[J〜N]


★★★★ まさに教本
Jaco Pastorius (1976)
 それまでは地味な楽器であったベース(特にエレクトリックベース)に一躍脚光を浴びさせた人が彼なのでした。このアルバムが発表されて、音楽を構成する上でのベースの果たす役割という概念が変えられてしまいました。すべてのプレイヤーの教則本のようなもので、以後さまざまなテクニカル・ベースアルバムが発表されても、この作品が根幹にあることは否めないようです。ハービー・ハンコックがサウンド面で大きく貢献。ドラムスは主にレニー・ホワイトが担当していますが、サム&デイヴによる唯一のヴォーカル曲ではナラダ・マイケル・ウォルデンの渋いドラミングが聴けます。プロデュースはなぜかボビー・コロンビー。

  これもレア?
Jacob Magnusson/special treatment (1979)
 一発屋にもならなくて、消えて行った悲しきアーティスト。一曲目はすごくいいのですが、いかんせん、その他が今イチです。カルロス・リオス(g)がメンバーなんだけど、個性を生かしきれてないし。良く思うのですが、最初1発目だけ良いというアルバムがありますよね。で、なんで他も同じ良い曲を作ることが出来ないのかな、と。最初にレイアウトするくらいだから、自身も「つかみどころ」をわかっているはずなんですけどねぇ。

★★★  良くやった!
Jacob Magnusson/jack magnet (1981)
 ファーストである「special treatment」以来20年、この人の名前を聞くこともなかったし、まったく頭から消えていたアーティストだったのですが、こんなヴォーカルアルバムを出していたとは。しかも日本の企画によって、めでたくCD化されたのだからまったくもって素晴らしい国です日本ってやつは。しかもマイナーレーベルではなくてビクターエンタテインメントですからね。まずはファーストに比べてサウンドの変わりよう。ヴォーカル中心の大変POPな仕上がり、インスト物もカッコいいし一枚飽きずに聴くことができます。ただ、アイスランドの人らしく、良くはわかりませんが言葉が若干ナマッているような。また、ギャラの関係かヤコブ・マグヌッソン自身が中心にヴォーカルをとっておりこれがちょっとあまりお上手ではございませんです。やはり北欧AOR特有の少しクセのあるサウンドを残していますが、これもちょっとたまには毛色を変えて楽しむにはいいのではないかと。なにしろ、とりあえず歌物アリのAOR/フュージョンを買うなら充分これで「当たり」とおすすめはできる内容です。ソングライトにはPAGESの二人やJay Graydonの名が。バックミュージシャンも豪華ですよ。

★★  軽いぞー
THE JAMAICA BOYS (1987)
 すでにスーパースター・プレイヤーとなったマーカス・ミラーがブラコン・スタイルのソロ2作に続き発表したのが、グループ「TWENNYNINE」など当時同じ方向性で活動していたベテランドラマー、レニー・ホワイトやソウル・R&Bを愛しつつジャズのスピリットを持った新進キーボーディスト、バーナード・ライトらと組んだこのジャマイカ・ボーイズ。ここでのジャマイカとはニューヨーク・クイーンズ地区にある街のことでマーカスとバーナードが幼少期に住んでいた場所らしく、音楽的にはこの頃特有のカルさ漂うポップ・アルバムとなっています。つまりは名アーティストらが組んでこんなポップアルバムを出していたという歴史を感じるのにはいいけども、知らなくてもそれはそれでいいのではないか、程度の作品ですね。

★★★ 元祖的だね
James Mason/rhythm of life (1977)
 ロイ・エアーズのアルバムでも顔を見せていたギタリスト/キーボーディストのワンアンドオンリー・アルバム。ソウル感溢れるインストと女性ヴォーカルの巧みな使い方が良い。現在のUKアシッド・ジャズやジャズ・ファンクはこのアルバムの真似事か、と思ってしまうほどその全てがここにあると言ったよう。しかしながら技術的でもなく精神的でもなく歌の良さでもない「音の雰囲気」だけを楽しむ音楽は、当時としては一人のプレイヤーに対する評価の対象にはならなかったようでその意味で「15年早すぎた」アルバムだったかも。唯一CD化されたいかにも英国好みな作品。

★★★ グルグルするよ
James Vincent/culmination (1974)
 カッチョいいなぁ。ジャンルを無視したギタリスト、ジェームス・ヴィンセントのこれがファースト・アルバム。発表は1974年ですが、レコーディング自体は71年〜72年であったそうで、確かに最初の「brain subway」からそんな時代のジャズ/ロックサウンドがゾクゾクするのでした。全体としてはその一曲目でヴォーカルが入る以外はインスト中心のsax,tp,flなどの管も絡むクロスオーバー。それも後のアダルト・コンテンポラリー路線とは対照的なかなりマニアックな音なのです。強いて言うならそのアレンジ力はかなりのモノなのに対しギタリストのアルバムとしてはプレイに際立つものがあまり無いところに評価が分かれてしまうのでしょうか。しかし、自分のような「音を聴く」タイプには70年代前半のインスト名盤!と言いたいところなんですけどね。ベースやドラムの音も、ハモンドオルガンやエレピも、そしてアルバムタイトルや曲名ひとつとっても時代を感じてしまいますが、当時としてはかなり先を見つめていたアルバムだったでしょうに。デジタル・リマスターとは言え、CD-Rメディアでの自身のサイトからの販売(再発)のみとは寂しい限り。海外サイトでカード決済を使って買うこっちの方としてもドキドキしちゃいますしね。興味のある方はどうぞ。ちゃんと届きます(笑)。

★★★★ 隠れ名盤
James Vincent/space traveler (1976)
 現在もマイナーで活動するギタリスト、J・ヴィンセントが76年に発表した「隠れた名作」と言いたい一枚。ジャズを基調としたテイスト、テクニックを持ちながら、そのサウンドはヴォーカル曲を中心としたファンキーなAORとも言えます。76年にしてこの質の高い作品がなぜ表舞台に立てなかったのだろうか不思議なくらい素晴らしいアルバムです。ゲストヴォーカルにピーター・セテラ、バックはハーヴィー・メイソンやNDUGUのドラムになんといってもEW&Fのヴァーダイン&フレッド・ホワイト(!!)。確かにジャズ・ロックをやっていた頃のアースの香りがするリズムが感じられるナンバーもあります。同年代のギター・フュージョンアルバムと比べてみてもセンスの良さという点では一枚も二枚も上手であったと言えるでしょう。

★★★★ これも極上
James Vincent/waiting for the rain (1978)
 前作と変わらず気持ちの良いグルーヴ感で全編一気に聴くことの出来る極上のポップ・インストアルバム。ギターのセンスも良いのになぜメジャークラスの活動をしなかったのか不思議な人ですが、本人の意向はわからないとしても周りから客観的に考えると当時はギタリストのアルバムとしてはもっと派手なものが注目されがちだったですよね。こういうのは今の綺麗にまとまりすぎて味気ない音が蔓延している今でこそ正しく評価されるべきものなのかも。どこか当時のジャパニーズ・アーティストが作る音と共通したフレーズが出てくるのも面白い。

★★★★さらにアダコン
James Vincent/enter in (1980)
 そしてさらにAOR的雰囲気の高まった本作。録音も良くなりました。ジャズテイストを持つギタリストであり、曲を作り、ヴォーカルもこなすマルチアーティストとこのジェームズ・ヴィンセントをあらためて紹介しておきますが、いや、本当に気持ちイイです。この人の一番特筆すべきポイントは「メロディー(和音)巧者」であるという所。悪く言えばギターはうまい、ヴォーカルも普通に聴ける、しかしひとつひとつの個性はあまりない。何よりもメロディーとアレンジの妙を聴くべき人なのかなと。こんな音、意外とありそうで無かった、探していた音に出会った感じです。ケン・ワイルド、ボブ・ウイルソンのシーウインド・リズムが参加。純粋にアダルトコンテンポラリー好きにオススメ!
ホームページがあります→http://www.jamesvincent.net/

★★★★ やったね!
JAMIROQUAI/emergency on planet earth (1993)
 アメリカから来る音楽は打ち込みばかりで食傷気味だった時にこの音は新鮮だったなあ。「too young to die」のサビなんかはスティーヴィー・ワンダー的でもあってかなり注目したものでした。このアルバムはアシッド・ジャズそのものですね。しかしながら10〜20代にもウケたのはJ.K自身がまだ若くてパワーがあったからでしょう。嬉しい音、UKより来たる。

★★★ カッチョイイ
JAMIROQUAI/the return to space cowboy (1994)
 サウンドを聴くと、かなりマニアックな部分もあって、なんでこのグループが日本でドームのような大きなところでライヴができるまで人気が出たのかが不思議だったですが(あ、失礼。根が正直なもので)、日本人の耳もかなり変わったというか、プロモーション攻勢に踊らされたのか、どっちなんでしょうね。いやあ、でもいいですよね、この音は。

★★★★ツボにハマり
JAMIROQUAI/travelling without moving (1996)
 聴きどころが多いです。さらに、音に磨きがかかって、ワールドクラスのバンドになったと言う証でしょう。1発目のヒット・ポップ「virtual insanity」から「cosmic girl」でつかみはOK!さらに気を緩めずにアフロ・ダンサブルな3曲目、そしてミディアム・スロー展開の4曲目への流れが素敵です。全体的にまず万人受けするポップな作りでありながら、バンドの個性を失わせていないところに好感が持てますね。メジャー化大成功です。

★★★ シンプルです
JEFF LORBER FUSION/water sign (1979)
 まだこの手の音楽が「クロスオーヴァー」と呼ばれていた頃、いち早く「フュージョン」を名乗り、しかもバンド名にまでしてしまったのがこのジェフ・ローバー。これはアリスタ時代の代表作とも言える作品で、打ちこみなど一切使っていなかった頃のシンプル編成ながら、メロディアスかつテクニカルなサウンドがかっこいいですね。サンバを取り入れた曲などはニール・ラーセンとイメージがダブりますが、この人の節回しも独特で全然別物。好きですね、こういうの。

★★★★すばカッチョ
JEFF LORBER FUSION/wizard island (1980)
 そして、さらに強力にバンドとしてのグルーヴ感を高めたのが本作。親しみやすさだけでなく、各パートのテクニカルなソロと掛け合いなどスリリングなナンバーが続き、全体のアレンジも綿密な構成で仕上げられています。聴きやすさとカッコ良さを併せ持ったこれぞ「フュージョン」と言える作品。スローナンバー以外はどの曲もアルバムの一曲目に置けそうなものばかり。買って損なし。ケニー・Gがバンドメンバーとしてプロデビューを飾った事でも有名ですが、後のスムーズ・ジャズとはまた違った良いプレイをしてくれています。

★★★ ついにvo物が
JEFF LORBER FUSION/galaxian (1981)
 本作ではついにダンサブルなヴォーカル・ナンバーを作るようになり、80年代に展開されていく一連のジェフ・ローバーサウンドを予感させる作品。ヴォーカリストだけでなくマーロン・マクレインやディーン・パークスなどゲストギタリスト、シーウインド・ホーンズの導入など以前のアルバムよりもさらにPOPで豪華なサウンドになりました。この時期は各アーティストがどんどん進化しているのが手に取るようにわかって面白いですね。しかし、時代的な必然性からかこのアルバムを最後にバンドとしての活動を停止しジェフはソロ・アーティストとして「step by step」、「private passion」らファンキー・ポップなアルバムを発表する流れとなるわけです。

★★★★ 歌もの中心で
Jeff Lorber/private passion (1986)
 80年代のジェフ・ローバーはこのアルバムにつきますね。キャリン・ホワイトとマイケル・ジェフリーズの男女ヴォーカリスト二人をフィーチャーした超ポップアルバム。白人である彼がフュージョンを進化させてダンサブル・ポップの世界に足を踏み入れるにあたって出されたひとつの解答とも言うべき作品です。とにかく曲が良い。キーボーディストが作るこの手のサウンドは自然とリズムよりも音の華やかさに重点を置くようになるのでいいですね。ミディアムな「back in love」、聴いてみなさいあーた。泣けますよー。

★★★ センス良し
Jeff Lorber/west side stories (1994)
 心地良いシティ・フュージョンです。一歩間違うとTVの天気予報とかのバックグラウンドに使われてしまいがちな音ですが、そこはスリリングなキーボードソロあり、エリック・ベネイが歌うボーカル曲ありと、締めるところは締めて全体的に聴き応えのある作りになっています。湾岸クルージングにピッタリです。(^^;

★★★ キメてます
JING CHI  Vinnie Colaiuta Robben Ford Jimmy Haslip (2002)
 心地良さばかりで商業的な意図から作られるサウンドとは対をなすミュージシャンズ・ミュージック。たまにはこんな音を聴きこんでみるのもヨイでしょう。ヴィニー・カリウタ(ds)、ロベン・フォード(g)、ジミー・ハスリップ(b)のトリオによるブルース・ジャズ・セッションアルバム。私にとってギター、ベース、ドラムスからなるトリオ編成は特にロックに関しては一番好きなスタイルで、古くはクリーム、BBA、またRUSHやPOLICE、日本ではピンククラウド(JL&C)などを好んで聴いていたりもしました。R・フォードのブルージーなギターを中心としてクセ者ヴィニーのドラムスとジミーのベースというトライアングルが織り成す硬派な世界を一聴あれ。

★★★★やはり名演
Joe Sample/rainbow seeker (1978)
 当時、クルセイダースの事はほとんど知らなかったのですが、このジョー・サンプルのソロはFMで耳にして思わず買ってしまいました。このピアノにはブっとんだ覚えがあります。で、見事「melodies of love」はスウィート・ピアノナンバーとして人気曲になりました。でも、私が好きなのは「道草」です。ひねくれ者ですから。はは。

★★ 聴きやすいね
Joe Sample/voices in the rain (1981)
 このジャンルでピアノを堪能するアルバムとしての完成度で言えばやはり「虹の楽園」なんですけど、これもまあまあ好きなアルバム。どうも作品作品が段々と売れ筋狙い的に感じられていくのですが、ジョー・サンプルのジェントルなメロディーは変わらず素敵です。「burnin' up the carnival」でのコーラスはフローラ・プリムにジョシー・ジェームス、そしてポーリン・ウイルソンと豪華。なんといってもF・プリムのウニウニヴォーカルは存在感がありますね。 

★★ 円熟してます
Joe Sample/the pecan tree (2002)
 「虹の楽園」からもう20年以上。この人ももういいオジサンになってしまったのですね。大手レーベルを離れた彼が自由にやりたい音楽をやっているという事です。こう言うとクルセイダースの一連の作品や以前のソロ作はみんな商業的な部分に縛られて作られてきたのかと疑問になりますが、人はその時々での考えがあるものでそれはそれ、いいものはいいで私のようなお気楽な聴く側としては「まあまあいいジャン。別に」的スタンスでよろしいのではないかと。音は派手さのない落ち着いた雰囲気ですが、ハワード・ヒューイットのボーカル曲などもあるR&Bスタイルなピアノ・アルバムとなっています。

★★  ギター好きなら
John Scofield/loud jazz (1988)
 パット・メセニー的でもあり、ロベン・フォード的でもある。こう言っては失礼ですが、そんな音と言うと解りやすいでしょうか。旧友ジョージ・デュークを迎え、彼のリーダーアルバムの中ではかなりファンク色の強い作品となっています。デニス・チェンバース(ds)とゲイリー・グレンジャー(b)のリズム隊が強力にファンキーです。

★★★ サキガケギター
John Tropea/tropea (1975)
 ニューヨークのセッションギタリストと言えば、この人も代表的な存在。しかも75年にして初リーダーアルバムを発表するんですから、その後のクロスオーバー・ギタリストブームよりも前にすでにNYでは注目されていたわけなのです。個人的にはデオダート楽団でやっていた時のチャカチャカなリズム・カッティングが印象的なんですが、このリーダー作ではもちろんのソロも含めて色々な味のある音を聴かせてくれます。そして一曲を除きすべてリック・マロッタとスティーヴ・ガッドの左右に分かれたツイン・ドラム!!主役には悪いがこれもまた聴き所。ヘッドホンでどうぞ。

★★★ Mizell好きなら
Johnny “Hammond” Smith / gears (1975)
 ベテラン・オルガニスト晩年のレア・グルーヴ作。やっぱりたまに聴きたくなっちゃうタイプの音ですねーこういうのは。本作は全編、時代の寵児たる存在であったMizell兄弟のカラーで染め上げたフローティング・サウンド。一曲目から二人のヴォーカルが現れて思わずニヤニヤ。ただ、この兄弟プロデュース作ってみんな同じに聴こえてしまうことがなきにしもあらず。だから次の時代に移ったMizellサウンドがあったなら聴いてみたかったような…。ここでのジョニー“ハモンド”スミスはその名に反してエレピを多用していて、古くからのファンには異質の時代であったことでしょう(私はこっち系しか知らないのでなんとも感じませんが)。それでも「los conquistadores chocolates」や「fantasy」などでブリブリのオルガンを聴く事はできたりします。 これはJ・ハモンドのプレイと言うよりは、どちらかと言うとハーヴィー・メイソン&チャック・レイニーによる安心のグルーヴに乗って、マイゼル兄弟の作り出す独特のワールドを楽しむアルバムと言えるでしょうね。

★★ チュルッチュ〜
Jonathan Butler (1987)
 今ではどうって事はない「スムース・ジャズ」ギターアルバムだったりするのですが、一発目の「lies」には当時ブっ飛び。ジョージ・ベンソン以外でここまでイカしたヴォーカルとのユニゾンでギターかましてくれる人はいなかったですから。南アフリカ出身でイギリスに渡り全世界デビューを果たしたという経歴と、なんと16曲収録という大サービスでかなり話題となった新進ギタリストでした。確かに、あの頃はこんなサウンドが新鮮だったんですよね。正確にはワールドデビュー2作目の作品です。

★★★ いいカンジ
Judy Roberts/the other world (1980)
 ジャズ・ピアニスト&ヴォーカルと言う限られたくくりの中で聴いてしまうと、特に歌がうまいというわけではないし、では鍵盤奏者として特筆すべきものがあるわけではなく、では彼女の何が魅力なのかと言うとやはりバンド・スタイルとして作られるブラジリアン、ボサを中心とした広いポップ感覚を持つそのサウンドと、その「たいしてうまくない歌」が妙に良くマッチした全体の「雰囲気」でしょう。でも、スキャットを駆使したヴォーカルはそれはそれでとても味があるモノ。心地良く音を流したい時にはうってつけのアルバムです。

★★★★ 良品ここにも
Judy Roberts/nights in brazil (1981)
 アルバムの中で必ずブラジルの音を入れてきた彼女でしたが、ついにここではタイトルにもある通りそれを前面に打ち出して来た形となりました。彼女のキャラクターとしてもそうした音づくりがビッタシはまる感じで、暖かく、ゆったりと流れていくメロウ・サウンドがとても心地良い。ナイロン弦ギターやブラジリアン・パーカッションもより強調され、そして得意のスキャットとキーボードとのユニゾン決めなどさらにブラジルへの思いがパワーアップされています。古くもなく作られ過ぎに感じる新しさもない自然な「ブラジリアン・フュージョン/ヴォーカルアルバム」。私好みの全体を通じて統一性のあるバンド・サウンド、70年代後半〜80年代前半特有の音として良作。

★★★★ いいなぁー
Jun Fukamachi/ on the move (1978)
 今はもう、すっかりソロピアノ作品アーティストになってしまっている深町氏ですが、以前はこんなイカしたフュージョンアルバムも出していました。故リチャード・ティー、故エリック・ゲイル、スティーヴ・ガッドらSTUFFの面々と、D・サンボーンR・ブレッカーのホーン、B・フィナティーのギター、アンソニー・ジャクソンのベースなどNYフュージョンスターを迎え、イキの良いナンバーだらけです。「departure in the dark」は圧巻!

★★★★ カッチョイイぞ
Jun Fukamachi&NEW YORK ALL STARS/live (1978)
 「on the move」がちょっとした盛りあがりを見せ、ついにNYスター・ミュージシャン総動員でライヴをやってしまった貴重な記録。これがまた、みんな物凄い力の入れよう!!こんなにリキ入ったライヴはそうそうないのでは。スティーヴ・ガット叩きまくり、ブレッカー兄弟、デビッド・サンボーン吹きまくり、リチャード・ティー、スティーヴ・カーン、アンソニー・ジャクソン弾きまくり、最後は15分にも及ぶマイク・マイニエリの名曲、「loveplay」で締めてくれます。いまだ名盤との誉れ高いライヴ2枚組。

★★★ ジャジーfunk
KARMA/celebration (1976)
 アーニー・ワッツやオスカー・ブラッシャーといった数多くのセッションをこなす名ホーン・アーティストがグループメンバーの一員としてジャケットにも堂々と並んでいる姿は珍しいのでは。これは鍵盤奏者レジー・アンドリュースが中心となり彼らと共に結成したジャズ・ファンクグループ。7人組と大所帯なのも70年代的。下地にジャズがあるだけに音やプレイの安定感はさすが。ソウル寄りかつアフリカンなところもあるのはアースを意識してのことかな。さりげなくシリータデニース・ウイリアムスがヴォーカル・ゲストで参加してます。

★★★ 教授色です
Katsumi Watanabe/KYLYN (1979)
 プロデュース&key 坂本龍一、 ds ポンタ村上、高橋幸宏 p&vo 矢野顕子、b 小原礼 ts 清水靖章、 perc ペッカー … やはりかなり当時のリューイチカラーが強いポップな仕上がりになっていますが、ご覧の通りの豪華メンバーでかなり話題になったアルバムです。日本でもアメリカでも、バックミュージシャンで聴く音楽を選択する、というスタイルが定着されてきた時代でした。   

★★★★ うおおっ
KEEP/keep alive (1995)
 深町 純(key)を中心に、山木 秀夫(ds)、和田 アキラ(g)、富倉 安生(b)の4人によるスリリング・セッショングループ、KEEPの1994年冬に行われたライブを収録した貴重なアルバム。しょっぱなにいきなり「departure in the dark」をやってくれてます!なんと約13分にも及ぶ気合の一発。和田アキラのギターが泣いております。日本のフュージョンはほとんど買わなかったのですが、深町さんの特に哀愁を帯びた音は好きでしたねー。他にも全員のユニゾンで合わせるハイテンションなナンバーなど、カッチョイイですぞ。良い意味での「日本的」な音を堪能できる一枚です。

★★★★★  凄い。
Keith Jarrett/the koln concert (1975)
 クラシック、ジャズというカテゴリーを超えて、ピアノ・アートと呼ぶにふさわしいソロ・ピアノアルバムの歴史的名盤。楽譜なしの完全なインプロビゼーションによるそのライヴの記録は、すべての音楽ファンに一度は耳にしていただきたいものです。フュージョンではないのですが、良い作品として紹介させてください。

★★  ピアノジャズ
Keith Jarrett/saturday,june 4th 1984 (1995)
 ゲイリー・ピーコック(b)や、五重塔シンバルのジャック・ディジョネット(ds)とのトリオ編成でのライヴです。初っパナはスタンダード「枯葉」から。スリリングなインプロあり、じっくりと聴かすピアノあり、ピアノトリオの真髄をライヴで体感したい時に。あ、これももろジャズです。フュージョンではありません。でも、やっぱりキースはソロかなぁ。

★★★★ LA音です
Kenji Omura/kenji shock (1978)
 なぜこの作品を紹介する気になったかというと、一言で言えばそのサウンドから。このホームページをご覧いただいている皆さんにはおすすめできる内容ということですね。ギターのテクニック云々で語るアーティストではないし、そういう意図でこのホームページを作っていませんし第一そんなもの語れません。前作「ファースト・ステップ」は深町純prod.のいかにもなジャパニーズ・フュージョンですがこちらはハーヴィー・メイソンprod.のLA録音。ポーカロやルカサーにグレッグ・マティソンまで参加するアレンジは今にもPAGESあたりのヴォーカルが絡んできそうなほど。今思うとシーウインドと言い自らのアルバムと言い当時のHメイソンっていい仕事してますね。純粋にフュージョンしていた大村さんのベスト・アルバムと言えるかな。

★★★ 音が若い!
Larry Carlton (1978)
 カールトンもすっかり歳をとって、ハゲちゃいましたねえ。これはまだロン毛でバリバリ、リー・リトナーとともにフュージョンギターブームの火付け役となった有名盤です。一時はクルセイダースのメンバーでもあった彼ですが、このアルバムを聴くと「真っ白けっけ」さが良くわかります。ドラムスは今は亡き、あのJeff Porcaroが全面的に叩いていますよ。

★★★★ ワオ!くる〜
Larry Coryell-Alphonse Mouzon/back together again (1977)
 ラリー・コリエルとアルフォンス・ムーゾンのクセ者二人が組んだフュージョン・アルバム。たしかにギターとドラムスがしっかりと主役を担った音楽となっていてとてもカッコいい。心地良く流れるスタイルの曲もあれば、二人がユニゾンバシバシ決めるジャズロックもあり、全体的には決してヤワな作りではない事は確か。A・ムーゾンのリーダーアルバムはどちらかと言うと苦手だったのでコリエルのようなギタリストとのユニットで彼の魅力が最大限生かされたという印象。これは一枚持っていて損なしです。

★★★ 売れたよね
Larsen-Feiten BAND (1980)
 よくやった!確かにFULLMOONを知っている方なら、納得のアルバムですが、おおよそ「JUNGLE FEVER」のニール・ラーセンのイメージからは、想像のつきにくい商業POPナンバーがめじろおし!早すぎたバンド、FULLMOONの復活です。もちろん、独特のオルガン・インストルメンタルナンバーも歌ものの間にしっかりと収められています。 あ、AORで紹介した方が良かったかな。

★★   たまには…
Lee Oskar (1976)
 知る人ぞ知る「WAR」のハーモニカ奏者、リー・オスカーの初ソロアルバムです。side-Aの組曲仕立てナンバーがカッコ良くて、つい買ってしまいました。スティーヴィー・ワンダーともトゥーツ・シールマンスともまた違った趣のハーモニカ・サウンドが聴けます。どちらかと言うとフュージョンファン向きの音をしているアルバムです。

★★★ まずこれです
Lee Ritenour/captain fingers (1977)
 ギター・フュージョンブームを巻き起こした中心人物の初期作品。EPICから出せたのは良かったですよね。おかげでサウンドもアカ抜けていてグッド・サウンドになりました。スリリングな曲調もありテクニックも堪能できます。「isn't she lovely」ではビル・チャンプリンがボーカルをとっていて、ブレイク前のDフォスター/Jグレイドンや、ジェフ・ポーカロのドラムプレイを聴くことができます。

★★ がんばれ貴公子
Lee Ritenour/feel the night (1979)
 ラリー・カールトンの「夜の彷徨」の登場により、クロスオーバー・ギタリスト第一人者として作らざるを得なかったアルバムといって良いのではないでしょうか。ロック的なアプローチをするにあたって選ばれたのはカールトンがグレッグ・マティソンだったのに対しリトナーはデビッド・フォスターだったのでした。しかし、やはり彼はハードに攻め一本で行く、というわけには行かず元々好きだったナイロン弦を入れたり、アフロな「uh oh!」なども収録するあたりはすべてを捨てて対抗したいとまではいかなかった気持ちが読めるような。ドラムスもジェフ・ポーカロではなく全編スティーヴ・ガッドですしね。

★★ リーリトAOR
Lee Ritenour/rit (1981)
 おいおい〜。リー・リトナーまでAORだよ〜。デヴィッド・フォスターハーヴィ・メイソンと共にプロデュースされた「流行もの」アルバムですが、当時としては、しかたがなかった流れなのでしょうね、やっぱり。日本ではかなりウケて、ヴォーカルのEric Taggが日本企画のソロ・アルバムを出していたりしましたね。

 チト、つらいか
Lee Ritenour/rit2 (1983)
 とりあえず、つまらないです。これは、RIT1の勢いで無理やり作ってしまったようなアルバムですね。曲が良くありません。いくらAORでも軽すぎます。クラーク・デュークプロジェクトの2でも同じような印象を受けましたが、やはり、企画ものはなんでも2発目が1発目を超えることはないようです。

★★ ドラマーなのだ
Lenny White/big city (1977)
 しかしまあ、後にブラコンの世界に目覚めてしまうドラマーという所はナラダ・マイケル・ウォルデンと共通する部分があるのですが、この人はすべてにおいてBランクとなってしまうのは惜しい!これはその悪しき目覚め前のフュージョンアルバムで、参加ミュージシャンの多彩さが興味深いですね。タワー・オヴ・パワーのバックアップによるブルースジャズ楽団的なタイトル曲、ブレイク前・若いマーカス・ミラーの粗いチョッパー・ベース、あのニール・ショーンと当時活躍したレイモンド・ゴメスのツイン・ギターによるジャズロックなど、バラエティに富んだ面白い作品です。ハービー・ハンコックも参加しているのでこうなったらジャコも乱入していればもう少し知名度が上がったアルバムになったかもしれませんね。

★★★ そしてポップに
Lenny White/streamline (1978)
 時代背景やジャズからという似た経歴を持つ他のドラマーがPOP路線で開花をしはじめた頃の影響もあったか無かったか、この人もこの後TWENNYNINEの結成など同じ道を歩みます。このアルバムはその布石とも言うべき存在ですかね。ラリー・ダンがプロデュースと言うのも興味深いし、実際に彼の煌びやかなシンセも出てくるのですが、ここではまだまだブラック・コンテンポラリー一辺倒というわけではなく、彼のドラミングを生かしたインスルメンタルの中にヴォーカルナンバーを数曲はさんだポップ・フュージョンアルバムとなっています。

★★  カラフルです
Leon NDUGU Chancler/old friends new friends (1989)
 ドラマーとしてサンタナやウエザー・リポートジョージ・デュークなど数々のセッションに参加している彼の密かに発表されたソロアルバム。「レオン・チャンクラー」よりも「ンドゥグ」の呼び名のほうが通ってますね。定番的に一時はブラック・コンテンポラリーの世界にも踏み込んだこともあり、これまでのそんな音楽的経歴を集大成したような内容となっています。まんまサンタナのような曲もあり、ネイティヴなドラマー・アルバムとしても楽しむことができます。キーボードにパトリース・ラッシェン、ベースにアルフォンソ・ジョンソンが参加。
THE CHOCOLATE JAM CO./the spread of the future (1979)コチラ
NDUGU & THE CHOCOLATE JAM CO./do I make you feel better? (1980)コチラへ。

★★★ なかなか
LEVEL 42/forever now (1994)
 ベースのマーク・キングを中心としたUKジャズファンクバンドの完全POP化路線アルバム。1曲目からカマしてくれます。白系ポップ・チューンのオンパレードですよ。ただ、こういったサウンドをバンドとして続けて行くのは、MIDIサウンド全盛の今となっては無理があるのでしょうね。これを最後に解散をしてしまいました。

★★★ イケますが
LIPS (1979)
 ここでのリップスは「ファンキータウン」のではなくて(笑)、スタンリー・クラークのバンドで活動をしていた(と記憶していたけど違ったかな)ブラス隊のことで、ここでもS,Clarkeプロデュースという強力なバックアップがあったにもかかわらずたいして売れなかったワン・アンド・オンリーのアルバムです。ベースは彼とマーカス・ミラーが半々で担当、ドラムはレニー・ホワイトとNDUGUが半々、他にはロニー・フォスターやレイモンド・ゴメスなどなかなか私好みのバック・サポート陣で音もかなりファンキー・ポップなイケるクチだったりします。なんで売れなかったんだろう?やっぱり以前はテクニカルな作りじゃないとダメだったのかしらん。

★★ キラメキます
Lonnie Liston Smith/loveland (1978)
 フュージョン・クロスオーヴァーブームが始まっても、独自の路線を歩みつづけたロニー・リストン・スミス。「froating through space」のような煌くオルガン・サウンドが彼の真髄と言えるでしょう。デビュー間もない若き日のマーカス・ミラーが参加。ブラッキー・フュージョンの世界をもっと知りたい人はこの人を知っておくのもいいですよ。

★★  独特だよね
Lonnie Liston Smith/dreams of tomorrow (1989)
 以前はただの脇役であったマーカス・ミラーがこの時代になるとプロデューサーに出世してロニー・リストン・スミスをサポート。もちろんベースとキーボード、コーラスとプレイヤーとしてもほぼ全面的に参加しています。マーカス作のブラコン的ヴォーカルナンバーが初っ端に来ますが、やはりLLS独特の煌くエレピサウンドを中心に渋く渋〜く流れていく作りになっています。夜が似合いますね、この人は。

 志はある音だが
Lyle Mays (1986)
 これは、まさに白人が作り出す音ですねー。パット・メセニーグループで音の核になっているのが彼であることが良くわかります。ポップでもなければテクニカルでもなく、はたまた癒しの音楽かと言うとそうでもない。芸術性が多少あるようには感じますが、これを聴く人っていうのは実際にキーボードをやっている人かメセニー・ファンくらいなんじゃないかなと思うくらい間口の狭いアルバムです。自分は苦手。

 個性が欲しいね
Mark Colby/one good turn (1979)
 ボブ・ジェームス主宰のタッパン・ジーレーベルから発表された当時の新進サックス奏者の2ndアルバム。ゲイリー・キング&スティーヴ・ガッドのリズムにエリック・ゲイルやスティーヴ・カーンのギターと、NYサウンドの中で主役のMコルビーもなかなか表情豊かに吹いています。それでもSカーン作の「macbeth」、マイク・マイニエリのヴァイヴが目立つ「peace of mind」など、いかんせんバックの力に頼りすぎている所がアーティストとしてその後名を残せなかった要因の一つでしょうか。

★★ 音はきれい
Mark Douthit/groove (2002)
 ど・がつくくらいの典型的スムース・ジャズ・サックスアルバム。とにかくなーんも考えずに気持ちよく流したい時にはうってつけの音ですね。ジノ・ヴァネリボビー・コールドウェルなどおなじみの名曲カヴァーが多く、確かに個性に乏しいアーティストだけにこの選曲は大変ありがたい。ソプラノからバリトンまでサックスなら何でも吹いちゃうようですが、基本に出す音はアルトです。grooveとタイトルする通り音はグルーヴする上質のBGMフュージョン。これも湾岸クルーズ・アルバムとしてピッタリ。

★★★ 渋いですね
Mark Whitfield&JK/soul conversation (2001)
 ジョージ・ベンソン、ウエス・モンゴメリーらセミ・アコースティックのギタージャズに影響を受けたというマーク・ホイットフィールドの純粋なギターアルバム。もう一人のギタリストJKとのコラボレーションでクールなギター・デュオサウンドが聴けます。ハービー・ハンコックがキーボード・ソロを取っている曲が数曲あり、聴き応えのあるスムース・ジャズですね。

★★★ 熟成品です
Max Middleton & Robert Ahwai/another sleeper (1979)
 時代の産物なんてミもフタもない言い方をされてしまうのかもしれませんが、英国ソウル/ジャズ/ロック・シーンの中心人物であった二人が「ついに」タッグを組んで作られた唯一のアルバム。第二期ジェフ・ベック・グループ〜ハミングバード、そしてゴンザレスの頃のような音からの印象だと少し軽く甘い、それこそ「フュージョン・ミュージック」になっていますし、派手な演奏力に眼(耳)がいきがちだったその当時ではけっして傑作どころか佳作としても評価が難しいところの作品であったかもしれません。確かにそのかなりアメリカナイズされた心地良さは、荒削りながらも独創性豊かな英国人によるファンキー・ロックの解釈が個性となって輝いていた以前の活動から比べると拍子抜けしてしまう内容なのでしょう。そう、確かにロバート・アーワイのギターはおとなしすぎる。しかし、ある程度落ち着きの出てきた今の耳で聴くとアルバム随所ににじみ出てくる音楽センスのレベルの高さを感じさせるフレーズやアレンジが思わず「くー、ニクイ!」と言わせてしまう、そんなアルバムだったりします。やはりこれは全8曲中6曲を作ったマックス・ミドルトンの力が大きいんだろうなぁ。この人のソロは本当にいい味。さりげないんだけどやって欲しい事をちゃんとやってくれる。職人ですね。いや、アルバム最初を飾る“dance by the light of the moon”で当時では一番のスター・プレイヤーであったジョージ・ベンソンリー・リトナーを足して割ったようになっちゃってるR・アーワイも微笑ましかったりするのですが。
 二人の他はリチャード・ベイリーのドラムとクマ・ハラダのベースというゴンザレス・リズムがしっかりと音を固めてくれていて、カラフルかつ、成熟した味わいを持つこのアルバム、駄作と感じて封印していた方も改めて聴き直してみてはいかがでしょうか。

★★ こうなりました的
Michael White/white night (1979)
 最近では「プネウマ」等のスピリチュアル・ジャズ期アルバムがCD化されているヴァイオリニストの「愛すべき駄作」。ジョージ・デューク・プロデュースによる「the X-factor」ではファンク〜ジャズロックありの良質クロスオーバーだったのですが、ここでのプロデュースはついにウェイン・ヘンダーソンに。この頃のW・ヘンダーソンはビリー・コブハムの「B.C.」といい、ジャズ・ミュージシャンを無理やりソウル・フュージョン化させてしまうことに躍起になっていたようで、時代の流れからそれを推し進めていたレコード会社の意向もあるとは言え、本人のアーティスト性からはかなりギャップ感のあるPOPな作品を乱発してプロデュースしていた時期でした。しかしここではb,ds,g,keyのみの比較的シンプルなバンド構成をとっていて、あまり大袈裟にエンターテイメント性を押し付けていないところは良いかな。ヴォーカルが入ってしまうのでやはり全体的には軽い仕上げになっていますが、しっかりとM・ホワイトのヴァイオリンソロもありそれなりに「意味のある」内容。絶対的にCD化などありえない安っぽさはあるのですが、一曲目のいきなりの”get back“や”リキの電話番号“などカバー曲もあったりと、この頃の音に親しみのある方には許せるアルバムではないかと。フリーソウル〜クロスオーバーのコンピレーション作りには良いネタがあるかもしれません。

   超アメリカ的
Michel Berger/dreams in stone (1982)
 D・ハンゲイト、J・ポーカロ、S・ルカサーらTOTOのメンバーと、バジー・フェイトンロベン・フォードまで参加しているので何かと思って買ってみたら、とっても白いフュージョン作品でした。かと言ってテクニック的に聴かしどころがあるわけでもなく、徹底した白人向けBGM系アメリカン・ミュージックです。本人はフランスの人らしいですが。個人的にはちょっと苦手な部類ですね。これは。

★★Europe的です
Michel Colombier (1979)
 フランスのピアニスト/作曲家であるミシェル・コロンビエがアメリカのそうそうたるミュージシャンと共に製作したフュージョンアルバムがこれ。サウンド的には同時期だったこともあり、深町 純&ニューヨーク・オールスターズに共通したゴージャスな雰囲気がありますが(ドラムはスティーヴ・ガッドとピーター・アースキン)ここでのギターはリー・リトナーとラリー・カールトンが弾いています。そして、なんといっても全11曲中8曲とほとんどの曲でジャコ・パストリアスが参加しているというのも面白いですね。ここでもかなり存在感があり、ジャコの参加セッションとしては音楽的にも異例の事ではなかったのでしょうか。

★★★ いかにもNY
Mike Mainieri/loveplay (1977)
 白人らしい品のある音で同じヴァイヴ奏者でもロイ・エアーズとはまた違ったフュージョンを聴かせてくれる、当時としてはかなり人気のあったアルバムです。後にステップス、ニューヨーク・オールスターズ(深町 純)のリーダー的存在として活躍した彼のソロ代表作。デビッド・スピノザ、ジョン・トロペイのギターにデビッド・サンボーンなどNYフュージョンの真髄を堪能できます。ウォーレン・バーンハート(key)が地味ながらいい味付け。ホール&オーツ「サラ・スマイル」のカヴァーとタイトル曲がハイライトですね。

★★★ 白が音は黒し
Miroslav Vitous/magical shepherd(1976)
 イメージ的にはミロスラフ・ヴィトウスと言うとまず有名な初期ウェザー・リポートのベーシスト(これがまた少し苦手)で、しかも白人(チェコ出身だそうです)、これまた苦手なECMで活動、家には60年代にロイ・エアーズがどジャズ・スタンダードを演っている中でなんのことはないベースを淡々と弾いていた、というLPが一枚あっただけでいまいち食わず嫌いな人でしたが、これはかなりジャズ・ファンクしていてヨイですぞ。それというのもローズやクラヴィネットで全面的にバックアップしているハービー・ハンコックの力もあるのですがまず感じたのはファンキーさでは小気味良いグルーヴを叩き出すジェームズ・ギャドソンやジャズロック的なナンバーではジャック・ディジョネットのおかずバシバシなドラミングが一番効いているのかも。一曲目の11分にも及ぶ「basic laws」なんてファンクのお手本のような曲。これは夜よりも朝、出勤前の電車の中で音量を大きめに聴くとテンションが上がって意外とハマルかもしれませんね。ジャケット写真もいろいろな意味でスゲーなぁ。本の上にガイコツのせるのやめろよ。

★★ ダンサブル!
Murcus Miller/suddenly (1983)
 新鋭超テクベーシストが鳴り物入りでのデビューアルバム、と、思いきや売れ筋狙いのブラック・コンテンポラリー路線でした。久保田利伸のやはりデビューの頃のような曲調と言ったらわかりやすいかな。(私としては好きでしたが)今の音楽家&ベースプレイヤーとしての彼とは、かなりかけ離れています。彼にとって、封印してしまいたい時代だったのかも知れませんが。

  安っぽいです
Murcus Miller/murcus miller (1984)
 正直、うわー、つまんなーい。です。ファーストアルバムはそれなりに許せる内容だったのですが、何か、ファーストがそこそこ売れたので、同じように売上を狙ったか、それとも契約の関係で無理やり製作しなければならなかったのか、ダンサブルな打ち込み多用のブラコン・サウンドですが、とにかくつまらないです。本国で全くCD化の気配もないのもうなずける、ちょっと聴いてて疲れる作品ですねえ。

★★★ 良しこれだ!
Murcus Miller/the sun don't lie (1993)
 ワーナー時代のブラコン路線から約10年、その間レニー・ホワイトとの「ジャマイカ・ボーイズ」としての活動もありましたが、遅れ馳せながら、と言うか、やっとベーシストらしいアルバムを作ってくれたという感アリの一枚。このアルバムを境に、後の作品も本当に自分がやりたい音楽をやっているようです。初期の作品に(?)が付いていた人も納得。

★★★★ 本格化
Murcus Miller/tales (1995)
 しかしまあカッコイイ人ですね、マーカスは。ジャケットのインナーにある彼の子供達がまたカワイイんだこれが。小さいけどリズム感はいいのだろうなあ、なんて意味の無い事ばかり考えてしまいますが。私が密かに気に入っていたEW&Fの「Brazilian rhyme」をカヴァーしてれました。マーカスも同じ思いだったかと思うとウレシくなっちゃいますね。

★★★★ 円熟の味
Murcus Miller/M2 〜power and grace〜 (2001)
 久しぶりに届きましたよ、マーカスの新作。副題に「power and grace」とある通り、力強さと優しさを併せ持つマーカス・サウンドになっています。テクで押すだけの自己陶酔型アーティストが多い中、確かな技術に余裕を感じられ、しかもまず「音楽」を主点に置いた彼のスタイルには毎回ながら共感を覚えます。なおかつ、しっかりとベーシストのアルバムなのです。これですよ。

★★★ soulしてます
MTUME/kiss this world goodbye (1978)
 ジェームス・ムトゥーメとレジー・ルーカスを中心とするソウル・ファンクバンド、ムトゥーメ(エムトゥーメイ)の記念すべきファースト・アルバム。J・Mtumeがマイルスバンド出身なのでこちらのコーナーですが中身は完全なBLACKです。「JUICY FRUIT」に比べるとロイ・エアーズライクなオープニングで始まる所なんかfreesoulな部分もありありで、ファンクナンバーもドス黒さ漂うこれぞ70年代BLACK。インストの「love lock」や「the closer I get to you」のような名スローナンバーが収められているのもこのアルバムの価値を高めているところですね。

★★ 安心のソウル
MTUME/in search of rainbow seekers (1980)
 ファンク・バンドとして完成されたサウンドを感じることが出来る本作。その後このバンド形態の音から進化し、エレクトリック・ファンク名盤「JUICY FRUIT」を発表する流れとなるわけですが、ここではエンターテイメントなソウル/ファンクからメローまで温かみのある音が中心。一曲目の“give it on up”のイントロからMtume/Lucas流ブラック全開。元々はジャズ畑でならしたプロのミュージシャンが作るプロのエンタメ・ソウル。んー、安定感ありますね。

★★★ これもドラマー
Narada Michael Walden/garden of love light (1976)
 ソロとしてはファーストとなるアルバム。実は彼の作る音世界としては一番魅力的なのでは。まずはドラマーとしての彼があり、サウンドクリエーターとしての彼もあり、1976年時点で、様々なジャンル・カテゴリの壁を越えて自由な発想から音楽を作りたいという姿勢がうかがえます。後に彼が目指す「ヒット・チャートを意識した曲作り」とはまた違った独特のPOP感が漂うフュージョンアルバムとなっています。バックはレイ・ゴメスのギター中心とはいえ一曲ずつジェフ・ベックとカルロス・サンタナがゲストのナンバーあり、ベースはウイル・リー、キーボードはデビッド・サンシャスという布陣。そう、70sのスタンリー・クラークとも共通するものがありますね。

★★ B級ブラコン!
Narada Michael Walden/awakening (1979)
 ついにナラダがサタデー・ナイト・フィーヴァーしちゃったブラコン好きならよい意味で、ドラマーの彼が好きだった人には悪い意味でターニングポイントとなった作品です。アルバム前半をNY録音、後半をLA録音、バックミュージシャンもそれに応じて構成されており、個人的にはやはりあっさりとしたLA音の方が好きですね(ジェイ・グレイドンの名脇役ぶりも堪能できます)。NY録音のいかにも売れセン狙いブラコンはちょっとゴメンナサイってところです。しかし、これを機に彼は一気にヒット・プロデューサーの道を歩むこととなるのですが。

★★ 笑顔がナラダだね
Narada Michael Walden/the dance of life (1979)
 しかしまあ、このベタなディスコ・サウンドが好きか嫌いかは別にして、ナラダはこの後アメリカンPOP界のビッグ・プロデューサーとなって行くのです。彼の場合はこの路線でも変にアーティスティックなこだわりと言うかプライドみたいなところが無く、POPはPOPだ、みんなが楽しみ、喜んでくれればいいみたいな徹底された商業指向が逆にわかりやすくて良かったのかもしれませんね。このアルバムからNYでもLAでもなくサンフランシスコ録音という所も音のベタさ満開です。

  ディスコてっく
Narada Michael Walden/confidence (1982)
 元々ジャズ畑のアーティストでR&B系のプロデューサーになる人はかなり居ましたが、メジャーに大成功したのはジョージ・デュークとこの人が代表的ですね。でも、正直に言うと個人的にはナラダのゴテゴテとしたブラックは好きじゃないんですよ(その割には何枚も買っていますが)。G・デュークと比べるとサウンドの作りがB級ブラコンなんですね(あ、失礼シマシタ)。やはり、そこは様々な音が作れるキーボーディストとドラマーとの違いから来るものでしょうか。でも、人柄自体がそのまま出たような音なので爽快な80'Sブラックが好きな人には結構おすすめだったりします。

★★★ 聴きごたえあり
Narada Michael Walden/the best of narada michael walden (1995)
 ドラマーとしてリーダーアルバムを出していた初期の作品から、やがてはBCM界のヒット・プロデューサーに至るまでの彼が一枚に収められています。彼の作るBCMは「いかにも…」という感じで苦手なのですが、初期の作品はインスト、歌ものどちらも爽やかなサウンドでいいですね。一人のアーティストの変遷を見るようでとてもオススメなアルバムです。

★★  ヴァイオリン。
Noel Pointer/hold on (1976)
 ジャズ・フュージョンバイオリニストという希少なアーティストの作品です。この手で代表的なのはジャン・リュック・ポンティ、ステファン・グラッペリあたりですが、この人は黒人なので、一耳するとすぐわかるデイヴ・グルーシンのエレピをバックに、いかにも黒系の親しみやすいサウンドとなっています。クインシーの「ルーツのテーマ」、スティーヴィーの「スーパーウーマン」などのカヴァーも収録。

★★ 無理があるような
Noel Pointer/direct hit (1982)
 そして、彼も'80s FUNKの道を歩むのでした。あっと言う間に過ぎ去りぎみのフュージョン・ブームから次へ行くにはこの方向性しかなかったのでしょうか。彼に限らずこの時期はそんなアーティストが多かったように思います。しかしながら二曲目のミディアム・スローな展開の中挟まる彼のソロは雰囲気良し。ブラコン・コンピに一曲混ぜたらハマルかも。サテこのようなヴォーカルナンバー中心のソウル/ファンクな内容でヴァイオリンを使うと言うのはどうなんでしょう。ストリングスをアクセント使うのとは意味が違いますよね。時代の流れに乗っているようで、ちょっと無理やりだったかな。彼にとって80年代はちょっと辛い時期だったかもしれませんね。

★★★★ 壮快!
Norman Brown/just between us (1992)
 初っぱなの「stormin」にぶっ飛ばされて思わず買ってしまった一枚。当時私が求めていたフィーリングの曲をズバリやってくれた!という感じでした。今聴いてもカッコイイです。「love's holiday」ではヴァーダイン・ホワイトのベースとアル・マッケイのリズムギターが、「too high」ではスティーヴィー・ワンダーがヴォーカルとハーモニカで参加。本家を持ってくるとは。。。な、泣ける。さすがモータウン。やってくれるぜ!

★★ スターシップ!
Norman Connors/passion (1988)
 女性と絡んでいるようなジャケ写が、いかにもこの人らしいのですが、音の方はそんなにコテコテではなく、結構サッパリとした懐かしのクワイエット・ストームになっていますね。この人もジャズ・ドラマーからR&B、ソウルの世界に傾倒していったミュージシャンですが、ジャケットを見ても想像がつく通りひたすらアダルティーに攻めている所は演歌的でもありますです。

★★★カヴァー曲多し
Norman Connors/remember who you are (1993)
 モータウン・ジャズに移籍して、なかなか洗練された音になってきました。クワイエット・ストーム的なブラコンが中心ですが、自らのプレイによるドラマーらしいジャズもあり、全体的にはかなり大人っぽい落ち着いた作りになっています。この手にありがちなディスコ調の曲がないのがいいですね。フィリス・ハイマンアンジェラ・ボフィルといった女性ボーカリストの起用も渋い!

★★★★  素敵。
Neil Larsen/Jungle fever (1978)
 名盤ですね。ニール・ラーセンと言えばこのアルバムでしょう。私はその後のラーセン・フェイトンバンドよりもフュージョンブーム最盛期の中、この独特のオルガン・サウンドで注目された本作品が好きです。全8曲、一曲も駄曲がなく、頭(心)に残るメロディーで一枚聴き終わる時間がとても短く感じられるほど素敵なアルバムです。

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