[E〜I]


★★★ アコギ元祖
Earl Klugh/living inside your love (1976)
 日本でも人気が高まってきたクロスオーヴァー・ミュージックシーンにおいて、ギターと言えばエレクトリックであった時代に飛び出したアコギ・プレイヤーの元祖的存在、アール・クルー。これはその名を不動のものにした2nd。とかくTVのBGM的なイメージをもたれがちな音ですがまずは一曲目の“キャプテン・カリブ”。ジェントルソウツが演奏し知れ渡ったデイヴ・グルーシン作のナンバーですがクルーのこれが初演。その攻撃的なソロはBGMなんてもったいないほどのプレイ。もちろんメロディアスで叙情的なギターの魅力を存分に楽しめるメロウ・ナンバーも、今の安易で商業指向なアコギ・フュージョンとは全くの別物。力の入り方が聴けばわかります。

★★★ 定番です
Earl Klugh/finger paintings (1977)
 当時クロスオーバー・フュージョンという音楽が注目されたのは、リー・リトナーを代表とするギター・プレイヤーがこれまでジャズを聴かなかった若いギター小僧に受けたのと、これまではとっつきにくかったジャズが聴きやすくなったということでイージー・リスニング的に聴き始めた大人のリスナーが増えたからだったのでしょう。エレクトリックギター・アーティストに人気が集中しがちでしたが、彼は一人アコースティックギターで不動の地位についたものでした。デイヴ・グルーシンのエレピにのって音楽に夢中だったあの頃が甦ってきます。数曲でルイス・ジョンソンがバックでチョッパー・ベースを弾いていたのも密かに注目されたアルバムだったですね。

★★ ちょとマイルド
Earl Klugh/magic in your eyes (1978)
 デイヴ・グルーシンから離れ、ブッカー・T・ジョーンズのプロデュース作となった4th、邦題「瞳のマジック」。曲の親しみやすさという点ではこれが一番か。参加メンバーも変わり、本作で一番のアクセントとなっているのはグレッグ・フィリンゲインズでエレピでもクラビでもとにかく良い味が出ていますね。その彼が書いた“lode star”は冒頭の古臭いシンセだけが余計ですがその後は一転クールな展開でクルーのソロもキマってカッコいい。ソロ作がフリーソウルで人気のジーン・ダンラップが全曲叩き、クルーが師と仰ぐチェット・アトキンスとの共演などといった部分でも注目の一枚。しかしながら正直なところ前作までがクロスオーヴァーで本作はフュージョン、いや、さらにイージーリスニングに近くなってしまった感はあり。

★★★ 気持ち良し
Eddie Henderson/comin' through (1977)
 UK・EMIのmasters of funk&soulシリーズの嬉しいCD化。エディ・ヘンダーソンではおなじみのプロデュースはこの頃のソウル・フュージョンに良く出ていたSkip Drinkwater(ZEMBU productions)。より耳ざわりの良い音になった本作はサイドメンも「らしい」顔ぶれでギターはリー・リトナーとアル・マッケイ、ベースはポール・ジャクソン、パーカッションにムトゥーメとフィリップ・ベイリーといったところ。ファンキーなリズムの中にこの人のペットが気持ち良く流れていきます。正直なところ同時期のドナルド・バードやフレディ・ハバードらのアルバムよりこちらのほうが好みですね。曲はパトリース・ラッシェン、ムトゥーメ、ジョージ・ケイブルス、そしてE・ヘンダーソン自身が2曲ずつ持ち寄っていますが特にキーボードやコーラスでも参加したP・ラッシェン作のナンバーはこれがまた「SHOUT IT OUT」まんまの鍵盤使いでいいなあ。(何とベースも弾いていますよ。才女ですね)Mtumeの2曲も派手派手でらしさ丸出し、カッコイイです。トランペッターのファンク&ソウルはこの後トム・ブラウンと言う新星が出てくるのですが、全曲インストのトランペットをフィーチャーしたブラック・アルバムでこれだけ気持ちの良いのってあまり無いのではないでしょうか。

★★ サックス好きなら
Everette Harp (1992)
 ジョージ・デュークのバックアップを得て、颯爽と登場した新鋭サックスプレイヤーのデビューアルバム。曲調はキャッチーでキレ味の良い音を出しますのでなかなか爽快です。サックスだけではなくキーボードもこなし、ほとんどの曲を自身が作り、アレンジも行っていますので、マルチアーティストとしての力はかなりあるようです。

★★★★ 満腹だぁ
Flora Purim/everyday,everynight (1978)
 これはアイアートとフローラ・プリムがアメリカのPOPマーケット進出のために作ったブラジリアン・コンテンポラリー・アルバムの傑作です。バックミュージシャンがとにかく豪華ですが、ただの寄せ集めではなくしっかりとそれぞれの個性が出ているところが嬉しい。ストリングスとホーンのアレンジは全面的にミシェル・コロンビエが行い、その縁からか4曲で参加しているジャコ・パストリアスの独特のベースの音色がAOR的なバックサウンドと溶け合っている所はとても貴重な記録でもあります。チェスター・トンプソンとバイロン・ミラーのリズムをバックにジョージ・デュークを中心とする2曲ではしっかりと「らしさ」が出ているし、全体ではテクニシャンでありながら当時ポップ路線に意識を持ったハーヴィー・メイソンのドラムと若いリー・リトナージェイ・グレイドンのギターが聴けるとともに、デビッド・フォスターが参加している3曲は一発でわかるほどローズ&アコースティックピアノの音が際立っています。ジャコパスとからむハービー・ハンコックもいたり、さりげなく流れるデビット・サンボーンブレッカー・ブラザースのホーン…。これだけのメンバーが揃ってもアルバム全体に統一感があるのはM・コロンビエを中心とした曲作りの巧みさにあるのではないかと思います。普通はゴッタ煮になるのですがこのアルバムの完成度は見事。
フローラ・プリムの他のアルバム

★★★ お買い得です
FOURPLAY/the best of fourplay (1997)
 ボブ・ジェームス、リー・リトナー、ネイザン・イースト、ハーヴィー・メイソン!メンバーを見ただけではずれ無しって感じでいいですね。これはベスト盤で、ゲストヴォーカルを迎えての歌ものもしっかりと収録されています。ちなみにLeon Ware/Marvin Gayeのカヴァー「after the dance」、ヴォーカルはEl DeBargeが歌っています。ああ、なるほどね。ベストチョイスですねぇ。

★★  とにかく貴重
Frank Nimsgern/street stories (1992)
 これは、貴重です。多分ドイツのフュージョン・ギタリストだと思いますが、あのジノ・ヴァネリが数曲ヴォーカルで参加しています。「ナイト・ウオーカー」っぽい叙情的な歌がここで聴けるだけで大変価値があります。全体的には明るくダンサブルな曲もあったりして、ギタリストのアルバムというより、トータルミュージック・コンポーザー的な印象をうけるアーティストです。結構聴きやすいサウンドですよ。

★★★ 早すぎたね
FULL MOON (1972)
 これが30年前の音?確かに、早すぎたバンドだったのですね。その後成功したラーセン-フェイトンバンドの前身、真のファーストアルバムです。ニール・ラーセンの作った曲はしっかりと「ジャングルフィーヴァー」序章しているのがステキです。ヴォーカル入りのナンバーもあり、L−Fバンドの音質だけ古く、JAZZ寄りにしたような感じですね。1972年では売れないのも無理はない・・・5年先を行っていたようなサウンドです。

★★  好きなら
FULL MOON featuring Neil Larsen&Buzz Feiten (1982)
 こちらは、ラーセン-フェイトンバンドの2ndという形で日本では発売されていますが、10年前の「FULLMOON」に思い入れがあったのでしょうね。音の方は、POPフィールドへの積極的な傾倒路線をそのままに、ニール・ラーセンのオルガンをフィーチャーしたインストを取り混ぜて、といった1stをそのまま受け継いだ形となっています。バンド名そのままでも良かったかも。

★★★ ジャケと対照的
Gabor Szabo/high contrast (1971)
 実質的にはガボール・ザボとボビー・ウーマックのコラボレーション・アルバムと言える作品。(全7曲中4曲がウーマック作。本人もリズムギターで参加) ジョージ・ベンソンのヴァージョンで一世を風靡した「breezin'」のオリジナルが収録されているアルバムとして有名。弾き口はベンソンと比べるとややルーズなのですが、フレーズそのものの原型は確かにこちらにあります。これがまた当然と言えば当然ながらシンプルな講成でありつつ、ストリングスが入ってくる所で懐かしくもあり、やはりあの「ブリージン」なのでした。白人ヨーロピアンであるザボがとてもファンキーに、見事に黒っぽくなっている様はジャケのイメージも、ハンガリー出身であるという事実も全てぶち壊してしまっていてとても痛快。ジム・ケルトナーのドラミングもカッコ良い3曲目のジャム「fingers」は特にオススメ。1970年と言う時代に音楽における異文化の融合がここにもあった。アルバムタイトルはおそらくそこから来ているのかも。まさにクロス・オーバー。リアルタイムではなかった一枚でしたが、今、リマスターで聴けるとは幸せ。プロデュースはトミー・リピューマなのでした。はは、そうだったのか。

★★ やっちゃったザボ 
Gabor Szabo/macho (1977)
 ボブ・ジェームズのプロデュースによるクロスオーバー花盛りの時代に作られた本作はルイス・ジョンソンのファンキーなベースも楽しめますが、どことなくザボの素朴かつエキゾチックなギターとはミスマッチの印象。一曲目のようなノリの良いハード・ファンクよりも2曲目以降のミディアムな方が渋い音色を生かしていたりします。BJの他E・ゲイル、アイドリス・ムハマッド、ハーヴィー・メイソンらスタープレイヤーに囲まれてどうしてもザボが「やらされている」といったイメージを持ってしまう「時代」の一枚。

★★  サマヨイ2です
Gap Mangione/suite lady (1978)
 ピアニストでフリューゲルホーン奏者、チャック・マンジョーネの兄がこのギャップ・マンジョーネ。それこそ二人とも60年代からジャズ・ミュージシャンとして活動はしていたようですが実際のところは弟のチャックが「feels so good」を大ヒットさせ、兄ギャップも注目されたということでしょう。これはラリー・カールトンのプロデュースによるフュージョン作品ですが、どちらかと言うとカールトンのギターやグレッグ・マティソン、ジェフ・ポーカロ&ロバート・POPS・ポップウェルらのまさしく「夜の彷徨」サウンドばかりが目立って肝心の主役がどこかに行ってしまっている印象。タイトル曲のピアノ・ソロにようやく彼の存在感が。しかしジョー・サンプルを聴き慣れた耳には物足りないところかな。「もうひとつの夜の彷徨」的にコレクションとして持つには面白いですね。まんまな曲もありますから。

★★★ レアグル道だ
Gary Bartz/music is my sanctuary (1977)
 長い活動の中で一番話題になるのがやはりスカイハイ・プロダクションとの音楽製作、ということになるのでしょう。この人の場合はミゼルにまかせっきりではなく自身が曲を作っていますので、ジャズミュージシャンがソウルと融合したレア・グルーヴを自分のスタイルとした代表的な存在のひとり。間にチョコチョコ入ってくるヴォーカル、コーラスがいいですよね。なんとシリータ・ライトもゲスト参加。MtumeBill Summersの二大巨頭がパーカッションを担当、James Gadson、David T. Walkerなどバック陣も見逃せません。

★★ スッキリします
Gary Herbig (1988)
 LAを中心に70年代からAOR,FUSIONなどのサポート・プレイヤーとして広くその名を見ることの出来たSAXプレイヤー、ゲイリー・ハービッグのこれがファースト・リーダーアルバム。この人の音はスッキリとした清涼感がある中にも渋いフレーズがあり好みなんです。80年代後半のレコーディングながら打ち込みを使わずほとんどがハーヴィー・メイソンのドラムとは嬉しい。グレッグ・マティソンprod.の2曲、ビル・チャンプリンのヴォーカルナンバーが良いアクセントに。こういったインストアルバムに入るヴォーカルナンバーはクオリティの高いものが多いですね。

★★★ ソウルなのだ
Gene Dunlap/it's just the way I feel (1981)
 セッション・ドラマーと言うにはあまりにも地味な活動歴であったジーン・ダンラップ。それでもいまだにアルバムを出し続けているのはしぶといの一言。これはそんな彼のファースト・アルバムでフリーソウル・ファンには人気の一枚。これまた地味な女性ヴォーカルグループ、Ridgeway Sistersをフィーチャーした70年代の香りを残すソウル・アルバムとなっています。ドラマーの作るクロスオーバー/ソウルは鍵盤アーティストのそれに比べると一枚落ちるものが多いのですが、タイトル曲はなかなか良い雰囲気だし、ジノ・ヴァネリの“surest things can change”を取り上げるところは素晴らしい。

★★  D&Sなのだ
Gene Dunlap/party in me (1982)
 ファーストから約一年程度の期間で立て続けに発表された2nd。アーティスティックなジャケットから一変、彼の身体の中に作られた家の中で黒人達がpartyをしていると言う(なんじゃそりゃ)俺の音楽で盛り上がってくれよと言わんばかりの楽しげなイメージが、このアルバムを物語っているわけなのかな。一曲目のタイトル・ナンバーからいきなり80年代初期特有のダンス&ソウルの世界。やはりこの路線を辿る人は多かったようで、多少バック陣もパワー・アップ(アール・クルーもしっかり弾いてくれていますヨ)。この後出される無機質ビート傾倒作で単なる流行追いのダッサイ人になってしまった彼ですが、ここまでなら許してあげましょう。

  ちょとダサい
Gene Dunlap/tired of being a nice guy (1982)
 この人、何処へ行っちゃったのかな、と思っていたら、最近またニューアルバムをリリースしたようです。まだ聴いていませんが(^^;。ジャズ畑の黒人ミュージシャンがBCMへ走るのは珍しくないのですが、ここまで売れセンを狙って売れなかった人もいないのでは。かなり、当時のプリンスっぽいサウンドでビッグを目指していますが、あらあらあららってところです。

★★★ これはジャズ
Gene Harris/nexus (1975)
 良く言うレアグルーヴ、ニューソウル色を強く打ち出したジャズアーティストによるサウンドが、クロスオーバーの出現と共にニョキニョキと芽を出し育って行ったこの時期、ジーン・ハリスもその潮流に乗った人でした。その道でブルーノートと言えばマイゼル兄弟が代表的ですが彼が出会ったのはジェリー・ピータース。これはこの二人がガッチリと組んで作っていたBN後期において二作目にあたる作品で、J・ピータースカラーの良く出たPOPなアレンジの中にもハリスの攻撃的なソロが見事に融合しています。このタイプのアルバムとしては珍しくジャズとしても立派に成り立っている一枚ではないでしょうか。これならいつかはスティーヴィーのカヴァーでもやりそうだなと思ったら・・・(笑)。

★★★ 楽しみましょう
Gene Harris/in a special way (1976)
 この人のここらへんのアルバムもジャズ・ファンから見たら邪道系の作品と言う事になるのでしょう。自分のようなジャズをろくすっぽ聴かずにここまで来たものとしてはヴォーカルも入るエンターテイメント性を押し出したクロスオーヴァー/ソウルはとても楽しめてしまうわけでして、アーティストを良く知らなかった事が逆にこの時代の音を素直な気持ちで聴ける・・・災い転じて福となるなんてそんなオーバーな。まあ不幸中の幸いだったりするのです。1曲目であれ?この雰囲気はと思ったら作者はスキップ・スカボロウ。アル・マッケイのカッティングとヴァーダイン・ホワイトのちょっとルーズで跳ねるようなフィンガー・プレイが聴こえてくるのもなるほど。この、今で言うとスムースな音作りはラムゼイ・ルイスを多分に意識したものだったのかもしれませんね。

★★★ ソウルがイイ
Gene Harris/tone tantrum (1977)
 この路線での数作で方向性をまかせていたジェリー・ピータースとのコラボレーションもこれが最後。そのピータース作が2曲、いずれも当時においてはコンテンポラリーなブラックミュージックで楽しい。そしてアル・マッケイ作“peace of mind”は優しいメロディーが意外なミディアムナンバー。いや、なんといっても本作で語られるのが“as”のカバーだが本家でのハービー・ハンコックのソロに勝るとも劣らない、いやいや超えているとも言わせてしまうプレイを聴かせてくれる。パッパラパッパッパ〜のフレーズがすぐに誰だかわかるドナルド・バードも嬉しい参加。愛すべき邪道系ジャズ、ここに極まれり。

★★★ 名盤です
George Benson/breezin' (1976)
 「トミー・リピューマ マジック」って言うのがありまして、この人の手にかかると、ガラッとアーティストが垢抜けてしまうわけなんですよね。このアルバムによって、今まではオーソドックスなセミアコ・ジャズギタリストだった彼が一躍脚光を浴びるわけです。歌う名ギタリスト、ジョージ・ベンソンのスター街道はまさに、このアルバムから始まりました。

★★★ いいライヴです
George Benson/weekend in L.A. (1978)
 「メローなロスの週末」。わはは。時代を象徴してますねー。これは引き続きトミー・リピューマのプロデュース、レコーディング&ミックスにアル・シュミットというワーナー黄金コンビによるライヴ盤の名作。ニール・ラーセンの「windsong」などカヴァー曲もあり、これまでのベスト盤的選曲ではなくオリジナルアルバムのような構成でライヴであるというのがミソです。バックでも弾いているロニー・フォスターが提供した「we as love」はメロディーがどこかジェフ・ベックの「哀しみの恋人達」のよう!?それにしてもジョージ・ベンソン。この後はブラコン界でも大活躍をするのですがとにかくギターとしても名手です。弾いてるなぁー。

★★★ ハマりました
George Benson/give me the night (1980)
 “夜をちょうだい”って言われてもなあ(笑)。当時流行った「クインシー・ジョーンズ-ロッド・テンパートン」ラインにうまく乗って作られた売れセン意識バリバリのPOPアルバムです。しかし、ギタリストとしての個性、力量もあるし、歌もうまいし、曲も良くできていて、ハマったなあ。これ。

★★★ まだまだ行くね
George Benson/20/20 (1984)
 クインシー・ジョーンズ的に当時の最高峰プレイヤーを一堂に集結させ、ひたすら豪華なサウンドを求めるやり方も限界は来ていましたが、ここでも書ききれないほどのメンツを揃えながらしっかりと時代に合わせ、進行形の音を作ってしまうのはさすがと言うべきか未練タラタラと言うべきか。一曲目はメロディ・ラインが素敵なグッド・チューンですがアレンジはしっかりと「80年代」。しかしそれに染まりすぎることはなくスタンダードのカバー“beyond the sea”も収録したりとベンソンのメロウな世界をギターと共に堪能できる安心の一枚となっています。マイケル・センベロはここでも良い仕事をしているなあ。タイトル曲はなんとランディ・グッドラムとスティーヴ・キプナーの共作で、プログラミングとハネるヴォーカルがGOOD。

★★ ヴォーカルです
George Benson/irreplaceable (2003)
 最新作は完全なるヴォーカルアルバムで、上記の「ギヴ・ミー・ザ・ナイト」的ブラックコンテンポラリーとは当然の事ながら全く雰囲気が異なりますが、今の時代にしっかりと対応したR&Bとなっています。ドラムのみプログラミングであとは生楽器を使うまさに「今のブラック」ですが、そんな音の上にヴォーカルとギターのユニゾンが重なると「ああ、ベンソンはここでもベンソンだった」と感じますね。そんなゆったりとした中でラストはリチャード・ボナとのかけ合いという聴かせどころもあったりします。しかし、裏ジャケはまさに「ギターを持った渡り鳥」ですね。

★★ 歌もあるぞ
George Howard/a home far away (1994)
 黒人のソプラノ・サックス奏者です。ソプラノというと、やはりその高音ベースの音色からどこか上品なイメージがあるものですが、このブラック・フィーリングたっぷりのサウンドはいいですね。ケニー・Gよりもこちらのほうが断然好きです。本人によるヴォーカル曲や、JOEのバックグラウンドヴォーカルが入る曲などもありますが、基本的にはインスト中心の構成となっています。

★★★ 優等生。
Gerald Albright/dream come true (1990)
 しょっぱなの「my,my,my」カヴァーは見事。ガッチリとつかみを入れてきた感じでやってくれましたね。黒人らしくR&B調をバックにきれいなフュージョン・サックスを聴かせてくれます。そのままヴォーカルナンバーにしてしまってもいいくらいの気の利いたアレンジでなかなかセンスがよろしいようで。

★★★ 埋もれた名盤
Greg Phillinganes/signficant gains (1981)
 70〜80年代のセッション・キーボーディストとしてスタジオで活躍した彼の、ファーストリーダーアルバム。冒頭の「girl talk」では渡辺貞夫が参加。ジョージ・ベンソン、パトリース・ラッシェンがコーラスだけ(!!)で参加の曲もありと、とても豪華かつ落ち付いたポップアルバムなんですが、派手さがなくて売れなかったのでしょうね。私としては好きなんですが。最近CD化されたようですが、これには驚いた。日本は凄い。

★★★ 永遠のブロウ
Grover Washington Jr./skylarkin' (1980)
 この人のアルバムって全体的に音が渋くて、テクも効かすんだけどそんなのどうでも良いくらい心地良く流れていく曲が多いので「WINELIGHT」あたりを紹介すれば、はい・こういう人ですみたいなところがあるんですが音と節まわしでグローヴァーだろとわかってしまう個性は素晴らしいですね。エリック・ゲイルとリチャード・ティー(うわー主役を含めみんな故人だ。寂しー)のスタッフコンビにラルフ・マクドナルドと、NYリズムの中でゆったりといつものグローヴァー節が流れていきます。GAP BANDの「open your mind」をカヴァーしていて、私もGAPのファーストの中では一番好きな曲だったので嬉しかったなあ。

★★  年に一度は
GRP christmas collection (1988)
 当時のGRPに所属する代表アーティストによるクリスマス・ソングのカヴァー集。チック・コリアリー・リトナー、マイク・イーガン、トム・スコット、デビット・ベノアらがそれぞれ一曲ずつカヴァー曲を収録しています。かなりイイ企画で、その後続編も発表されました。シーズンにはピッタリですね。静かなクリスマスを過ごしたい人はこれをBGMに流してみてはいかがでしょう。

★★★ 再評価だね
THE HEADHUNTERS/survival of the fittest (1975)
 ベニー・モウピン、ビル・サマーズ、ポール・ジャクソン(ベースの方です。jr.ではありません)らのハービー・ハンコックセッションから生まれたファンクバンド。いいですね。この泥臭さ。洗練された音楽が好きだった80年代〜90年代はこのゴリゴリファンクがチト苦手でしたけど、今は逆にとてもカッコ良く聞こえます。貴重な一枚。買っておいて良かった。はは。

★★★ 70sGROOVE
Herbie Hancock/sunlight (1978)
 ハービーに関してはヘッドハンターズに代表される70'初期のエレクトリックファンクや、80年代に一大ムーブメントを巻き起こした「フューチャー・ショック」路線に評価・話題が集まるようですが、個人的には苦手なスタイルのアーティストであり、意欲的に何十タイトルとアルバムを発表しているにも関わらず私は比較的聴いていた(とても評価の低い頃のアルバムですが)この「サンライト」からの数作をご紹介していきます。常に新しい試みを続けて行く姿勢には脱帽ものですが、ここではヴォコーダーを当時いち早く使用し、ついにハービーが「歌い手」となってしまったアルバムです。このスタイルは次作品の「feets don't fail me now」でダンス・ミュージックフィールドにも大きく展開していきました。

★★★ SOULしてます
Herbie Hancock/monster (1980)
 前作「フィーツ」でダンス&ソウルの領域に大きく踏み込んでいった路線をそのまま引き継いで作られた本作。なんといっても一曲目、カルロス・サンタナのギター・イントロがいきなり飛びこんでくる「saturday night」が最大のアピール・ポイント。やっぱりどこでやってもサンタナはサンタナなのでした。ワー・ワー・ワトソンやレイ・パーカーJr.などのファンキー「チャカチャカ」ギターもひたすらソウルなこのアルバムに大きく貢献。最後のロックテイストなナンバーのヴォーカルにはビル・チャンプリンが担当。あまりにもポップすぎて評価の低いこの頃の作品ですが、バックミュージシャン選びにもなかなか細かい配慮がなされているようです。さすがハービーですね。

★★★またファンキー
Herbie Hancock/magic windows (1981)
 前作まではハービーの作るソウルと言ってもヴォーカル面などややソフトな感じのあったのですが、本作の一発目「magic number」では女性コーラス起用などガツンとキメてきました。アル・マッケイのリズムギター、ブラザース・ジョンソンの二人やシーラEを中心とするエスコヴェード一家総動員のパーカッションの参加など、流れとしてはさらに引き続いたディスコ・ソウル&フュージョンなのですがバックをさらに強化してきました。しかし、ハービー自身のキーボードの存在感は失われておらずむしろ「おお、ハービーだわ」と思わせてしまう音の個性はさすがと言うべきでしょうね。

★★  なんとAOR
Herbie Hancock/lite me up! (1982)
 AORバブル期も終末も迎えようとしていたこの時期、決定的な作品が発表されました。なななんとハービー・ハンコックがAORを!?。もちろんこれには賛否両論ありましたが、時代的な背景からしかたがなかったのでしようね。クインシージョージベンソンリーリトナーも、みんなAIRPLAY-TOTOのお世話になった・・・そんなこともありました。ちょっとやりすぎですかね。

★★ クロスしてます
Harvey Mason/marching in the street (1975)
 セッション・ドラマーとしてはMr.とつけたくなるほどさまざまなレコーディングに携わってきた彼のこれがファースト・リーダー作。彼がドラマーのみで終わるタイプではなかったことはこの後の活動でご承知の通りですが、ここではやはりファンキーなクロスオーバー・フュージョンを中心の音としています。ハービー・ハンコックが7曲中4曲参加と、ヘッドハンターズからジェントルソウツへ続く流れのアルバムとして聴き応えも十分。彼のしなやかなドラミングを重厚なポール・ジャクソン、軽快なチャック・レイニーと二人のベース名手がしっかりと支えているのも嬉しい。

★★★ 良い出来です
Harvey Mason/earth mover (1976)
 次作が参加メンバーの豪華さから一番人気を集めているようですが、なんのこのセカンドアルバムもなかなかの顔ぶれですよ。特にシーウインドの1stをプロデュースした縁からかなりそのホーンズを強調したナンバーもありますし、全体としてはハーヴィー・メイソンのドラミングをしっかりフィーチャーしつつ歌モノあり、ファンクあり、ジェントル・ソウツメンバーのフュージョンあり(リトナー/ジャクソン/ラッシェンとのセッション)とバラエティー豊かに楽しめます。ヤン・ハマーとアンソニー・ジャクソンとのトリオによる超ハードセッションにはビックリ。いいなぁー。

★★ ひたすら豪華
Harvey Mason/funk in the mason jar (1977)
 ハーヴィー・メイソンもリーダーアルバムではかなりPOPな作品を発表していましたが、これは参加ミュージシャンの豪華さでは、クインシー・ジョーンズにも匹敵するほどすごい顔ぶれとなっています。ここでは書ききれませんがとにかく恐ろしいくらいの顔の広さです。NYとLAのトップ・フュージョンミュージシャンにエアプレイとTOTOとEW&Fが乱入して、シーウインドとタワーオヴパワーのホーンセクションなんて、今ではとても無理。そこは当時のスター・ドラマーのなせる技というところでしょうか。

★★★ その名の通り
Harvey Mason/groovin'you (1979)
 前作同様豪華なサポート・アーティストを集めて、よりコンテンポラリーR&Bテイストを深めた本作。EW&Fが「I AM」で白人リズム・セクションを起用するきっかけとなったのではないかとの推測がされているほどのアルバムです。たしかに聴きようによってはアーステイストな曲もあり、なによりもファミリーであるBill Meyersが曲を提供しているのですが、これがまたカッコイイ(アースとはまた違ったジャズ・アプローチをしていますが)。デビッド・フォスターと共作した「say it again」は今となってはまったく聴かれないあの頃のファンキー・フォスター節がここでもお目見えします。そしてジョビンの「波」をカヴァーなど、ラストの落ちついた2曲でゆったりとしめくくるとても気持ちのよい作りです。これらはクロスオーバー・イレブンで良くかかってましたね。

★★  ブラコン開花
Harvey Mason/M.V.P. (1981)
 んで、ついにこうなっちゃうわけです(笑)。盟友リー・リトナーは引き続きの参加ですがレコーディングメンバーはガラッと変わり、カレン・フロイドというヴォーカリストをメインに据えて、思いっきりポップなブラック・コンテンポラリーになったこのアルバム。そうですね、このころはクインシーの大当たりもあり、言い方は悪いですが「どいつもこいつもヒット・チャート指向」といった流れがありました。しかしけっして陳腐なものではなく、全編痛快に流れて行くサウンドですのでやはりそこは音楽性の広いアーティストが作るブラック。センスが良い一枚と言えます。

★★★ いいね大将!
Hiram Bullock/way kool (1992)
 この人の持ち味は、「イキの良さ」。曲もそうですが、ギタリスト、ミュージシャンとしてみてもひたすら元気良くパワー全開で、やんちゃ坊主のようなイメージがありますね。今回は数曲リッキー・ピーターソンが参加していて、ボーカル曲もありかなりPOPな展開を見せます。難しい事は考えずに「楽しむフュージョン」ならハイラム・プロックがよろしいのではないかと。

★★★ センス良し
Hiram Bullock/carrasco (1997)
 フュージョン界の暴れん坊小僧、ハイラム・ブロックのラテン・グルーヴアルバム。ボビー・コールドウェル「風のシルエット」、EW&Fの「can't hide love」、スタンダード「チュニジアの夜」、スティーヴィー・ワンダー「don't you worry 'bout a thing」など名曲を数々をラテンタッチで見事にカヴァーしています。センス抜群の好アルバムですね。

★★★ フルーティー?
Hubert Laws/family (1980)
 このカテゴリでのフルーティストと言うとハービー・マンという巨頭がいましたが代表的なのがソウル/ジャズでボビー・ハンフリー、白人でデイヴ・バレンティンやティム・ワイズバーグあたり。しかし他の楽器と比べ大成した人は少ないですね。その中でもジャズ/フュージョンでフルートと言えばこのヒューバート・ロウズがまず挙げられるのではないでしょうか。ロウズ兄弟の中でも最もジャズ寄りであった彼ですが、これはデブラ・ロウズのヴォーカルをフィーチャーしたタイトル曲がなんとも「street life」的なメロディーで人気のアルバム。全体としてはNDUGUとネイザン・イーストのリズムにボビー・ライルチック・コリアのピアノに囲まれたフュージョン・アルバムですが、本人のソロをしっかりと堪能でき、今のヤワなスムース・ジャズとは聴き応えが違いますゼ、旦那。

★★  ドロクサです
Idris Muhammad/boogie to the top (1978)
 ネイティヴなセッションドラマーというとこの人もそうですよね。アシッドジャズ・ルーツ探求的に聴かれるようで再発ものもそんな好みに合わせて出されているようですが、自分としてはフランク・フロイドらのヴォーカルが入ったソウル・フュージョンをやっていたこの頃のアルバムが好きです。アイドリス・ムハマッド自身はすごく泥臭いのですがバックにクリフ・カーター、ウイル・リー、ハイラム・ブロックといったNY系の人々がサポートしてチョッピリ洗練されたところもあり聴きやすい。ジャケ写のサングラスがピカッと光っているところはなんともマンガ的で笑ってしまいますが。はは。

★★ ディスコティック
Idris Muhammad/you ain't no friend of mine! (1978)
 んで、KUDUというやはり泥臭いレーベルからFantasyなんて大手に移り立て続けに出されたアルバムがこれ。いきなり一発目からコーラスが「ディスコ。ディスコ。」なんですけど(笑)。曲のタイトルも「disco man」。とほほ。確かにファンキーさや音の洗練度の上がり方は前作と同じ年に発表されたわりにはそこはFantasy、音質も良くなってます。ハイラム・ブロック作で彼がヴォーカルも担当しているアルバムタイトル曲がまるで別物の仕上がり。やっぱりいいセンスしてますね。まあ、それはいいとしてIdris自身の民族的パーカッションを聴くならラストの「big foot」。

★★ 音は好きです
Idris Muhammad/make it count (1980)
 ほとんど全てをヴォーカルナンバーとした変身アルバム。時代的にも同じようなドラマーがたくさん居ましたので彼もその流れに乗ってしまったのでしょうか。プロデューサーのHerb Jimmersonのkey&arrが大きく影響を与えているようでとにかくそのPOPな内容はこれまでの活動から見て、やっぱりこうなったかと予想できたところではありつつも賛否両論だったことでしょう。確かにラスト“New Orleans”でのファンクを除いたら誰のアルバムなのかわからないほど、Idrisのドラミングは個性皆無。楽しいですけどネ。

★★★ オシャレです
INCOGNITO/tribes,vibes and scribes (1992)
 オシャレな音楽としてアシッド・ジャズがもてはやされた時がありましたが、これはその中でも代表選手ですね。この手のはコンピューターにはあまり頼らずにバンドサウンドの形態をとっていて、ヴォーカル曲が中心であるが、インスト物もかならず取り混ぜる、サウンドはR&Bとジャズ・フュージョンを掛け合せたような・・・といったスタイルで、インコグニートは特に洗練された音で人気を集めました。S,Wonderの「don't you worry ‘bout a thing」に惹かれて購入しました。

★★★★ さらに良し
INCOGNITO/positivity (1993)
 サウンド形態は変わってはいませんが、曲がさらに良くなりました。「still a friend of mine」、いいですねー。MIDI全盛の中で、生楽器にこだわる音はいかにもUK的で雰囲気があって良いです。メロディアスで聴かせる曲が多くなった作品です。

★★★ 深くなった
INCOGNITO/no time like the future (1999)
 一曲目「wild and peaceful」のインパクトによって、久しぶりにインコグニートのアルバムを購入。今までにない雰囲気を醸し出しています。アルバム構成としては、かなりカラフルな内容になっていて、以前のアルバムのような統一感のあるグルーヴが好きな人にはややタルい所もなきにしもあらずですが、出す音の巾が確実に広くなってきているという事でしょう。今後も楽しみです。

★★★ やっぱり良い
INCOGNITO/adventures in black sunshine (2004)
 変わらないというのもまた、バンドやミュージシャンにとって大切な事であったりするのかもしれない。ヴォイス・オヴ・インコグニートとも言うべきメイザ・リークが戻ってきたというのもありますが、何と言ってもサウンド自体が以前、十年前くらいに一番良く聴いていた時のインコと全く違和感なく流れてくるのです。いや、むしろメロディーとアレンジは確実にグレードアップしているのに何も特別な意識はしていないかのような。「まだやっているの?」と言わずお試しくださいな。一曲目のイントロから「あー、やられちゃったよ」と漏らしちゃうくらいのナンバーがバシバシ続きますから。アルバムタイトルそのままにソウルを追い求め続ける永遠のジャズ・ファンクバンド。このままそのまま変わらず、ずーーーっと続けてください。

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