオーヴァー・フュージョン、そして80年代に入るとソウル・ブラック・コンテンポラリー系の音楽をやり始めるといったお決まりパターンの流れにそったミュージシャンの中でも結構この人はクセがあって、それぞれのカテゴリの中でも所謂「万人ウケ」ではなく好き嫌いがはっきりするドラマーであったと思います。このアルバムはロック・カントリー、フリーソウルと各曲それぞれが良く言うと幅広い音楽性を見せていて、ターゲットやコンセプトを絞らなかったところが評価の低い原因なのでしょうけどこの時代にドラマーが作るアルバムというのはこんな形でも良かったのかもしれません。
Larry Coryell-Alphonse Mouzon/back together again (1977) はコチラ

★★★ 怒涛のトリオ
THE BAKER BROTHERS/in with the out-crowd (2005)
 Dan Baker(中央)、Richard Baker(右)の兄弟とChris Pedley(左)による怒涛のジャズ・ファンクトリオ。これは臨場感の良く伝わってくるライヴアルバムで、ギター・ベース・ドラムスを中心とした骨太な音についついヤラれてしまいます。このバンド、70年代のジャズファンク/ロックの香りを感じさせつつ、ただ懐古主義的なものではなく叩きまくりのドラムスと黒っぽいギターがソロをとるハード・ジャムセッションの中に時おり挿まれるキーボードやサンプラーがやはりUKアシッドな今の時代のバンドであることを主張しているようです。またこの3人に加え、ホーンセクション(ここではHornicationと呼んでいますが)が入り音を厚くさせている所もやはり今風。どことなく懐かしいようで、実はありそうでなかったバンドなのでした。とにかく爆発的なパワーに踊らされてしまうのはライヴで本領を発揮するバンドたるところです。実はこの3人来日していたのですね。自分は行けなかったのですが、実際に行かれた方はその模様を是非教えていただきたいものであります。

★★★ リズム良し
BAUTISTA (1977)
 これまたご紹介コーナーに迷うアーティストで、EW&Fのギターとしてアル・マッケイとともに有名な人なのでブラックのコーナーにしようかな、とも考えましたが本人は南米系の人かな? これは彼のファーストリーダー作で、プロデュースはウエイン・ヘンダーソンと元クルセイダーズでジャズ畑の人、アルバムを聴けばどちらかと言うとAOR的でもあったりけっこう爽やか目のグルーヴだったりするのでした。とにかくこの人の持ち味はリズム・カッティング。フリーソウル的な曲でもラテンタッチの曲でもひたすらチャカチャカと刻まれるギターが心地良いですね。サウンドの多面性志向は確かにアースに共通するところです。

★★★ さらに豊かに
BAUTISTA(Roland Bautista)/the heat of the wind (1982)
 前作から5年程度のブランクを空けて発表された2nd。この時はアースへの再加入やクルセイダーズ・メンバーとしての来日など日本ではかなり名前が知られていた頃で、まさに満を持したようなアルバム発表でした。内容はドラム・ベース・キーボードとのユニゾンをきめるジャズ・ロックなタイトル曲をはじめ、フリー・ソウルやファンキーものも含めバラエティに富んだ内容。ギタリストのアルバムとしてもバティスタの様々な音が聴け、持ち味のリズム・カッティングはもちろんソロ・プレイも楽しめます。引き続きプロデュースはウエイン・ヘンダーソン。内容は決して悪くないのになかなか評価されない盤のひとつ。

★★ 僕バーナード。
Bernard Wright/'nard (1981)
 弱冠17歳における黒人ピアニストのデビューアルバム。ジャケ画像も若いです。典型的な80年代NYジャズファンク中心の構成で年齢云々は抜きにしても充分質の高い音を聴かせてくれます。まあ、それにはグルーシン&ローゼンのプロデュース力と曲作りにバラエティ豊かなアーティストが協力をしてくれているというのもありますが。後に親密な付き合いとなるマーカス・ミラーやこの世界でも活躍を始めるデニス・チェンバースがしっかりとサポート。

★★ こんな僕です。
Bernard Wright/funky beat (1983)
 路上でブレイクダンスをするジャケットや、アルバムタイトルからとてもとてもストレートに本作品を表現していますね。この2作目ではNYファンクをさらに進化させたヒップポップへのアプローチを行っています。今聴くととても懐かしい雰囲気があるし、時代の音と一言で言ってしまえばそれまでなのですがヒップポップ創世記にあたるこの時代に、彼がいち早くその種のブラックミュージックにアプローチをして見せた事は評価できるのでは。この試みにサポートしたのはやはりレニー・ホワイト。マーカスと共に後、ジャマイカ・ボーイズを組む流れとなるわけですね。しかし、そういった意欲が見られるのもアルバムの前半のみで全体としてはブラコンテイストのナンバーあり、トリオ編成のジャズありとまだまだ「自己紹介」的な内容なのが…。しかたがない事なんですけどね。

★★★ AORしてます
Bill Meyers/the color of the truth (1990)
 80年代以降のEW&Fサウンドになくてはならない裏の立役者が彼だったと言えるのではないでしょうか。一曲目、いきなりのイントロでもわかる通り、プログラミングを駆使したこの頃のアースの音の中で、特にインパクトのあるアップ・ナンバーではアースそのものではなくほとんどこの人の音で作られていたんだな、と実感させられます。ジェフ・ポーカロ、ニール・スチューベンハウス、マイケル・ランドウらウエスト・コーストのセッションメンが参加してヴォーカル曲中心のポップ・アルバムとなっています。

★★ インストアルバム
Bill Meyers/all things in time (1996)
 彼やデヴィッド・フォスターなどの白人キーボーディストの登用によりラリー・ダンがEW&Fを離れることになったのかどうかは推測の域を出ませんが、それほどアースの音の中で重要な位置を占めていったことは事実でしょう。そんな白系センスの積極的な導入が逆にアースの持っていた雰囲気を壊していってしまったような気もしますがそんな事は後の祭り。このアルバムの中でもそんな彼の独特のフレーズがいたるところに顔を覗かせます。今回は前作のようなポップな部分は薄れ全体としてはスムース・ジャズ的なインストルメンタルアルバムといったところですね。

★★  ディスコ系
Bill Summers and SUMMERS HEAT/on sushine (1979)
 ハービーとのセッションが代表的なジャズ・ファンク系パーカッショニスト、ビル・サマーズが自己のバンド(summers heat)でもアルバムを出していたのですが、ここではウケの良さげなソウルサウンドで勝負をしていますね。しかし、サマーズ自身のソングライティング力があまりなかったようでバンドの仲間たちが曲を寄せ合い、本人は歌もほとんど歌わずパーカッションとアレンジ、プロデュースに専念。聴き触りの良い音ですが逆にアーティスト性という点でこれは致命的だったかな。

★★★ センス良くなり
Bill Summers and SUMMERS HEAT/call it what you want (1981)
 プレスティッジからMCAにレーベルが変わり音も打ち込みが一部ありーの、当然ながら新し目の80年代前半ソウルになってきました。パーカッションひとつとってもそれまでにはなかったような音が入ってくるんですから、この時代って年々前進、進歩が手に取るようにわかって面白いですね。このアルバムではサマーズが結構曲作りに参加をしていて、 ファンクありバラッドありのバラエティに富んだブラック幕の内を食べさせてくれます。ノリがいい。

★★★ ズッシリ来ます
Bill Summers/the essence of kwanzaa (1997)
 さて、かなり間を開けて今の時代の音として発表されたこのアルバム。おおー、summers heatのようなPOP感とは対照的なファンク、しかもジャジーな部分も取り入れた、腹にズンズン響いてくる骨太ブラックをやってくれました。しかし、ジャケからも伝わってくる通りここでのテーマはアフリカのようで、曲名もほとんどが「ujimaa」、「kuumba」、「imani」などそれらしいものばかりです。アフリカン&ラテン&NYブラック融合サウンド。さすがパーカッショニストですね。

★★★★ いいっす
Bill Wolfer/wolf (1982)
 フィニス・ヘンダーソン「call me」の作者が、実はこの人だったのですね。本作でもフィニスをゲストとして、セルフカヴァーしています。プログラミングなど、ほとんどBill一人で作られたようで、白人ですが、ブラコンのような仕上がりになっています。コンピューター・プログラミングミュージックのはしりみたいな人でした。

★  どこへ行ったの?
Bill Wolfer/and it rained all through the night (1989)
 前作が当時少なかったプログラミング・ミュージシャンという話題性と、親しみやすいホワイト・ソウル的なヴォーカルナンバーなどもあったことから多少のヒットがあったようですが、今回はグッと落ち着いて癒し系のBGM的アルバムになってセールス的にも失敗したようです。やはりシンバルやスネアの音(打ちこみ)が今ではかなりチープに聴こえてしまいますね。

★★  時代を感じる
Billy Cobham/crosswinds (1974)
 組曲仕立てのside−Aと、タイトル曲を含めた単品ものの計4曲。1970年代のフュージュン、ロックなどはこうした大作ものが多かったですね。個性の塊のようなビリーのドラミングと、MPS時代のジョージ・デュークらしいキーボード・バッキングがスリリングです。フュージョンというジャンルが徐々に確立されつつあった頃の音ですね。

★ 
   変!!
Billy Cobham/B.C. (1979)
 あらあら、こうなっちゃったのね☆ビリー・コブハムは。というような感想でございます。70年代後半はフュージョン・バブル的な頃で、とにかくヒットを狙う音作りをするアーティストが多かった。黒人の場合は、ソウルとの融合など。でも、POPになってもこのドラムは変!(いや、いい意味でね)。個性が強すぎて、売れセン狙いでもどこか気持ち悪くなってしまうわけです。これが彼らしいのですが。プロデュースはウエイン・ヘンダーソン。う〜ん。妙に納得。

★★★ クールですね
Bobbi Humphrey/satin doll (1974)
 クロスオーバーなフルート奏者というと他の楽器に対して思い浮かべる人があまりいないんですけど、中でも一番黒々としたサウンドを聴かせてくれるのはこのボビー・ハンフリーかな。と、言うよりそれというのも全てはラリー・ミゼルのなせる業なわけなんですけどね。一発目のムチャクチャかっこいい「New York times」でもうガッチリつかまれて、チャック・レイニー&ハービー・メイソンのグルーヴに乗せられていく。フルートがこんなにクールなアルバムってなかなかないですよね。ジャケットの赤ん坊と彼女が音とは対照的な母性的優しさを表していますが。

★★★ ソウル色もアリ
Bobbi Humphrey/fancy dancer (1975)
 一時代を築いたマイゼル兄弟アレンジ&プロデュースによるブルーノート最終作。一発で感じ取れるその独特な音空間は、ここでは一曲目の“uno esta”のようなラテン・フレイヴァーが香るナンバーから始まるようにさらに巾を広げています。彼らの持ち味が一番良く出た“you make me feel so good”ではB・ハンフリーのクールなフルートとヴォーカル(コーラス)とのからみがgood。リズムはH・メイソンとC・レイニーが全曲担当し、タイトルナンバーはジェリー・ピータース作だったり、スキップ・スカボロウも鍵盤で参加していたりと、この時期のブルーノートを堪能できる鉄壁の布陣。

★★ B級がおしい
Bobby Lyle/the genie (1977)
 このアルバムと言うより、本作を含むUK・EMIのMasters of Funk&Soulシリーズが気に入っちゃったのかも。なかなか嬉しい再発なんですが、う〜んCCCDなんですね、これが。さてこれは今ではすっかりスムース・ジャズなピアニスト、ボビー・ライルの1stソロ・アルバム。プロデュースはこの頃精力的に活動(し過ぎてクルセイダーズをやめちゃう事になる)していたウェイン・ヘンダーソン。ヴォーカルも入るファンキーさがありながら、70年代後半らしくドロくさいところもあるクロスオーバー・ジャズな音が懐かし嬉しいですね。ほぼ全編に刻まれるローランド・バティスタのリズム・ギターが気持ち良い。全体の統一感が無いので好き嫌いは分かれるでしょうが、自分としては好みなバラエティの豊かさではあります。まずタイトルトラックの一曲目は素直にクロスオーヴァーでカッコ良い。「night breeze」もBGM的ながらメロディーが印象的。どこかジョージ・デューク的(声質も)でファンキーな「magic ride」など、何かいろいろとやってくれちゃったりしてますが、ラストの短いピアノソロ「I didn't know what time it was」を聴くと、この人はアコースティックピアノが一番カッコイイのかも、なんて思ったり。暑苦しい彼の顔を中心に持ってきたジャケのイラストを担当したのは長岡秀星。これまた懐かしい!なんで目玉がギロギロ浮いているのか???な所に時代を感じます。余裕があればどうぞの一枚。

★★ テクもあるっす
Bobby Lyle/the best of bobby lyle (1993)
 少々マイナー系アーティストになってしまった感のあるボビー・ライル。これは彼が1977年から1979年にかけてキャピトルから発表した3枚のアルバムからのベストです。ピアニストとして確りとした実力を持ちつつも、フリー・ソウル的フュージョンの黒っぽさ溢れるスタイルはこの人の味・かな?ハーヴィー・メイソンを迎えた「new warrior〜star traveler」はあのジェントル・ソウツを彷彿とさせるスリリングなナンバーで思わずニヤニヤしちゃいますね。

★★★ なかなかイケる
Bobby Lyle/ivory dreams (1989)
 さて、時は80年代後半。ボビー・ライルもスムース・ジャズ・ピアニストになっていたのでした。初っ端から心地よいピアノサウンドが楽しめます。元々ソウルを感じさせる人でもありましたが、一曲だけヴォーカル入りナンバーもありこの曲だけはノーマン・コナーズ・プロデュース。この時期特有の、それはそれは気持ちよい雰囲気で満たされているのですが、フレーズがどれもどこかで聴いたことのあるような? 聴き流す音楽というのはやはりたいした評価にはならないようですね。むしろ後半のスリリングなジャム・セッション的ナンバーがカッコ良かったりしますが。。。

★★  やっぱり?
Bobby Mcferrin&Chick Corea/play (1992)
 グラミー賞まで獲得して、一時はジャズ界のスーパースターだったボビー・マクファーリンですが、最近はどうしちゃったのでしょうか。確かに、楽器的なヴォーカルといえば、アル・ジャロウがすでにその唱法を確立しつつポップ路線で大成功していましたし、今いちリズム感と音程において首をひねってしまう部分があったのでした。やっぱり一時の人で終わってしまったのでしょうか?

★★ UK音に触るなら
THE BRAND NEW HEAVIES/original flava (1994)
 アシッド・ジャズなるものが日本でも受けていたようですが、その中でも割と人気のあるのがこのグループ。生楽器のスカスカ感がいいですね。インコグニートよりもどちらかというとjazz寄りのようですが、「never stop」のようなヴォーカル物をもっと増やしていたらさらに売れていたのでしょうね。

★★★ おもろい!
THE BRECKER BROTHERS/heavy metal be-bop (1978)
 ヘビーメタルという言葉がまだ日本で認知されていない時期のアルバムだったので、タイトルが今イチわからなかったのですが、後でわかってなるほど。一言で、ハードアメリカンロックとジャズのクロスオーヴァーだったわけです。軟弱なBGM的フュージョンをぶっ飛ばすほどの激しさがここにはあります。当時としては画期的サウンド。

★★ NYファンクPOP
THE BRECKER BROTHERS/detente (1980)
 一転、ヴォーカルを大きくフィーチャーしたポップな問題作となったこのアルバム、ジョージ・デュークが全面プロデュースをしていて、「また、アーティストをぶっ壊しやがったあの野郎」なんて悪く思った人も多いかもしれませんが、G・デューク自身はあくまでも全体のプロデュースとバッキングで参加しているわけで、アレンジを含め実際の曲作りはしていません。ですから当時のブレッカーズがこういったファンキー・ポップなアルバムを作りたかったと考えていたのは推測ができますね。頂点は前作ですが、彼らが参加していたAORなどのアルバムはもともとこんなポップな作品が多いわけですからこれはこれで許してあげてください。

★★★ 先行ってました
Brian Auger's OBLIVION EXPRESS/closer to it!(1973)
 ブライアン・オーガーを中心としたUKジャズ・ファンクの元祖的グループ。今のアシッド・ジャズなんてほとんど彼らのやってきた事の焼き直しではないかと感じてしまうほど、73年にしてこの内容はなかなか無いと嬉しくなってしまう。しっかりと歌ものが大部分を占め、“inner city blues”のカバーまでやってしまうのでした。早々とカテゴリー無視のスタイルで音を作り始めた姿勢に脱帽です。しかし、難を言えばこのB・オーガー、ヴォーカルがあまりうまくないんですね。忘れられないメロディーがあるわけでもなく、とにかくこのいかにも英国な音全体を楽しむ「ムード・オンリー・バンド」とはちょっと意地悪な言い方でしょうか。アシッド・ジャズって今も昔もそこの所は変わっていないと言う事かな。だから“light in the path”のようなオーガーのオルガン弾きまくり的インストの方が引き込まれちゃったりするわけなんですが。

★★★ 黒っぽくて良
Brian Auger's OBLIVION EXPRESS/happiness heartaches (1977)
 レニー・ホワイトを迎えた本作は、元々のジャズロックに加え洗練されたブラック・フィーリング豊かなヴォーカルナンバーを中心としたどちらかと言うとソウル寄りのアルバム。メロディアスなヴォーカルの中でもオーガーの弾くオルガンの(でしゃばりすぎているくらいな)存在感がしっかりと感じられる、これこそクロス・オーヴァーといえる内容。素敵です。

★★★★ おすすめ。
BRUFORD/one of a kind (1979)
 ビル・ブラフォード、アラン・ホールズワース、デイヴ・スチュワート、ジェフ・バーリンの4人が織り成すUKジャズ・ロックの王道バンド。曲がいい〜。良すぎ!変拍子があればプログレなのかい!みたいなものではなく、その変則的なリズムもとても綺麗に、そして痛快に流れていきます。そしてテクニカルな中にも暖かみのあるアレンジ・アンサンブルに意外にも楽しくノセられてしまう。一枚通して聴き続ける事のできる、やはりこれも70年代的フィール・フリーな名作と言えるでしょうね。

★★★★ さっそうと!?
Bunny Brunel/touch (1979)
 フレットレスベースの名手、バニー・ブルネルのデビューアルバム。これも70年代後半の名盤と言いたい。フランス人らしい繊細なメロディーラインが印象的ですが、内容は女性ヴォーカル(Nicol Brunelという事は妹かお姉さん…、奥さん!?)がフィーチャーされたアップ・ナンバーが一曲目に来たり、フレットレスらしい独特の音色でメロディーを奏でるスローナンバーや超絶的な早弾きなどかなりバラエティに富んだ構成。チック・コリアをゲストに迎え当時はフュージョン全盛でしたから話題性もありましたが、どうしてもジャコと比べられてしまうのでしょうか。カテゴリに囚われない音楽性がとても気持ちよく聴けてしまい個人的にはとても好きなアルバムなのですが。

フュージョンでナイ?
Byron Miller/git wit me (1990)
 本来は結構骨っぽいベースを弾いていたミュージシャンなんですけど、時代の波に流されたか、リーダーアルバムでは打ちこみ系のR&Bになってしまいました。旧友ジョージ・デュークももちろん参加、他にはスタンリー・クラークジョージ・ハワード、カーク・ウエイラム、フィル・ペリーなど豪華なミュージシャン陣ですが、音の方は多少地味めの作りです。 

★★★ オールスター!
CASINO LIGHTS-recorded live at montreux,switzerland (1982)
 ワーナー・オールスターズとも言えるモントルー・ライヴ。豪華ですよー。ラーセン・フェイトンバンドイエロージャケッツD・サンボーンM・ミラーL・カールトンR・フォードが入り乱れて、アルバム冒頭の数曲はアル・ジャロウとランディ・クロフォード(street life再現はなりませんでしたが)がデュエット。バックVoはB・チャンプリンPAGESの二人ですからね!最後はM・マイニエリの名曲「sara's touch」。M・ブレッカーが吹きまくって、まさにステップス・アヘッドのライヴまで聴くことができる超お得盤です。廃盤になる前に是非お手元にどうぞ。

★★★ ラテンギター味
CALDERA (1976)
 カルデラのこの1st。この再発を聴いて、次に紹介している3rd「TIME AND CHANCE」を聴き直してしまいました。たしかに25年前の中学生の時に感じたものとはかなり違う印象。やはりアルバムは10年経ってからまた聴いてみろ!ですね。さて、このカルデラ、ギターのJorge Strunz(コスタリカ出身)とキーボード&シンセのEduardo del Barrio(アルゼンチン出身)が中心となって音作りをしているようで、わかりやすく表現するとラテン・フュージョンなんでしょうがそんな軽いイメージのものではなく、大変に凝ったアレンジと重厚感、だからと言って難解すぎるわけではなく適度に親しみやすい音色と、特にStrunzのアコースティックギターが効いたエキゾチックな雰囲気をあわせ持ったバンドと言えるでしょう。多少はウェザー・リポートの影響もあるのかな?しかしそれよりもかなりエキサイティングに飛ばしてくれるナンバーなどもありカッコいいです。ここでのドラムスはご存知Carlos Vega(キューバ出身)。BGMなんぞにゃ絶対にさせられない気合の入った音楽でこれぞクロスオーバー!と唸らされてしまいます。そしてプロデュースはウエイン・ヘンダーソン!この頃のクルセイダーズとはまったく違う音ですが(5曲目のガラッとデイヴ・グルーシン風に変わるナンバーにわずかながら似たような味がチラッと)、かなりクセのあるファンク・アルバムをプロデュースしたりしていましたし、こんな仕事もしていたのですね。さらに蛇足ながら“special thanks for positive energy”としてモーリス・ホワイトやラリー・ダンなどEW&Fメンバーの名が。確かに70年代前半のジャズ・ロックなインストをやっていたアースに通じる音の雰囲気もチラチラ見えます。名盤「太陽神」でラテン・フレイヴァーを効かせていた影の立役者がエウミール・デオダートとこのカルデラのエデゥアルド・デル・バリオ(そう言えば「runnin'」の共作者」)でした。いろいろな部分で聴き所満載のアルバムです。

★★★  発見あり
CALDERA/sky islands (1977)
 と、そこでこの2ndも聴いてみましたが、やはり子供の頃の聴力レベルによる先入観で物事を決めてしまってはいけませんですなぁ、と言うのが正直な感想。まずタイトル・トラックに驚き。ダイアン・リーヴスのあの曲ってこれが原曲だったのか。しかも作者はLarry Dunn?そんな事も21世紀になるまで気がつかなかったのかとア然。南米ミュージシャンを中心とするクロスオーバー・グループですが民族的な音になりすぎず、かえって洗練されすぎてしまっているほどスマートなのはCarlos Vegaのキャッチーなドラミングによるものなのかもしれません。いまだCD化されないし、自分でベストでも作りましょうかね。

★★ 不思議です
CALDERA/time and chance (1978)
 基本的にはインストルメンタル系のフュージョンバンドですが、幻想的な雰囲気の曲が多いと思ったら、一曲だけラリー・ダンのダンサブルな曲も入っていたりと、(このあたりは「太陽神」でのE.del. Barrioとの親交からでしょうけど)なんとも不思議な曲構成で良くわかりませんです。(加筆・これが25年前の印象。確かに統一感がなくゴッタ煮的ですが今聴くとかなり味わい深いです)ドラムスはアレックス・アクーニャ。

★★★★クル〜って!
Charles Earland/leaving this planet (1973)
 フレディ・ハバード、ジョー・ヘンダーソンら管奏者をフィーチャーしたソウル/ジャズの名品。タイトル通りいきなり宇宙船のコックピットに居るかのごときオープニングからヴォーカルも入るブリブリのオルガンナンバー。格好良い!ハーヴィー・メイソンもかなりのハード・プレイ。その後のフリー・ソウル的作品への流れも感じさせつつ、オルガンだけのアーランドと共にに各自のプレイを堪能できるジャズ・アルバムとしておすすめできる一枚。フュージョンはおろかクロス・オーバーが苦手、または卒業してしまった人にもこれならグイグイ押されてしまうはずです。

★★  ソウルもアリの
Charles Earland/odyssey (1976)
 次作ではグループ名にまでしてしまったベテラン鍵盤奏者のソウル/クロスオーバー時代作品の代表作と言えるでしょうか。一曲目のスペイシーなインストから一転、ドロ臭いヴォーカルの入るファンクに移ったりしますがこのタイプの曲をもう少し洗練させることができたら良かったろうになぁ・・・。ここでの聴き所はやはりインスト、中でもロン・カーター、マイケル・ウルバニアク、ノーマン・コナーズ、ランディ・ブレッカーらが参加した“cosmic fever”がスリリング。ギターがもう少し良い音を出していたらかなり違っていたのではないかと感じる惜しいアルバム。

★★★ 軽重織り交ぜ
Charles Earland/revelation (1977)
 ODYSSEYグループ名義の本作、かなりフュージョンっぽくなってきました。一曲目はちょっと拍子抜けな軽い音なんだけど、続く“ode to chicken george”でこの人らしいスペイシーな香りが。そしてタイトル“revelation”では待ってましたのヴォーカル・ナンバー。やっぱこの人はソウルしないと。そしてメロウな“shining bright”はやはり名曲。派手好みな人にはあまりおすすめできませんが全体的にはとてもバランス良くヴォーカル、インストそれぞれの各曲が配置されていて良いアルバムだと思います。ポール・ジャクソン(b)、ハーヴィー・メイソン(ds)、ブレッカー兄弟らが参加。

★★★ 名盤です
Chick Corea and RETURN TO FOREVER/right as a feather (1973)
 アイアート/フローラ・プリムのブラジリアンと、当時の新進ベーシスト、スタンリー・クラークらがメンバーとなってジャズ界をわかせたチック・コリア率いるニュー・スタイルバンドの傑作アルバム。スタンリーはアコースティックベースを弾いていますがこのころからチラチラっとあの早弾きフレーズが顔を見せているところが面白いです。アランフェス協奏曲のイントロで始まる名曲「spain」はここに収められています。

★★「メルヘン」らしい
Chick Corea/the mad hatter (1978)
 チック・コリアの場合は多彩な音を創り出す人でありながらクロスオーバーとかフュージョンといった俗的なカテゴリにはあてはまらず、コマーシャリズムに陥らない独自の音楽を貫いてきましたが、ゲイル・モランと作り上げてきたこの時期の「愛と美の世界」は好き嫌いがはっきりと分かれるのではないでしょうか。中でもスティーヴ・ガッドがハードなドラミングをみせ、ジョー・ファレルのサックスがからむ比較的熱いセッションが聴ける本アルバムは気に入ってます。チックの「美しいジャズ」はヘッドホンて陶酔するように聴くと気持ちよくなってきますね。

★★★ 新ジャズです
Chick Corea/tap step (1980)
 当時は聴き心地の良いフュージョンばかりを好んでいたので子供心にどうもこの人は馴染めないイメージがありましたが、このアルバムは気になった一枚でした(バニー・ブルネル参加と言うのもありますが)。ここにあるのは紛れも無くフュージョンではなく80年代におけるニュー・ジャズで、サンバやラテン、そして自らの血でありルーツであるスペイン音楽とジャズの結合を現しています。アイアート&フローラ・プリム、ジョー・ファレル、スタンリー・クラークなどRTF・メンバーが顔をそろえているのも嬉しい。そしてゲイル・モランのヴォーカルがフィーチャーされた「the embrace」が一転グッとロマンチックに響き気持ち良いですね。この時期のチックを集めたくなってきました。

★★  思わず。
CHICK COREA ELECTRIC BAND II/paint the world (1993)
 テレビのライヴで「CTA」を演っているのを見て、思わず買ってしまった一枚。Eric Marienthalのサックスを中心としたメンバーの掛け合いが絶妙です。曲自体はどこか不思議な感じなのですが、これはまあ、チック・コリアですからそのへんは…。

★★★★ 一番。
THE CRUSADERS/those southern knights (1976)
 私の中でクルセイダーズと言えばまずこれなんです。ラリー・カールトンやロバート“ポップス”ポップウェルなど総勢6名のメンバーだった頃の最高傑作。メンバーそれぞれが曲を出し合っていますが、とにかく一曲目の「spiral」が圧巻。メチャメチャかっこいいです。ライヴで見てみたかった。メンバー全員のソロと掛け合いがいい。全体的にはファンキーで黒っぽさを前面に出した作品となってます。

★★★ より聴きやすく
THE CRUSADERS/free as the wind (1978)
 クルセイダーズを商業的にメジャーにしたのが「street life」なら、あくまでもジャズ・フュージョンファンの間でグループとしての地位を固めたのが本作であったと言えるでしょう。個人的にはウエイン・ヘンダーソンが残っていた前作の方が好きなのですが、このアルバムも名作の部類に入ると思います。「sweet'n'sour」での掛け合いは見事。大袈裟なストリングスアレンジやスティクス・フーパーの先走りドラミングもご愛嬌でしたね。これはラリー・カールトンがメンバーとして参加したラストのアルバム。しかし、邦題「旋風(かぜ)に舞う」。タイトルにまで気合が入っていましたね。

★★★お上品ですが
David Benoit/every step of the way (1988)
 品の良いアレンジでそのきれいなピアノ・フュージョンはいかにも女性向き。癒し系のピアノではなにか物足りない時はこの人あたりでちょうど良いのではないでしょうか。「the key to you」ではデビット・パックがリードボーカルで歌っています。いいなあこの曲。曲によってのバックミュージシャンが多彩で、スタンリー・クラークハーヴィー・メイソンマイケル・ランドゥ、ネイザン・イースト、ジョン・ロビンソン、シー・ウインド・ホーンズなどが参加しています。

★★★  憎いね!
David Sanborn/hideaway (1979)
 フュージョン系アーティストで人気の高かったのが、ギターとこのサックス奏者でしたね。デビッド・サンボーンは「鳴きのサックス」と呼ばれる独特のアルトで一気にスターダムへのし上がりました。白人系のミュージシャンはあまりのめり込むことがない私ですが、このアルバムの中の「カーリーへ捧ぐ」は数多いサックスの曲の中でも、メロディーラインの良さで五指にはいるナンバーとなっています。

★★★ よりPOPに
David Sanborn/as we speak (1982)
 サンボーンのプレイは歌心があるとか、独特の「鳴き」がたまらんとか、確かに素晴らしい人なんですけど、まあそこはおいといてまずこのアルバムがキャッチーかつ爽快感に満ちたものである要因は一言で言うとマーカス・ミラーマイケル・センペロの存在なのでしょう。哀愁のアルトをここまでファンキーにしたのはほぼすべての曲で聴ける前者の鮮やかなスラッピングであり、POPにしたのは後者のセンスが光るコードのギターであったり、ヴォーカルによるもの。特にフュージョン・アルバムの中に入るヴォーカル・ナンバーはクオリティの高いものが多く、ここでもM・センベロの歌う2曲は素敵の一言。

★★★★ 黒人プログレ
David Sancious & TONE/transformation (the speed of love) (1976)
 WOUNDED BIRD RECORDSからセカンドアルバムがCD再発されていました。個人的に壮大なコンセプトを持った組曲の多いジャズ・ロックは苦手なほうなんですが、スリリングなセッションの中にもこの人の黒人らしいPOPフィーリングがチラチラッと垣間見えるところが私の嗜好的にギリギリのラインで「好きなアーティスト」の仲間入りを果たしている理由となっているようです。キーボーディストとしてのセッションがほとんどだったから知らなかったのですが、ギターもうまいデスこの人。全体ではかなりプログレッシヴロック的なアプローチをされていて、タイトル曲は18分を超える大作。しかし、ダレることなく最初からキメパターンバシバシのスリリングなセッションで、これがライヴだったら鳥肌たちまくりだったかもしれません。かなりかっこいいです。キーボード(ギター)、ベース、ドラムスのシンプルなトリオ編成というのも私好み。各パートの演奏テクニックよりも曲の雰囲気とアンサンブルを楽しむバンドですので買ってみようかなと思った方はその所お間違いなきようお願いしますね。。

★★★★ やるやる!
David Sancious & TONE/true stories (1978)
 黒人のキーボーディストなのですが、元々はブルース・スプリングスティーンのバックをはじめ、クラプトンやスティングとも一緒にやってきたアーティストで、このアルバムはかなり白っぽいというか、プログレがかったジャズ・ロックをやっています。かなりプログレッシヴロックに影響を受けたのですねこの人は。黒人でありながらこのサウンドの白さは何なのだ?と。変拍子も出てくるしね。次作ではついにジェフ・バーリンを参加させちゃうしさ。しかしながらまだまだ人種差別とまではいかないにしても、黒人が作るプログレ・ジャズ・ロックなんてイメージからして受けるわけがなかったのでしょう。惜しいなあ。まあ受けなくても良かったのかもしれませんけどね、あまりにもセールスが低いアルバムはCD化が危なくなるのですが、思い切って取り上げてくれたONE WAY Recordsに感謝。拍手!

★★★★ こりゃええ
David Sancious/just as I thought (1979)
 ん〜。いいですねえ。このアルバムも70年代の後半に発表されたアルバムなんですが、なんでこの時期のアルバムは名盤が多いのでしょうか。一曲目の「run」なんかはジェフ・ベックを聴いているようなギターやベースまで披露してしまっている暴れぶり。他ではベースにジェフ・バーリンとT.M.スティーブンスが担当とかなり強力な内容となっています。しかし、マニアックになりすぎずにヴォーカル曲も少々はさんではいるのですが、これまたあくまでもアルバム全体の緊張感を損なう事の無いように作られた控えめなナンバーで、とにかくその当時自分がやりたい音楽を素直に表現していた雰囲気がうかがえますね。スタンリー・クラークのアルバムの中で良く目にしていたアーティストでしたが、それとはまったくイメージの違う、カッコいいインスト・フュージョンです。

★★ ここでは主役
David Spinozza/spinozza (1978)
 セッションギタリストとしてはかなりのキャリアを持ちながら、ソロ・リーダー作としてはわずか2枚のアルバムしか発表していない彼のファースト。確かに、フュージョンシーンではギタリストのアルバムというと派手なプレイに目が行きがちな頃で、スピノザのような渋い脇役的な存在はどうしてもスター・アーティストと比べると後手にまわってしまうのはいたしかたないところ。これは、今まで脇役だった彼が自由に好きなことをやっているな、と感じられる音楽的に幅の広い内容。一曲目の「superstar」から意表をつく出だし、次のレオン・ペンダーヴィス作によるサンバもかっこいいし、かなりカラフルで楽しいアルバム。ただギターの音色に強い個性がなかったのがやはりセッションメンらしくもあり、ソロ・アーティストとして大成できなかった致命的な部分でしょうか。

★★★ 妊婦が裸体で
Dee Dee Bridgewater/just family (1978)
 スタンリー・クラークのプロデュース。しかしすごいなあこのジャケット。彼女は次作ではジョージ・デュークをプロデューサーに迎え、バリバリのブラコンアルバム(bad for me)を発表したりするのですが、これはジャズ・ミュージシャンがフリー・ソウル的な展開、POPリスナーにも積極的にアピールした当時のクロスオーバー、フュージョンシーンの影響をヴォーカリストも受けてしまったそのものの作品と言えるでしょう。バックは上記の二人にレオン・チャンクラーハーヴィ・メイソンロニー・フォスターアルフォンソ・ジョンソン、レイ・ゴメス、デビッド・T.・ウォーカー他。現在の彼女はまた一ジャズ・ヴォーカリストに立ち返って地道な活動を行っているようです。
Dee Dee Bridgewater/bad for me (1979) はこちら

★★ 演歌ソウルで
Dee Dee Bridgewater (1980)
 和田アキ子さんの5thアルバム…あ、いやいや、ジャケ写で思わず連想してしまいましたが、あらためてセルフタイトルをとった本作、ストリングスを多用したフィリー・ソウル風のグッと落ち着いた作品となりました。個人的には前2作のジャジー&コンテンポラリーな音の方が好きですが、あくまでも主役はシンガー本人の歌なのですから、バックの音がどうだとかは本人にとっては大きな事ではないかもしれません。でも、彼女がこの音で勝負する必要があったのかなかったのか、少し疑問が出るところではありますね。

★★この時代だよね
DEODATO/2 (1973)
 「super strut」のイントロに、お〜デオダートだぁ〜と嬉しくなってしまう。まあ、全体では「ラプソディ・イン・ブルー」や「サテンの夜」など、楽団の音楽的なアルバムなのですが、「skyscraper」のグルーヴィー・ジャムなんかはファンキーなデオダートの本領発揮というところですね。ジョン・トロペイの古いギター音もなかなか味がありますなあ。US盤を買うべし!ボーナストラックにはスティーリー・ダンの有名カヴァー「do it again」も入っています。

★★★★ 良いですぞ
DEODATO/love island (1978)
 さすが、トミー・リピューマ!デオダートのアルバムの中では、一番のカッコ良さ。(いや、彼の音楽を聴く上で、カッコ良さを求めていいものかどうかですが・・・)「太陽神」の縁からか、EW&Fがバックアップして作られた曲も入っています。しっかりとブラジリアン・サウンド的な部分も残しているし、これまでのデオダートのイメージを覆す一枚。音楽的に良いアルバムです。

  笑えますが・・
DEODATO/knights of fantasy (1979)
 いきなり安めのディスコティック・オーケストラになっちゃいましたね。自分としては前作の「love island」が良かっただけにこの軽さはちょっと笑ってしまいます。とにかく、ストリングスの使い方とか、女性コーラスの入り方なんかが、「ディスコ」なんですよ。BGMにもならないくらいの苦笑いです。はっきり言ってしまうと失敗作ですね。

★★★ ファンキーです
DEODATO/night cruiser (1980)
 前作でディスコ・ミュージックを意識した音になっていった彼ですが、まだまだ試行錯誤的な部分があったのは否めないところでした。今回はシンプルなセンスの良いアーバン・ファンク。デオダートが一人のミュージシャン・キーボーディストとして存在しスッキリとまとまった音になっています。ディスコ楽団のような安っぽさはなくなりました。ワーナー時代のこれら数作品はデオダート・ファンには賛否両論でしょうが、なかなか面白い時代であったと思います。

★★★
  ブラコン!
DEODATO/happy hour (1982)
 本格的にブラック・コンテンポラリーへ傾倒していった頃の代表作ですね。クール&ザ ギャングなんかをプロデュースしていましたが、ブラジリアンの彼が黒人音楽の世界に入りこんで行ったきっかけは、やはりEW&Fとの接触だったのではないでしょうか。(アースの場合は逆にブラジル音楽への敬愛心からデオダートを登用したのですが)らしくない、といえばそれまでですが、この頃の活動を知る上ではそれなりにわかりやすく、聴きやすい作品となっています。

★★★ 惜しい人を…
Don Grolnick/hearts and numbers (1985)
 若くしてこの世を去ったドン・グロルニックの初リーダー・アルバム。ソロアルバムは85年になってやっと発表されたと言うのが不思議なくらい、70年代からさまざまなアルバムに顔を覗かせていましたね。クロスオーヴァー・ミュージック創世記からの旧友、マイケル・ブレッカーをフィーチャリングしたこのアルバムはまさにニューヨーク。個性的なコードを使う一曲目からして、今のただ心地良いだけのスムース・ジャズとは二味くらい違う味わいを醸し出してくれています。渋い。

★★ 軽いノリです
Don Grusin (1981)
 かなり日本企画を漂わせるドン・グルーシンの1st。録音もクセがなくていかにも当時のジャパニーズ・フュージョン的な音です。アーティスティックな音が好きな人にはおすすめできません。兄デイヴと比べると一発でアーティストがわかるような個性が無いように感じますが、このライトな音作りはそれはそれで気持ちよく聴けますね。ギターはもちろんリー・リトナーマイケル・センベロ、ベースはエイブラハム・ラボリエルとネイザン・イーストが担当。特にリー・リトナーのギターが入る曲は彼のソロアルバムを聴いているようです。

★★ 爽快ポップ
Don Grusin/10K-LA (1984)
 続く2ndはフュージョンと言うよりも時代のプログラミング・ビートに乗った懐かしささえ感じるポップ・アルバム。1stと決定的に違うのはPhil PerryLeslie Smith、Valerie Carterらが参加したヴォーカル曲が大部分を占める作りで、Eric Taggの歌うミディアム・ナンバー「Julia Ann」がイイ感じ。明らかにポップになっていますね。帯に「全天候型ポップ」とあるのがなんとも80年代的で笑えますがたしかにこの爽やかさはズバリな表現だったかも。

★★  skyhighです
Donald Byrd/places and spaces (1975)
 元々はコッテコテのジャズ・トランペッターだったわけですがラリー・ミゼルによって一躍レア・グルーヴマスター的存在になったドナルド・バード。音はこれぞグルーヴィーと言うようなミゼル節の中でペットのソロは急にジャズだったりするんですよね。全体のサウンドとして気持ちよく聴けば良いだけなんですけど、どこか「ジャズのオッサンが乗せられて吹いている」みたいなイメージがついてしまうのはしょうがないところか。自分で曲を作らないのが致命的。あ、アルバムはカッコいいですよ。念のため。

★★
  ファンキー!
Donald Byrd/and 125th street,N.Y.C (1979)
 ソウル、R&B系に傾いていくジャズミャージシャンが70年代後半は多かったのですが、ジョージ・デュークマーカス・ミラーが大成功を収めた「表系」とすると、ロイ・エアーズやこのドナルド・バードはどこか垢抜けきらないブラックミュージックの中でゆっくりと我が道を進んで行った「裏系」と言う事ができると思います。この泥臭いファンキー・ジャズ・ソウルが今のクラブシーンでは再注目されているというのですから、わからないものですね。

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