[K〜Z]


★★★★ 脱帽です
THE KEANE BROTHERS (1976)
 若干11歳だか12歳の見るからにカワイイ兄弟二人組のアルバム。しかしこれがまた聴いてみてビックリのクオリティの高さ。このアルバムの人気は確かにデヴィッド・フォスタープロデュースによるサウンドと豪華なバッキング・ミュージシャンからくる所が大きいのでしょうが、自分としての驚きは兄トムがほとんどを書き下ろしたとされる曲のレベルとそれを歌い上げる歌唱力。この際エアプレイやTOTOのバッキングなんて置いておきたいくらいで、まずこれに尽きると思います。楽器や歌のうまい子供というのはいつの時代にもいるものですが、これだけの曲を書ける、作れてしまう才能はなかなかないハズ。声はあどけなく、確かにティーンズポップ的な売りも見え隠れしたりするのはいたしかたない所ですが、まずはこの才能を楽しみましょう。

★★★ ソウルな子供で
THE KEANE BROTHERS/taking off (1979)
 そんな“プロ”の子供達の2作目はラモン・ドジャーのプロデュースでちょいと黒っぽいノリになっております。D・フォスターもチョコっと参加してはいますがやはりここではジェームズ・ギャドソンのさりげないリズムに乗るソウル。ティーンズのブルーアイドソウルとでも言いましょうか。しかしトム作による“you're running away”のメロはスゲエ。これ10代が作っちゃってたのかい?まあ、子供で本物ソウルはジャクソン5がすでにいましたが、これはAORの世界での驚くべき子供達と言うことで、二度と出てこないであろう存在でしょうねぇ。あ、ちなみにこのアルバムの中で“I wanna be where you are”をカヴァーしてます。なるほど。

★★★★なごみの名作
Kenny Rankin/silver morning (1974)
 ケニー・ランキンの代表作の一つである本作がなんと今になって初CD(デジパック仕様)化。しかも自主制作によるものなので今のところここで購入するのが一番かと。アコギをベースにしたバッキングの中で、彼の優しいヴォーカルとのバランスが素晴らしい至福のひとときが味わえる一枚。タイトルトラックを筆頭に、抑揚のある凝ったアレンジにも掴まれてしまいます。スキャットも飛び出すジャジーな”in the name of love“、ボサノヴァ・テイストの”birembau“など、フォーキーな中にも多彩なスタイルの音色が詰まった名盤中の名盤。ボーナストラックも収録され、ガラッと雰囲気が変わりコーラスの効いたオールド・POPのカヴァー曲”why do fools fall in love“がまた楽しい。

★★★ 良質VO作品
Kevyn Lettau/the language of flowers (1998)
 最初のタイトル曲はもろYUTAKA(横倉 裕)、んで2曲目はガラッとジェフ・ローバー。一回聴いただけでわかっちゃうくらい見事に自分の色に染め上げてしまっていますね。このアルバム、プロデュース自体はYUTAKAなのですが、曲作りにおいては11曲中6曲がJ・ローバーによるもので、YUTAKAは3曲、他はビル・カントスなどが担当と、ほとんどレトー/横倉/ローバーのトライアングルコラボレーションによって作られた品の良いアダルト・コンテンポラリー・アルバムとなっています。サラッと気分良くなりたい時におすすめ。すっきりしますよ。

★★ とみぃ〜
KING OF HEARTS/my desire (1995)
 エアプレイでメインヴォーカルをとっていたTommy Funderbarkのユニット。やはり、あの頃の栄光の名曲をセルフカヴァーしなければならなかったのでしょうね。「after the love is gone」のアコースティック・バージョンが収録されています。これは、マキシシングルなのですが、とりあえずご紹介をば。

★★★★ 白ファンクで
KOKOMO (1975)
 再発により初めて耳にしたグループでした。UK発ホワイト・ファンクバンドの草分けだそうな。とかくAWBと比べられそうですが、こちらはファンキーなリズムとギターが中心としつつも、グイグイとファンクだけで押し続けるわけではなくやはり白人が作る音らしいスマートさが感じられますね。コーラスひとつ取っても、「これってファンキーだけど黒人がやってる感じではないよね」とすぐわかっちゃう音。そんな中間的音楽をひとつのジャンルとして見ればとても良質なナンバーばかりで、邦題「ファンキー・マシーン☆ココモ1号」って、そりゃネエよなってところ。

★★★ さらに強力に
KOKOMO/rise and shine! (1976)
 米マイアミ録音による2nd。アレンジもそうですが、ヴォーカル/コーラスがより黒っぽく、パワフルになったという印象。AWBに追いつき追い越せの意識アリアリと言う感じ。アメリカ進出作でもあるそうですが、確かにこのくらい音をはっきりさせないとダメだったのでしょうね。ホワイト・ファンクを堪能するならファーストよりこちらに軍配があがるかもしれません。

★★ ソウル愛の一枚
KOKOMO (1982)
 あらためてグループ名のみのタイトルとしつつ、実質的にラスト・アルバムとなった3rd。プロデューサーにLeo Graham&James Mackを迎え、従来のファンク路線のみならずシカゴ/ノーザン・ソウルへの傾倒も見せてくれています。6年という月日を経て送り出された本作はさまざまな形での表現はあれど、ソウル・ミュージックを愛してやまない彼らの集大成的なアルバムであったのでした。しかし、やはり80年代という時代からか中途半端に新しくなっているという印象。やはり彼らの良さは前2枚にありか。

★★★ ナチュラルです
Leah Kunkel (1979)
 なんと言っても“under the jamaican moon”の作者バージョンが聴ける盤として有名な、AORと言うより70年代アメリカン・ポップの名盤。夫のラス・カンケル&リー・スクラーといったTHE SECTIONメンバーがしっかりとバックアップしてゆったりとした良質のポップスを聴かせてくれます。バックがどうのと言うより、メロディーを大切に曲を作っていたこの時代の音楽に歳を追うごと、戻っていくものなんですね。決してうまいとは言えない彼女のヴォーカルもその淡々とした語り歌が自然でいいなぁ。

★★★ ハワイの風
LEMURIA (1978)
 ハワイ発のアーバン・コンテンポラリーバンドの名作。リアルタイムでは聴いていなかった私、カラパナのようなサウンドを想像していたら、それよりもかなりフリー・ソウル的なアプローチをした作品でした。これはその元カラパナのカーク・トンプソンがほとんどの曲を提供して仕掛けたバンドで、アイランドポップ・バンドとしてはかなりセンスが良いですね。女性ヴォーカルを使っていますがまるでSEAWINDのようで、カラパナよりも広い視野を持って製作されていたことがうかがえます。

★★★★ 声が爽快
Leslie Smith/heartache (1982)
 Peter Bunetta&Rick Chudacoffの全面プロデュースにより、CRACKIN'解体後もソロヴォーカルとしての新たな活路を見出したレスリー・スミスの言わずと知れたアダコン名盤。B・ラッセルの名曲「it's something」やマントラで有名な「nothin' you can do about it」をカヴァーするあたりはこれらのアーティストが当時いかにAIRPLAY(フォスター&グレイドン)の影響を受けていたかがわかるほんのひとコマだったりします。タイトルを象徴するネッド・ドヒニーによる「love's a heartache」ではNed自身がアレンジやA&E・ギターで参加。80年代になり録音も良く聴きやすいこのアルバムがいまだCD化されないのは、いろいろな理由があるのでしょうが一番は参加アーティストの知名度の低さによるものかな?今聴いてもアダルト・コンテンポラリーとして佳曲揃いの極上盤だと思いますが。

★★★ ホッとしますよ
Leslie Smith/“les”is more (1992)
 元クラッキンのヴォーカル、レスリー・スミスがAORの名曲とされたナンバーを中心にカヴァーしたアルバム。黒人ながらコテコテなブラコンよりも比較的白っぽい曲を好んで歌うところに味がある。フォスター/ラッセルの「it's something」に始まり「after the love has gone」、「we're all alone」などの超定番曲が続き、「I just wanna stop」までやってくれちゃうサービス盤です。それもそのはずこれは日本企画盤ですから(笑)。しかし、ファンにとっては全曲とても嬉しい選曲と言えるでしょう。聴いて損なしですよ。 

★★ かなりアメリカン
Letta Mbulu/there's music in the air (1976)
 だんだんここは何でもアリのコーナーになって行くようです(笑)。かつてあの「ROOTS」のテーマを歌った、1970年代を中心に活動をしていた南アフリカの歌姫(?)、76年に発表された好盤の再発CD。リアルタイムではなかった彼女、元々はチャック・レイニー、リチャード・ティー、ジョー・サンプルら当時のトップ・サポート陣に惹かれて手を出したようなものなのですが、聴けばなかなか味のある歌。しっかりと英語を中心に、しかしお国の言葉も交え、洒落たアレンジの中にも民族音楽的な楽しさもある作りとなっています。超スタンダード、“feelings”のカヴァーが高速ヴァージョンで面白い。幕開けのナンバー、“music man”で聴けるブリブリのベースは若きルイス・ジョンソンなのでした。

★★★ ほほー。
Marc Jordan/mannequin (1978)
 Gary Katsプロデュースによる本作。どこかスティーリー・ダンの匂い?いやいや、70年代のNYシティ・ポップといった雰囲気が漂っています。(録音はLAですけどね)ドナルド・フェイゲンも参加して、TOTOSTEELY DANがミックスされた贅沢な作りとなっています。

★★★★曲がいい
Marc Jordan/blue dessart (1979)
 前作から一転、脂ののりまくったジェイ・グレイドンをプロデューサーに迎え、一気に華やかなサウンドとなってヒットシンガーの仲間入りをした本作。曲も良く、アレンジはいかにもグレイドン的になっていて、AOR好きな人にはこれもフェバリット・アルバムに挙げられることが多い作品です。

★★★ アメリカンボサ
Marcos Valle/vontade de rever voce (1981)
 ボサノヴァ・コンテンポラリーアーティスト、マルコス・ヴァーリがその当時活動を共にしていたメロウ・ソウルの大御所リオン・ウエアやAOR路線時代のCHICAGOらと製作したポップ・アルバム。内容はズバリ、ボサノヴァAORとも言えるもので、節度を保ちつつアメリカナイズされた音とポルトガル語のヴォーカルが気持ち良い。この頃はアイアートの「touching you... touching me」でもセンスの良いアレンジとピアノで参加していました。こちらもおすすめです。

★★★★ UKボサ
Marcos Valle/nova bossa nova (1997)
 「サマー・サンバ」を耳にしたことがない人はいないほどの名曲の作者ですが、ここらへんの60年代ボサはリアルタイムでは聴いていなかった(と、言うより生まれていない)のですが、私がこの人に注目したのは70年代後半からのブラジリアン・コンテンポラリーでした。リオン・ウエアやシカゴといったアメリカ製のPOPアルバムにさりげなくブラジルの味付けをしていたのがこの人。このアルバムはロンドンのクラブ・シーンで再評価された彼がまさに「今の音」で復活したもので、フュージョン的インストルメンタルを含むUKアシッド・ジャズとボサノヴァとの見事なまでの融合を果たしています。

★★★夏にいいぞー
Marcos Valle/escape (2001)
 「nova bossa nova」でUKアシッド的ボサノヴァとも言えるスタイルのアルバムを発表し、さらに本作でシンガー・ソング・ライター・アレンジャーとしての「完全復活」を告げた感のある作品となりました。より歌の部分を重視して、クラブ受けというよりさらに広い視野で21世紀のボサノヴァを表現しているようです。とにかくこのメロディーラインがいいですね。

★★★★アレンジ良し!
Marilyn Scott/dreams of tomorrow (1979)
 メロディーの良さもさることながら、このとてもサービス満点の凝ったアレンジが嬉しくなってしまいますね。ラッセル・フェランテの全面的バックアップを得て、ソフト・フュージョンファンにも喜んでいただける内容となっています。キーボードやギターのソロ・パートが多く、単にマリリン・スコットの歌だけでなく、音を楽しんでくださいと言ういかにも70年代的サウンド。この時代は本当にアーティストサイドのアルバムへのこだわりが強く伝わってくるものが多いですよね。あっという間に一枚聴き終わってしまいます。

★★★  素敵です
Marilyn Scott/without warning (1983)
 前作に引き続きラッセル・フェランテのバックアップのみならず、イエロージャケッツの面々(J.Haslip R,Ford R,Lawson)が全面的にバックアップ。特にジミー・ヘイズリップの曲作りにまで参加している所はこのスタイルのアルバムとしては貴重!前作よりも録音が良くなり、ヒット性の高いナンバーを収めています。逆に、セッション的な楽器のソロ・パートが薄れたのは残念なところですが、あくまでも彼女が主役なんですからこれで正解なのでしょう。なるほど、ギターを中心とするインストルメンツとプロデュースはマイケル・センベロ。極上のAORアルバムに仕上がっています。

★★★  ロック色強
MAXUS (1981)
 Michael LandauらがメンバーのLAポップAORバンド。唯一この作品だけで解散。ロック色が強めですがTOTOより爽やかな曲質をしています。と、思ったらプロデュースはマイケル・オマーティアン。なるほど納得です。ポップロック的AORが好きな人にはおすすめ。当時は話題になりましたが二番煎じ的なイメージが強く、質はいいのにそれほどのヒットにはならなかったようです。

★★★ 黒いがイイネ
Melissa Manchester/don't cry out loud (1978)
 かなりグルーヴィー。と、言うのもこれはリオン・ウェアプロデュース、バックもC・レイニー、G・ギャドソン、デヴィッド・Tなどなど所謂「王道バッキング」でかためられた作品という事で有名。スティーヴィーのカバーなどもありますが、ほとんどが彼女自身の作による曲構成というのが嬉しい。中でもリオンと共作した「almost everything」はメロディー、アレンジにおいてすべてリオン節とも言えるナンバー。メロウネスを追求する黒人アーティストが白人女性シンガーソングライターをプロデュース。そんな融合感が心地良い一枚です。

★★★ 声質良し
Michael McDonald/if thats what it takes (1982)
 良くも悪くもドゥービー・ブラザースを振りまわしたマイケル。出るべくして出たソロアルバムでした。本来はドゥービーに参加せずに最初からソロとしてアルバムを出していたほうが良かったのかもしれませんね。どこにいても彼は彼で、この歌声があれば充分なのです。JポーカロやSルカサーも参加していますが、なんとスティーヴ・ガッドがほとんどの曲を叩いているのが驚きです。

★★★ 隠れ好盤です
Michael Ruff/once in lifetime (1984)
 ジーンズにナイキのスニーカー。語呂を合わせたかのような「ラフ」なスタイルのジャケット写真で、音も休みの日・日曜の朝にでも聴くとドンピシャな感じ。84年というAOR衰退後に発表され、その中で埋もれてしまったアルバムとしては惜しいというかもったいないほどの完成度の高さです。トミー・リピューマのプロデュースがいぶし銀。ジワジワと染み渡ってくるマイケル・ラフのメロディーラインが心地よい。バックミュージシャンもいい仕事していて、「love go round」ではあの「aja」を彷彿とさせるスティーヴ・ガッドのドラミングが聴けます。

★★★ 凝ってますね
Michael Omartian/white horse (1974)
 70年代から90年代に掛けてプロデュースやバックプレイヤーとして名作、人気作の影の立役者として活躍した彼も自身のリーダーアルバムでは女房Stomieと二人三脚で地味にコツコツ作品を出していたのでした。これは白馬のジャケットで有名な1st。ギターはラリー・カールトン&ディーン・パークスの二人が参加。CCMらしい清廉な曲もありますが、結構ファンキーだったりする所は意外。

★★
  白すぎて・・・
Michael& Stormie Omartian/mainstream (1982)
 これは思いきり真っ白なサウンドで好き嫌いが分かれるでしょうね。私はどっちかというと苦手だなあ。ここではStomieの清らかなヴォーカルをフィーチャーしたりしてさらに美しい世界に。「come and give it all you got」のようなテクニカルで跳ねるようなアレンジがこの人らしいですね。Philip BaileyやBob Wilsonなんてそれらしい人と共に結構バックは豪華なんですが‥。バックサポートではなく個人的作品としては、CCMの世界であくまでも夫婦のアルバムにこだわった人でした。

★★★ 売れたセンベロ
Michael Sembello/bossa nova hotel (1983)
 この人の名前を意識したのはやはりジョージ・デュークのアルバムでギタリストとして参加していた時だったかなぁ。「from me to you」(1977)ですでにクレジットに顔を出していましたが、それからあまり参加アーティストを気にしていなかった(それよりも曲が良すぎて)スティーヴィーの「キー・オヴ・ライフ」(1976)に名前を見つけた時は「あらっ。けっこうヤッてるじゃん」と。そんな人がこんなアルバム作っちゃうんですからね。MTVでも良く流れ大ヒットした「マニアック」を見た時は同名別人でしょ?と思ったほど。このアルバムはその問題作も収録されていますが、全体では大変質の良いアメリカンAORに仕上がっています。このカテゴリでは名盤と言えるでしょう。

★★★ POPなセンベロ
Michael Sembello/without walls (1986)
 86年という微妙な時期にマイケル・センベロはどう勝負してきたか。すでに“マニアック”で表舞台に立つと言う事はどういうことかを知った彼にとっては、その勝負の仕方も充分心得ていたのでしょう。のっけから'80sビートの嵐に飛ばされそうになりますが、それはあくまでも表面的なもの。メロディー・ラインや手の込んだアレンジを意識して聴いてみれば、彼の音楽的才能がジワジワと伝わってくるのです。堂々と時代に乗ったものでありながら、けっして陳腐にならないところがさすがな80年代ポップの傑作。盟友スティーヴィー・ワンダー、ハーブ・アルパート、ボビー・コールドウェル等の参加も嬉しいですね。

★★★ 若々しいね
Ned Doheny/prone (1978)
 ビバリーヒルズに「ドヒニー通り」があるというくらいの富豪のお坊ちゃんであるそうですが、CBSとの契約を打ち切られ、本国アメリカでは見送られ日本だけでの発売となったのは、随分と対照的なアーティストとなってしまいましたね。これはそんな「幻になりかけたアルバム」なのです。スティーヴ・クロッパーのプロデュース、ソウル・フレイバーの効いたメロディーとアレンジがネッド自身の典型的白人の声質と妙にマッチして、それはボズ・スキャッグスを若くしたような雰囲気を醸し出しています。

★★★ 歴史的で
Nick DeCaro/italian graffiti (1974)
 スティーヴィー・ワンダースティーヴン・ビショップ、トッド・ラングレン、ジョニ・ミッチェル。。そんな名アーティスト達の(今で言うと)カヴァー曲集的な作りなのですが、大ヒット曲を使わない選曲の渋さ、当時としては斬新な音でAORの根幹となったと言われる作品です。トミー・リピューマのプロデュースといい、デビッド・T・ウォーカーのギターといい、今また新鮮に聴こえてくるくらいとてもオシャレ。本人の歌はあまりうまくないですが。

★★★ イイねえ
NITEFLYTE (1979)
 圧倒的人気の2ndに比べるとどこか地味な1st。とても爽やかです。往年のディスコサウンド的な曲もあったりしますね。スターアーティストはこれといって見当たらないのですが、ギターカッティングがクロースアップされた音づくりをしていたので、AORファンの中でも特にギターにこだわった人に好まれたグループでした。

★★★★やったあ!
NITEFLYTE/II (1981)
 時代の音としてはまさにタイムリーであり、絶大な人気を誇る2nd。1曲目の「you are」からこれでもかとたたみ掛けるメロディーフレーズにぶっ飛ばされます。異色のマイアミ・AORでしたね。1981年と言うとこのアルバムとPAGESの3rdでした。車の中で良く聴いたものです。本来はブラックのカテゴリに入るんでしょうけど、私の感覚的にはこれはAORです。

★★★★ すばらしすぎ
NOVO/novo complete (2003)
 横倉 裕がリーダーシップをとる和製セルメンとも言われた幻のグループが奇跡のCD再発。レコーディングは1972〜1973年にかけての年代ものですが、この頃にこんな本格的なブラジリアン・グルーヴを生み出していたとは。しかも、単なる「真似っこ」ではなく日本語の歌詞を使っているところも気持ちが良いですね。後に発表されたYUTAKAの各アルバムを聴いてみてもポーリン・ウイルソンケヴィン・レトーなどの女性ヴォーカリストをプロデュースしていた経緯からも、このグループが彼の音楽の原点であったことがチラチラッと見えてくるところが面白いです。小西康陽が「これが本当に昔の音源だなんて、とても信じられない」とコメントしている通り当時はマニアックすぎて売れなかった音でしたが今でこそ評価されるべきものなのでしょうね。シングル2枚の売上不振で発売中止となったこのアルバムが今の時代に日の目を見ることになりましたが、そういった熱心な「発掘作業」をしてくれた業界の皆様方にも本当に感謝したいと思います。エレピの使い方いいよ〜。おすすめ!

★★★ 聴いたほうが
PAGES/pages(1st) (1978)
 幻と言われていたファーストアルバム。故ヴィクター・フェルドマン、マイケル・ブレッカーなどジャズ系アーティスト参加もPAGESサウンドの傾向をうかがわせることができますね。数ある一般的AORと言われているものとはまた一線を画す独特のサウンドはここから始まりました。

★★★ なかなか。
PAGES/future street (1979)
 比較的ファーストよりは手に入りやすかったこのセカンドアルバム。再発CDではなぜか3rdよりも長く発売されていました。ケニー・ロギンズが参加した「Who’s right who’s wrong」は密かにPAGESの中ではマイ・フェバリット。

★★★★これは聴け!
PAGES/pages(3rd) (1981)
 AORの名盤。なにかとジェイ・グレイドンのプロデュースが注目されますが、実は大事な1曲目を今まで手を組んできたボビー・コロンビーのプロデュース曲に選択しています。確かに、2ndまでのPAGESの雰囲気をそのまま継承しつつ、メロディアスな佳曲となっています。しかし全9曲、とても短く感じられ、聴いた後も余韻が残り、次作が発表されていても不思議ではない終わり方だったですね。この後、彼らは80年代MTV的POPユニット、「MR,ミスター」へ変貌を遂げるのですが。。。

★★★ 意外とハマる
Paurine Wilson/intuition (1992)
 横倉 裕のアルバムの中で全曲ポーリンが歌っているような。。。それくらいYUTAKA色で染まっているアルバムです。とても耳ざわりの良い上品なアレンジの中でのポーリンのきれいな歌声が爽やかです。シーウインド時代の名曲「follow your road」のセルフカヴァー収録。あ、ここでは琴は使っていませんよ。ご安心を。

★★★ アダルトで
Peter Allen/bi-coastal (1981)
 これも良く流れていました。当時、デヴィッド・フォスターはこういったアダルト・シンガーのプロデュースをしてイメージ・チェンジ、新局面を見せる術に長けていましたが、中でもピーター・アレンの本作は代表的ですね。ここでもフォスターの煌くキーボードが全開です。しかし、本質的にはやはり素晴らしいメロディーメイカーであるP・アレンの楽曲そのものを楽しむべきアルバムと言えるでしょう。今のシンガーではなかなか伝わることのない、アメリカン・ポップスの良心が見えるのです。

★★★ 隠れ好盤
PIECES (1979)
 Geoffrey Leibを中心とするセッション・ミュージシャン・バンド。さすが唯一発表されたこの一枚に自らの力をすべて注ぎ込んだかのごとく佳曲揃いで、最初から最後の曲までまったくダレずに流れていく秀作。ロック寄りなものもありますがやはり9曲中6曲を手掛けたG・レイブ作のホワイトソウルがファンキー。大袈裟すぎず適度に洗練されたアレンジも良い。当時は全く売れなかったそうですが、確かに華がないですからねぇ〜。アルバムで楽しむグループでしょうね。

★★ ロックですよ
PLANET3/a heart from the big machine (1990)
 90年代ともなれば、サウンド自体に変化があるのは当然の事。ジェイ・グレイドンもあのAOR全盛時のハーモニック・ギターサウンドは聴かれなくなってきています。確かにこのロック色の強い、しかもリズムは打ちこみのスタイルであの音は場違いですし、クリエイター・ミュージシャンとして昔の音をいつまでも引きずっているわけにはいかないでしょう。それとは別に、メロディアスナンバーではかなり聴かせてくれるのでOKOK。

★★★ しっとりと
Randy Crawford/secret combination (1981)
 トミー・リピューマプロデュースによる秀作。ハデさはありませんがこれぞ女性ヴォーカル・アルバム!といった雰囲気に満ち溢れています。夜と酒とこのアルバムですね。ご存知の通り個性的な彼女の歌声。どんな曲を歌っても聴けばすぐに誰だかわかるアーティストっていうのはまず私が好む基本事項です。ストリングス・アレンジの大部分はニック・デカロが担当。

★★★ 彼女を聴く作品
Randy Crawford/windsong (1982)
 バックミュージシャンがさらに豪華になりましたが、しかしさすが、引き続きトミー・リピューマのプロデュースのもとあくまでも主役はこのランディ・クロフォード。しっかりと彼女の歌を聴くアルバムとなっています。前作よりも確かに曲調、アレンジが華やかには感じられますが個性のある歌声は確かなバッキングアーティストの作り出す音の中で埋もれる事なく存在感を示していますよ。やはり引き続き参加のレオン・ペンダーヴィス(key)も嬉しい。ドラムスは全編ジェフ・ポーカロ、ギターはスティーヴ・ルカサー、ディーン・パークス、マイケル・センペロのビック3が。ビル・ラバウンティやスティーヴィー-シリータ作の曲などもやってくれています。

★★ ヤラシイねぇ
Ray Hayden/sky so blue (1996)
 アダルト・オリエンテッド・ロックではないのですが、ではブラックのコーナーで紹介しようと思ったら白人だった。と、いうような人です。それじゃわからないか。とにかく音は90年代のブルーアイドソウルなのでしょう。インコグニートやスイング・アウト・シスターらをプロデュースしてきただけあって洗練されたオシャレサウンドが楽しめます。キャラクター的にも好き嫌いは分かれるかな。

★★ 懐かしの音
RHYTHM HERITAGE/sky's the limit (1978)
 マイケル・オマーティアンを中心として当時のスタジオ・ミュージシャンが大集結した往年の名グループ。ラスト・アルバムの本作での主要メンバーはエド・グリーン&スコット・エドワーズのリズムコンビにジェイ・グレイドンのギターで白人が多いのに音はかなりファンキーなライトソウル。しかしここでは何と言ってもビクター・フェルドマンの「skippin'」やタイトル曲、「スタスキー&ハッチ」などのインストがやはり思い出深いですね。

★★ ヒットPOPS
Robbie Dupree (1980)
 一曲目の「STEAL AWAY」を全米ヒットチャート6位にまでマークした実績があり、このロビー・デュプリーはいわゆるAORにカテゴライズされるシンガーとしては成功をおさめています。逆にいえばいかにもマイケル・マクドナルドスタイルなメロ&アレンジが二番煎じ的に感じ、ヒットとはうらはらにマニアックなファンからはたいした評価もなかったようですが、あの頃のホワイトポップを懐かしみたい人にははずれのない内容となっているのではないでしょうか。

★★★ 秋〜冬に良し
Robbie Dupree with David Sancious (2004)
 そのロビー・デュプリーとこのホームページでも何枚かご紹介している黒人ピアニスト、デビッド・サンシャスとのデュオ・アルバムが20数年経った今の時代に発表。地道に活動はしていたんですねぇ。このようなシンガーとピアニストのデュオアルバムではリオン・ウエア&ドン・グルーシンを思い出しましたがあちらはジャズ・スタンダードのカヴァーだったのに対しこちらはR,デュプリーの過去の作品からこのアルバムのためにセレクトされたセルフ・カヴァー。大変綺麗なハーモニーを奏でるD,サンシャスのピアノとともに彼の歌心が沁みてきます。今までコンスタントにアルバムを出していたようですが正直、それほど期待もせずに聴かず終いでした。今回の再会は二人ともまったく違うアーティストに出会ったかのようで、じっくり歌を聴きたい夜にハマってしまいました。

★★★★ センスの勝利
Robert Lamm/skinny boy 2.0 (2006)
 ミスターCHICAGO、ロバート・ラムが1974年にさりげなく発表していたファーストソロアルバム。以前に一度CD化はされていたようですがすでに廃盤となっていたままでした。しかし今回version 2.0としてめでたく(これまたさりげな〜く)リイシューされたようで。パソコンソフトのごとき2.0とつけられたのは、ボーナストラックが加えられたから。しかも+6曲というサービス。SKINNY BOYなんてご謙遜(?)なタイトルに反して、ステキな音楽を作るやさ男っぷりが満開のこのアルバム、いやぁ、あらためて聴きごたえのあるモノなのでした。意識的にブラス・セクションを入れなかったのはやはりソロ作である事を強く打ち出したからか。それほどR・ラムのピアノや故テリー・キャスのベースはまんまシカゴ。ではブラス・セクションを除いたシカゴなのかと言えば単純にそうではないようで、幕開けの“temporary jones”はさすがにその香りのするものですが、続く“love song”ではプレAORと言っても良いほどの甘いナンバーに。フリーソウルな“a lifetime we”、James Vincentのブルージーなギターが炸裂する硬派な“city living”、タイトル・トラックはファンキーなホワイト・ソウル等、できる事はすべてやったといわんばかりなトータル・アメリカンPOPアルバムで、内容の濃さは圧巻です。曲中で音の展開がめまぐるしく変化するものが多いのも特徴で、中でも私が「人名タイトルセレクト(SELECT-13)」でも取り上げた“crazy brother john”は一番のジェットコースター・ナンバー。ボーナス・トラックも往年のシカゴ・ファンなら歓喜のお蔵出し、といったところでしょうか。こんなありがたき自主製作による名盤の復刻、CDBABYで買えますので是非どうぞ。

★★★★ 曲が良いッす
Russ Taff/walls of glass (1983)
 CCM界の大御所グループIMPERIALSに在籍していたラス・タフのソロデビュー作。83年と言う微妙な時期に打ち込みを使わず、70年代的な暖かさのある安心のAORサウンドを堪能できる名盤と言えましょう。バックも非常に豪華で特にRobbie Buchananがマクサス・テイストの嬉しい音を出してくれています。マイケル・オマーティアン作「Jeremiah」のカヴァーではCCM繋がりもありますが本人もしっかり参加していますね。古臭くなく、新しすぎず、これぞAORという音を求めている人には是非オススメ。

★★★★ 嬉しいなぁ
SAMUEL PURDEY/musically adrift (1999)
 90年代後半は正直な話音楽収集から離れていた時期で、こんな作品が売られていたとは全く気がつきませんでした。(青りんごチャンに感謝!)UK発の二人組ですが、70年代AORを今、忠実に再現してくれていて本当に嬉しい限りです。スティーリー・ダンに大きな影響を受けているようで、確かにそのようなのですが、一発目はいきなりホール&オーツやん!と言う曲に始まり、M,マクドナルドが参加した頃のドゥービーのような曲や、ヴォーカルの違うジャミロの様ないかにものUKアシッド的サウンドもあり、こんなん受けるのは日本のリスナーくらいじゃないの?と意味も無い心配をしちゃうほど徹底した音作りはある意味オタクとも言えるほどではないでしょうか。ここを見ている方には喜んでいただけるアルバムでしょうね。

★★★ これだけです
Scott Jarrett/without rhyme or reason (1980)
 初期GRPから発表されたスコット・ジャレットのワン・アンド・オンリーアルバム。バックを固めるのは当時の花形NYトップ・ミュージシャンと気合の入った作りをしていながらも、全曲が自作曲であり、もちろん主役である彼の力みの抜けた自然なヴォーカルがバックに食われることなく前面に立つこの個性がありながら彼のアルバムが本当にこれ一枚だけとは。キース・ジャレットの弟と言う話題性だけでいきなり飛び出して来たわけでなく、小さい時から音楽家を目指し、シンガーソングライターとして地道に活動をしていただけにとても惜しい気がします。デイヴ・グルーシンらしいアレンジとともに、存在感がさすがな兄キースもピアノで2曲参加と言うのも聴き所。休日の朝に合うグッド・アメリカンミュージック。

★★★ オシャレです
Sergio Mendes and THE NEW BRASIL'77 (1977)
 単純にAOR化したセルジオ・メンデスとみられてしまいがちな本作ですが、聴き所は満載。なんといってもStevie Wonder作の「the real thing」がいいなぁ〜、とばかり言ってはいられない。スティーヴィーだけでなくMichael Sembelloの参加が効いていてギターのカッティングが軽快でノリがいい。Oscar Castro Nevesとの共作では一転キメ所バシバシのインスト(おそらくドラムはスティーヴ・ガッド)に。短いこのナンバーがアルバムの中盤を締めてます。全編を通して流れる女性ヴォーカルもシティ・ポップなアレンジと合ってとてもオシャレな一枚。

★★★ POPセルメン
Sergio Mendes (1983)
 これも邪道の極みといったところでしょうか。セルメン80年代の復活作。グループ名義ではなく個人作とした今回は曲作りからアレンジ、バッキングと大きく関わったマイケル・センベロを中心に豪華サポート・プレイヤーの協力を得て、軽快なコンテンポラリー・ブラジリアンPOPに仕上がっていてとても楽しい、ここではオススメな内容。本来のファンはこんなもんセルメンではない!といったところでしょうが本人一人でプロデュースして作られたものであるのも事実。セルメンも進化し続けるアーティストであったのだ。

★★★★すべてここに
Sergio Mendes/brasileiro (1992)
 いきなり飛びこんでくるブラジリアン・パーカッションの波。その通り、これは特にリズムとパーカッションに重きを置いたアルバム作りをしているようですが(ジャケット画がまさに物語っていますね)、曲によって本国ブラジルとアメリカの南北ミュージシャンを使い分けて、曲作りもIvan LinsやHermeto Pascoalなどを取り上げバラエティ豊かな内容となっています。伝統的でありコンテンポラリーでもある、ブラジル音楽の全てがここに集められているような印象をうける作品ですね。アルバム後半も盛り上がる、大変気持ちの良い構成となっています。(これはこのWEBをご覧になられた方からおすすめをいただいたアルバムです。ご紹介いただきありがとうございました。)

★★★ 一聴の価値
SKYLARK/2 (1974)
 デヴィッド・フォスターが在籍していた事で知られるスカイラーク、自分としてはこの2ndが好き。1stはストリングス好きなフォスターがすでにその顔を覗かせつつもブラック・フィーリングも併せ持ったフォーク・ロックで、比較的おとなしめでした。が、この「2」はその豊かな表情が哀愁味を帯び、力強い佳曲揃いなのです。やはり歌メロが良いアルバムというのは残りますね。後に好盤を一枚出しているCarl Gravesがメンバーとして参加。

★★★ 成長の一枚
THE SONS OF CHAMPLIN/a circle filled with love (1976)
 オリジナルアルバムとしては代表作「WELCOME TO THE DANCE」から間を空けて発表された本作は元々持っていたR&B/ROCKのバンド・カラーからさらに多彩な色を見せる、このバンドの成長を感じさせるもので数曲は所謂AORに位置づけされるナンバーもある。シリアスなギターが感動的な“still in love with you”のようなインストが入るところなどはその現れだろう。そうは言っても、セッションシンガーとしても数々のアルバムに顔を出していたビル・チャンプリンの痛快なヴォーカルが「あー、アメリカ!」と単純に喜んでしまう私も居るわけですが。デヴィッド・フォスターのストリングス・アレンジも影響大。

★★  原点回帰で
THE SONS OF CHAMPLIN/loving is why (1977)
 リーダーであるB・チャンプリンのセッション・ワークやソロアルバム発表などで多忙になり、バンドが活動休止になる直前のアルバム。それにしてもメンバーはしっかり顔を揃えている、この結束力はたいしたもの。トム・スコット、アーニー・ワッツらホーン・アーティストのゲストは充実していますが基本的にはこのバンド「そのもの」のアルバム。前作で見せたメロウな部分は少し抑えて、持ち前のファンキー・ロックを前面に打ち出した内容となっていて、“big boss man”などは「どファンク」。この黒さは素晴らしい。痛快なアメリカン・ファンキー・バンドを堪能する一枚でしょう。

★★★ これはソウル
SOUL SURVIVORS (1974)
 再発により初めて手にした一枚。ブルー・アイド・ソウルと70年代前半という不勉強なところのアルバムなのですが、自分としてはまずニール・ラーセン参加で興味を持ったもの。しかしながら内容はギターフレーズの効いた(ソロではなくアレンジの一部としてこんなに印象的なギターは珍しい)“what it takes”や3曲目“city of brotherly love”などはモノホンのソウルと言える音。N・ラーセン節が堪能できる“start all over”では思わずニヤリ。フル・ムーンがイケるなら当然こっちもイケるでしょう。

★★★ ザ・アメリカ
STEELY DAN/katy lied (1975)
 バンドスタイルを保っていたころのスティーリー・ダンと言っても、ゲストミュージシャンが多くやはりレコーディングバンドなのだという印象が強いです。ドラムはJポーカロ、コーラスにMマクドナルドが参加。この頃は曲が比較的万人に聴きやすいメロディー、アレンジなっていますね。

★★★★ これも頂点
STEELY DAN/the royal scam (1976)
 セッション・ミュージシャンの技を活かし構築された新たな音世界。これまでの作品の中では一番アーバン・ポップなアルバム。適度にコンパクトな曲構成や親しみやすいメロディかつ気の効いたアレンジの中で、なんとも気持ちの良いヒネクレ方をするドナルド・フェイゲンのヴォーカルが乗る独特のサウンドは、現在までのAORすべてがこれを目指し、そして超えられなかった存在であった事が良くわかる。「AJA」のような至高の作品とはまた別の、ある意味「お手本」と言える一枚。

★★★★★ 大名盤。
STEELY DAN/aja (1977)
 AORという狭いカテゴリーではなく、すべての洋楽ファンに聴いていただきたい、スティーリー・ダンの最高傑作。必聴です。当時は子供の耳ですから、理解をするのに時間がかかりましたが聴きこむにつれてその凄さがジワジワと伝わってきたものです。今となっては再現不可能な豪華バックミュージシャンにも注目。スティーヴ・ガットとウエイン・ショーターのからみが何回聴いても鳥肌もののタイトル曲といい、音楽史に残る名盤と言いたい愛聴盤です。

★★★ 玄人好み。
STEELY DAN/gaucho (1980)
 頂点を極めた「aja」後、綿密に練りこまれたアレンジ、構成とバックミューシシャンの確かな技術によって届けられた本作品。丁寧に作られたそんな玄人好みの音楽とはうらはらに、アルバム全体としては前作よりも地味な印象、という受け止め方をされてしまう結果となりました。たしかに、「aja」のような高揚感、「peg」のような爽快なアレンジと頭に残るメロディーといった曲がなく、一見派手さの無い後のD・フェイゲンのソロに通ずるスタイルをとった作りとなっています。収録曲も7曲と今では少なく感じられますね(ajaの時はこれが絶妙の曲数だったのですが)。

★★★ 貴重な音。
STEELY DAN/alive in america (1995)
 ライヴ再現不可能とされてきたスティーリー・ダンですが、やってくれちゃいました。正しくは再現不可能なのではなく、スタジオ録音された音と同じ音をライヴで再現することができないのであえてやらなかったわけなのですね。完璧主義者のドナルド・フェイゲンも歳をとって丸くなったわけですな。ベスト盤的要素もあるし、なかなか忠実に再現されているのでこれはぜひおすすめです。

★★ SDとしては・・・
STEELY DAN/two against nature (2000)
 もうここまでくるとライフワークですね。D.フェイゲンの「kamakiriad」に近い音でそのままソロ作としてもおかしくないほど。大きな感動もないのですが、ソロ活動をしてからの彼を好きになったファンにはよろしいのではないでしょうか。やはりここでも50度方向にうまくそらした展開を見せてくれていますし。なにしろ、声と音を聴くと一発でアーティストがわかる個性は貴重です。

★★★★良いです
Steve Kipner/knock the walls down (1979)
 これは名盤。まず楽曲が良い。たしかにこの頃のJ・グレイドンプロデュース作には傑作が多いのですが、書かれた曲、メロディーの良さがさらに押し上げてくる感じで、二人の才能がタイムリーに出会ってできた傑作と言えるでしょう。構成的にアルバム一枚通して聴く事が出来る(そういえば最近はそんなアルバムが少なくなってきていますよね)作りで、重厚感がありつつ、とても爽やか。

★★★ 聴いて意外
Stephen Bishop/careless (1976)
 この、のんびりとした雰囲気。リー・リトナーラリー・カールトンジェイ・グレイドンに、エリック・クラプトンまで参加。バックコーラスにチャカ・カーン!そうそうたるメンバーをバックにしても、ひょうひょうと自分の世界を築き上げる彼はただ者ではないですね。そのイメージから来る音とのギャップを楽しむのもまた良いかも。タイトル曲は彼の持ち味が出た一番の佳曲ですね。

★★★
 マイペース
Stephen Bishop/bish (1978)
 叙情的で、マイペースでのんびりと、ひょうひょうと歌い上げる彼の音楽は、ある意味でAORの本質を見る思いがします。前作にも増した豪華ミュージシャン(Dフォスター、Sクロッパー、Dハンゲイト、Gフィリンゲインズ、Sポーカロ、Rパーカーjr.Cカーン、Nコール、Aガーファンクルetc..)のバックも、あくまでも引立て役にすぎず、主役のボーカルに対してでしゃばる事なく良いスパイスを与えています。本来はこうあるべきなのでしょう。

★★★★
 いいのに
TOTO (1978)
 真っ先に、「TOTOはhydraだ!」と言うロックファンが多いのですが、私は当然このデビューアルバムの方です。まあ、確かに1stらしく、自己紹介的なバラエティーに富んだ、悪く言うと節操のない構成になっていますが、「georgy porgy」なんてフリー・ソウルにカテゴライズされる曲として様々なアーティストにカヴァーされていますし、POPアルバムとすればかなり名曲揃いではないかと私は思うのですが。

★★★ ヒットしました
TOTO/IV (1982)
 デビッド・ハンゲイト、ジェフ・ポーカロ、ボビー・キンボールなど初期メンバーが揃った作品の中でピークを迎えたアルバムと言えるでしょう。今や代表曲とされる「africa」が収録されています。MTVで流れていたのが懐かしいですね。ロック色の強かった2nd,3rdから、今回はよりPOPになってファン層を広げた作品です。

★★★ 名作ですね
WILSON BROS./another night (1979)
 AOR時代の名作がここにも。こうやって聴き返してみるとAORってのはギターの音色に支えられていたのかなーって感じますね。スティーヴ・ルカサーのギターソロがなかったらこのアルバムの存在って今どうなっていたのだろうと。いやしかし、本来はこのメロディーラインとアレンジ、日本で言うAORが一番AORしていたサウンドを楽しむべきアルバムでありましょう。「take me to your heaven」は本当に名曲。スティーヴィー・ウッズがカヴァーしていましたがこれも良い出来でしたね。

★★ AORと言うより
WORKSHY/soul love (1994)
 日本サイドの企画盤として発表。リオン・ウエア「if I ever lose this heaven」、アイズレー「work to do」等いずれもどこかで聴いた事のある名曲のカヴァー集です。ブルーアイドソウルの男女ユニットですが、そこがまた中間的オシャレ・ミュージックとなっているようですね。女性に受けが良いようです。



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